精神医学 【セイシンイガク】🔗⭐🔉振
精神医学 【セイシンイガク】
psychiatry
医学の一分野で,(1)
脳の働きの異常が主として精神の働きの異常という形で現れた疾患,あるいは,(2)脳と社会環境との相互作用の結果として,
感情や
情動や
性格といった脳が作り出す心理的事象が本来もつ社会に適応していくための調節的機能が障害された状態,(3)脳が周囲環境から機械的・物質的影響を受けた結果,精神の働きを含む脳の機能が障害された状態を対象とする。精神医学は上記(1)〜(3)の疾患や障害の原因や病態を明らかにし,このような疾患や障害を促進したり抑制したりする社会環境要因を調べ,さらに
中枢神経系に作用する薬物を用いたり,個人の心理に働きかけたり,社会環境要因を調節したりして,このような疾患や障害の治療方法を開発し治療方法の奏効機序・治癒機転を明らかにする学問である。
19世紀の近代精神医学の誕生は,それ以前には一様に狂気として認識されていた諸疾患あるいは諸障害を,異なった単位として分離し分類することに始まった。そうした分類の試みを集大成したのが
クレペリンであり,
ブロイラーである。彼らは近代医学の理論である細胞病理学説を援用し,異なった疾患(障害)は
神経細胞の異なった病理に基づくものと仮定した。20世紀に入り精神医学は精神疾患(障害)の病因論を明らかにできないままに,精神病理現象の正確な記述と分類の努力を続け,神経科学や検査技術が進歩したことにより精神疾患の際の脳の異常の理解が進んだこと,社会科学が進歩したことから,20世紀後半には精神疾患は脳の疾患であるとともに,その脳をもつ個体が社会生活するなかで生まれる脳と社会環境要因との相互作用の結果であるという新しい認識の枠組で捉えられるようになった。
→精神病理学 →精神薬理学 →社会精神医学 →心身医学 →行動医学
◆丹羽真一








心理学辞典 ページ 1251 での【精神医学 】単語。