アイデンティティ 【アイデンティティ】🔗⭐🔉振
アイデンティティ 【アイデンティティ】
identity
エリクソン(Erikson, E. H.1959,63,64)の人格発達理論における
青年期の心理社会的危機を示す用語。正確にいえば,「エゴ・アイデンティティ」(ego identity)であるが,最近ではたんに「アイデンティティ」とよばれることが多い。同一性,自我同一性と訳される。「自分は何者か」「自分のめざす道は何か」「自分の人生の目的は何か」「自分の存在意義は何か」など,
自己を社会のなかに位置づける問いかけに対して,肯定的かつ確信的に回答できることがアイデンティティの確立を示す重要な要素である。この逆が
アイデンティティ拡散である。これは,自己が混乱し自己の社会的位置づけを見失った状態を意味する。
エリクソンの人格発達理論は,通称アイデンティティ理論ともよばれるように,「アイデンティティ」という概念が中核的な位置を占めている。彼の理論は,彼自身の生い立ち(養子であったこと,ユダヤ人であったことなど)と密接に結びついて生まれてきたと考えられている。すなわち,エリクソン自身の人生が自らのアイデンティティを模索し続けた人生そのものなのである。
アイデンティティは青年期の危機を示す用語であるが,歴史的・民族的・社会的な一個人の存在全体を示す概念でもある。また,青年期のみならずその人の人生全般に関わる課題と捉えられている。エリクソンの理論は,次の8段階からなる。(1)乳児期:「信頼」対「不信」,(2)幼児前期:「自律性」対「恥・疑惑」,(3)幼児後期:「自発性」対「罪悪感」,(4)学童期:「勤勉性」対「劣等感」,(5)青年期:「アイデンティティ」対「アイデンティティ拡散」,(6)成人前期:「親密性」対「孤立」,(7)成人期:「世代性」対「停滞」,(8)老年期:「統合性」対「絶望」。これら8段階の危機をうまく乗り越える(「対」で結ばれた前者が後者を相対的に上回る形で獲得される)ことが,健全な人格形成につながるのである。
→アイデンティティ拡散 →モラトリアム →青年期 →社会的アイデンティティ理論
→vid.文献
◆宮下一博




心理学辞典 ページ 11 での【アイデンティティ】単語。