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図と地     【ズトジ】🔗🔉

図と地     【ズトジ】 figure and ground[E] ; Figur und Grund[G]  視野のなかで形をもって浮きでて見える領域を図,その背景となって見える領域を地という。ルビン(Rubin, E.1921)は,人の横顔と盃の二通りの見え方が交替する図形の観察を通じて,同一の領域でも役割が異なると全く様相が異なることを指摘し,その現象的差異について記述を行った(図参照)。 図表 (1)図となった領域は形をもつが,地は形をもたない。(2)二つの領域を分ける境界線は,図となった領域の輪郭線となり,図の領域の末端として図に所属し,地はそこで終わらず,図の下にまで広がっている印象を与える。(3)図は物の性格をもち,地は材料の性格をもつ。(4)図となった領域は地となった領域よりも色が堅く,密で,定位が確定的である。これらの関係は,カッツのいう,表面色と面色(開口色)の分類に対応する。(5)一般に図は観察者の方に近く定位される。(6)図は地よりも印象的であり,意識の中心となりやすい。したがって,図は記憶されやすく,意味を担いやすい。  視野のなかでどの領域が図となりやすいかについて,プレグナンツの傾向の具体的な現れとして理解され,以下のような要因が指摘されている。(1)より狭い領域,より面積の小さい領域は図になりやすい。(2)閉じられた,または,取り囲まれた領域は図になりやすい。(3)空間を内側に曲がった線が取り囲む場合,完全に取り囲まれていなくても,内側ないし凸面になる領域が図になりやすい。(4)同じ幅をもつ領域は図になりやすい。(5)空間の主方向である垂直・水平に広がる領域は,斜め方向に広がる領域よりも図になりやすい。また,下から上へ伸びる領域は,上から下へ伸びる領域よりも図になりやすい。(6)観察者にとって見慣れた特徴的な形をもつ領域,熟知した形をもつ領域は図になりやすい。また,観察者に与えられた教示や態度も図になりやすさを規定する。  知覚の領域以外でも,関心をもち,意識の前面になっている対象を「図」,背景となり,意識されない対象を「地」として理解し,物理的・客観的には同じ状況でも,把握の仕方で心理的・主観的には全く異なった状況の理解になることを示す例として使われることも多い。 →形の知覚 →プレグナンツの傾向 →ウォルフ効果 →リープマン効果《Metzger, W.1953;大山正1970→vid.文献 ◆増田直衛

心理学辞典 ページ 1219 でのズトジ単語。