聴空間 【チョウクウカン】🔗⭐🔉振
聴空間 【チョウクウカン】
auditory space
聴覚によって
認知できる空間。聴空間は音源の方向,距離,
音の動きなどの判断により成立する。
視空間ほどには分節化されておらず,大雑把である。しかし,
視覚では知ることのできない背面方向や物の陰に隠れている刺激や暗闇のなかの刺激を
知覚するのに役立つ。距離,左右,上下,前後の定位は両耳効果(二つの耳で聞くことの効果)によって行うので,上下や前後の音源の位置よりも左右の音源の位置を区別する方がやさしい。前後の差は,
耳介が後方からの音波を遮ることによって生じるが,高い音よりも低い音の方がその差は小さいので前後の判別は難しくなる。音源の方向の知覚は,左右の耳に到達する音波のわずかな差(両耳差)によって生じる。両耳差には音の時間差と強度差がある。時間差はごく短い(0.6ミリ秒以下)から,時間差としてではなく,音の方向のずれとして知覚される。また,強度や位相の差も音源の定位に役立つ。さらに,カクテルパーティなどの場合,一度にたくさんの人の話し声が聞こえるが,聞き手がある特定の話者の話に注意を向けると,他の人の声と混じり合うことなく聞き取ることができる(
カクテルパーティ現象)。しかしこのような環境で録音したものを再生した場合,非常に聞き取りにくいことも知られている。一方,音源の距離の知覚は音の種類に対する経験的知識をもとにして生じる。
音の大きさ,音の周波数
スペクトルの変化による音の質的変化,直接音と反響音の比,両耳間のレベル差,両耳間の時間差などが,距離判断の手がかりになる。
ラジオを聞く場合のように,音源が一つの時は両耳差がなくなり,音の空間性は失われる。これを防ぐには,左右にマイクロホンをおいて音を録音する。このように2チャネル以上で録音・再生された音は臨場感や立体感を生じる。これを立体音響効果(stereophonic effect)という。音源の定位は視覚からの影響も受ける。たとえば,腹話術のように音源が人形の口から離れて呈示されても,聞き手は人形の口の動きを見ているために,人形が話をしているように知覚しやすい。このように,音源を定位する際に視覚的手がかりが与えられると,
視覚優位に知覚されることが知られている。
→音源定位 →両耳聴《難波精一郎1984》
→vid.文献
◆重野純











心理学辞典 ページ 1520 での【聴空間 】単語。