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態度     【タイド】🔗🔉

態度     【タイド】 attitude  人の社会的行動を予測・説明するために考案された仮説的構成概念の一つ。仮説的構成概念であるがゆえに,態度の定義については諸論があるが,オルポート(Allport, G. W.1935)による定義が比較的に広く受け入れられている。彼は,態度の構成要素として,心的構え(mental set),行動の準備状態,心理的基礎,永続性,学習された性質,評価的性質,などがあるとしたうえで,「態度とは,関連するすべての対象や状況に対する個人の反応に対して直接的かつ力動的な影響を及ぼす,経験に基づいて組織化された,精神的および神経的準備状態のことである」と定義した。したがって,態度は,人の社会的行動の決定に対して大きな影響を及ぼす心的要因であるといえる。そのような心的要因には,性格パーソナリティ)や価値観などもあるが,態度がこれらと異なるのはある特定の対象に対する心的要因である点である。  態度をどのように捉えるかについては諸説があるが,これらは大きく二つの立場に分けられる。一つは強化論的立場にたつものである。たとえば,ハル行動理論を態度研究に応用したドゥーブ(Doob, L.1947)は,態度は,社会的に重要な事柄についてのある特定の刺激と,動因に値する(drive-value)反応との強化による結びつきを示すものであるとした。ここで,そのような動因に値する反応とは,具体的には,「良い―悪い」という評価,あるいは,「好意的―非好意的」な感情であるとされる。強化論的立場からは,対人魅力(Byrne, D.1971)をはじめとする古典的条件づけによる態度形成やオペラント条件づけによる態度形成などの研究がなされている。また,ホヴランドらによる一連の説得研究のうち初期のものはハルの学習理論に基づくものである。  あと一つは,認知論的立場にたつものである。クレッチとクラッチフィールド(Krech, D. & Crutchfield, R. S.1948)は,個人が環境内の対象に関して獲得した知識に基づいて,その内部に形成される象徴的あるいは概念的な認知的体制を信念(belief)とよんだ。信念は,いったん形成されると個人内環境の独自な構成要素となり,その個人の知覚行動を方向づけるものとして機能するようになる。態度は,この信念のうち「良い―悪い」「好意的―非好意的」などの評価的あるいは情動的側面が中心となるものと考えられる。認知論的立場からの態度研究は四つに大別することができる。(1)態度としての信念は評価的に矛盾しないように体制化されるよう動機づけられるとする認知的斉合化傾向についての研究である。これには,バランス理論(Heider, F.1946),認知的不協和理論(Festinger, L.1957)などが含まれる。(2)自分の行動の原因推論によって自分の態度を知覚する過程を重視する自己知覚理論(Bem, D. J.1967,72)である。(3)信念を構成する認知要素の総合的評価として態度を捉え,これを数理モデルで表現しようとする研究である(Anderson, N. H.1968;Fishbein, M. & Ajzen, I.1975;McGuire, W. J.1981;Wyer, R. S., Jr.1974など)。(4)信念の体制化過程に着目し,認知的体制化の違いから態度変化への抵抗,説得効果などを説明する研究である。これには,接種理論(McGuire, W. J.1964),精緻化見込みモデル(Petty, R. E. & Cacioppo, J. T.1986b)などがある。  態度は,人の社会的行動を決定する心理的要因であると一般化可能性の高い定義がなされている。そのため,投票行動,消費行動などさまざまな社会的行動を予測するための態度測定法が開発される一方,他者の態度を変化させようとする行為である説得など多種多様な社会的行動を説明・予測する理論として態度理論は用いられている。 →態度の形成 →態度変容 →態度測定 →態度尺度 →信念 →価値 →興味 →偏見《McGuire, W. J.1985;Scott, W. A.1968;Dawes, R. M. & Smith, T. L.1985→vid.文献 ◆土田昭司

心理学辞典 ページ 1419 での態度     単語。