同調 【ドウチョウ】🔗⭐🔉振
同調 【ドウチョウ】
conformity
同調という概念は
社会的影響のなかでも限られた意味合いをもつ。
集団や他者の設定する標準ないし期待に沿って行動することであり,これによって個人と集団の斉合性は増大する。これは対立する他の集団成員の見解を受け入れることであり,
集団圧力のないところで個人が独立に同一刺激に対して同じ判断,行動をとることとは区別しなければならない。すなわち非同調には「独立」と「反同調」とがある。
アッシュ(Asch, S. E.1951)は7人一組の集団に対して,視覚実験と称して三つの比較線分のなかから先に示された標準線分と同じ長さのものを選ぶという課題を与えた。この課題は通常,誤反応が 0.7% という非常に単純なものであった。実験では7人の成員のうち6人がサクラであり故意に誤答を繰り返した。その結果,真の被験者123名のうち誤答のないもの25%,12回中8回の誤答者は28%,全体として37%の誤答が発生した。この実験は集団内少数者が多数の圧力に屈した反応と見なされ,同調研究を促進する大きなきっかけとなった。その後実験方法としてはクラッチフィールド・テクニックが開発された(Crutchfield, R. A.1955)。被験者はそれぞれ狭いブースのなかに入れられ知覚判断を行うが,各被験者には他の被験者の回答と称する偽りの答が伝えられた。
同調のなかにも,たんなる表面的なものから真の態度変化に至るまでさまざまな形態がある。アレン(Allen, V. L.1965)は,公的同調・私的同意,公的同調・私的不同意,公的非同調・私的不同意,公的非同調・私的同意の四つのカテゴリーを区別した。これらは心的過程が異なり,それによって以後の行動も変わってくる。
フェスティンガー(Festinger, L.1953)は,被影響者が影響源に好意的態度をもっているとき,私的受容を伴った同調(内面的同調)が生じやすく,私的受容を伴わない公的同調(外面的同調)は非同調によって罰が予想される時の回避反応として生じやすいとした。ケルマン(Kelman,H. C.1958)は,追従(compliance),同一化(identification),内在化(internalization)の 3タイプの社会的影響を仮定した。影響源が
賞罰によって個人をコントロールする手段をもつとき追従が生ずる。影響源と個人との関係が魅力的であり,満足できるものであれば個人は影響源の立場を採用するという同一化が,影響源に
信憑性がありかつ当該事象が個人の価値体系と斉合すれば内在化が起こる。人はつねに自分が正しくありたいということと他者から好意的に評価されたいという
動機づけがある。こうしたなかで自分と異なる見解に遭遇し他者の見解に従うことになるのだが,
ドイッチュら(Deutsch, M. & Gerard, H. B.1955)は,他者の判断や意見を判断事象についての参考資料として受け入れる情報的影響と,他者や集団からの期待を考慮して同調する規範的影響の二つのメカニズムがあるとした。
同調を促す集団の要因として,集団
凝集性が高いこと,すなわち集団目標があり,集団や情報源が魅力的でありさらに集団内一致度が高いことである。多数派の全員一致度が崩れると同調率は大幅に低下する。集団のサイズに関しては,サクラの数4人まではサクラの数が増えるに従って同調率は増大するが,それ以上になっても有意な増大はなくなる(Asch, S. E.1951)。課題の重要性,困難度,あいまいさが増すほど同調率は高くなる。他者との判断のずれの増大に伴い同調率は放物線型に増大する。個人的な要因に関しては,自己の確信,自信が低下すると同調は促進される。失敗経験のある者は同調しやすい。また集団内における地位が中程度のものが最も同調しやすい。彼らは,同調することによって得るもの,同調しないことによって失うものが大きいからである。パートナーの存在すなわち自己に対する社会的支持があるとき,同調は大幅に減少する。
同調の特殊なものとして権力への
服従がある(Milgram, S.1974)。さらに
モスコヴィッシは,社会的影響過程の研究が同調に偏りすぎていることを批判し,集団の変化に視点を移動して集団内少数派の影響を研究することを提案している。
→社会規範 →集団規範 →集団圧力 →社会的影響 →態度変容 →少数者の影響
→vid.文献
◆小関八重子












心理学辞典 ページ 1616 での【同調 】単語。