潜在記憶/顕在記憶 【センザイキオク/ケンザイキオク】🔗⭐🔉振
潜在記憶/顕在記憶 【センザイキオク/ケンザイキオク】
implicit memory / explicit memory
伝統的な
記憶研究では,記憶測定の方法としておもに
再生法や
再認法が使用されている。このようなテストは,被験者の過去の経験を問うもので,「思い出す」という想起意識を伴う。これに対して,自分の過去経験を思い出すという意識を伴わないで,ある行動をしたり判断をしたりすることがある。たとえば,「コーヒーにしますか,お茶にしますか」といわれ,「お茶を下さい」といったとする。この判断の裏には,本人は意識しなくても多くの過去経験の記憶が存在すると考えられる。前者の再生や再認テストのような記憶を顕在記憶,後者の本人も気づいていないような記憶を潜在記憶という。この両記憶を区分する基準は,自己の過去経験の想起意識の有無にある。
潜在記憶の研究は,1980年代に入り本格的に始まり,現在,多くの研究者の注目を浴びている。その理由は,顕在記憶と比較して多くの異なる特徴,それも研究者の興味を大変そそる特徴があるからである。たとえば,次のようなことがあげられる。記憶が劣るはずの健忘症者でも潜在記憶は正常者と変わらない。顕在記憶では完全に
忘却しているようなことでも,潜在記憶の測定をしてみると驚くほど長く
保持されている。記憶事項の反復や
符号化の方法などにより,顕在記憶は影響を受けるが,潜在記憶は影響を受けない。
潜在記憶のさまざまな特徴は,どのように説明されるのであろうか。おもな理論としては,いくつかの異なる記憶システムを考え,その各システムの機能的違いにより説明しようとする説(複数記憶システム論)と,符号化と
検索のプロセスにより説明しようとする説(適切処理転移論)がある。
→記憶 →プライミング →エピソード記憶《Lewandowsky, S. et al.1989;Graf, P. & Masson, M. E. J.1993;太田信夫1992》
→vid.文献
◆太田信夫







心理学辞典 ページ 1335 での【センザイキオク/ケンザイキオク】単語。