DNA 【ディーエヌエイ】🔗⭐🔉振
DNA 【ディーエヌエイ】
deoxyribonucleic acid
デオキシリボ核酸の略称であり,遺伝物質の本体である。リン酸,デオキシリボース,塩基で構成されるヌクレオチドを基本骨格とし,さらに塩基は,プリンであるアデニン(A),グアニン(G)と,ピリミジンであるシトシン(C),チミン(T)の4種類からなる。糖 -リン酸基の5′-,3′-ホスホジエステル結合によって連結した2本のポリヌクレオチド鎖が互いに逆向きに,AとT,GとCの水素結合によって塩基対合し,二重らせん構造を形成する(
ワトソン = クリック模型)。通常,溶液中では右巻きらせんのB型DNA(右図)で存在するが,高塩濃度の溶液中で左巻きのZ型DNA(左図)として存在することがある。
図表
自己複製能力は遺伝物質の条件として必須であるが,その複製は,二重らせんがほどけ二本鎖のそれぞれが鋳型となって合成されることによる(半保存的複製)。遺伝情報は,A, G, C, Tの塩基配列として
遺伝子中に収められており,その遺伝子から
メッセンジャーRNA(mRNA)が合成され,遺伝情報が読み取られる(転写 transcription)。真核生物の遺伝子中では,成熟mRNAに存在する領域(エキソン exon)と存在しない領域(イントロン intronあるいは介在配列)がある。このイントロンは,生物進化の過程で,新しい遺伝子の生成に重要な役割を果たしてきたものと考えられている。遺伝子間にはスペーサー領域が存在し,多種の反復配列や偽遺伝子などが存在している。DNA上ではさまざまなタイプの突然変異が起こりえて,これが生物進化の過程で,新しい遺伝子の生成に寄与し,自然淘汰を経て地球上に数多くの種類の生物を生み出してきたものと考えられている。真核生物では,DNAの局在部位は核であり,ヒストンや非ヒストン・タンパク質とクロマチンを形成して存在するが,ミトコンドリアや植物の葉緑体にも存在する。また,大腸菌などの細菌類では,主染色体DNAのほかに,自立的複製能力をもったプラスミドが存在しており,これは遺伝子組換え技術に汎用されている。
→ワトソン = クリック模型 →RNA →遺伝子 →染色体異常《Watson, J. D. & Crick, F. H. C.1953a,b;Wang, A. H.-J. et al.1979》
→vid.文献
◆津田正明




心理学辞典 ページ 1546 での【DNA 】単語。