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ヴント     【ヴント】🔗🔉

ヴント     【ヴント】 Wundt, Wilhelm(1832-1920)  ハイデルベルク大学で医学と生理学を学び私講師時代にはヘルムホルツの助手もつとめたが,感覚研究を介してしだいに心理学や認識論の領域に踏み込むようになった。1875年からライプチヒ大学教授。彼の心理学史上の功績は,ライプチヒ大学の哲学部に実験心理学のための世界最初の心理学研究室を開設したことと,民族心理学を精神発達の視点から体系化しなおしたことで,その心理学上の主著も『生理学的心理学綱要』(1874)と『民族心理学』(1900-20)であるが,『論理学』(1880-83)や『倫理学』(1886)や『哲学入門』(1901)のような哲学的著作も多く,その関心の範囲は科学論から文化人類学的諸問題を経て国家論や法律論にまで及んでいる。彼の実験心理学(個人心理学)は対象を直接経験に限る典型的な意識心理学で,分析的内観精神物理学的実験を組み合わせた固有の方法をもち,直接経験から個人的主観的要素を捨象した間接経験を対象とする自然科学とは峻別されている。しかし,個人の意識を扱わない民族心理学では伝承文化のような記録を利用する歴史的方法を用い,同様に内観法が使えない動物や乳幼児を対象にする場合も客観的な行動記録など自然科学を含むすべての実証科学に共通の通常観察と比較の方法が広く適用できると考えており,その方法論は折衷的。二つの科学的心理学(個人心理学と民族心理学)の間の論理的統合も十分でない。 →vid.文献 ◆高橋澪子

心理学辞典 ページ 146 でのヴント単語。