因子分析 【インシブンセキ】🔗⭐🔉振
因子分析 【インシブンセキ】
factor analysis
回帰分析法とならんで
多変量解析のなかでは最も多く使われている手法の一つである。その起源は20世紀初めの
知能の分析にさかのぼり,その後さまざまな発展をしてきた。当方法の基本的なねらいは,観察される各種の変量(
テスト,
調査,
測定等の値)の変動をより少ない数の仮想的変数(因子とよばれる潜在変数)を用いて説明することにある。因子分析の基本モデルは次の通りである。
数式
このモデルは,p 個の観測変数の,m 個(m<p)の共通因子に対する因子負荷量がすべて未知である探索的因子分析のモデルである。eij は,独自因子の得点であるが,これには,測定誤差をのぞいた成分(特殊因子)と測定誤差に分解して考える場合がある。また,因子負荷量と因子得点の積に形式的に分解して表現することもある。
探索的因子分析モデルにおける共通因子は,相互の相関が0の場合(直交モデル)と任意の値をとる場合(斜交モデル)がある。独自因子は,相互に独立であるだけでなく,いずれの共通因子とも,相関が0であることが仮定される。因子分析の直交モデルの場合,共通因子の因子負荷量λjk を推定することが主要な手続となるが,これは,観測変数の分散共分散行列(S)あるいは相関係数行列(R)に基づいて行われる。すなわち,上記の仮定よりモデルから構成される分散共分散行列(Σ)あるいは相関行列(P)は,λjk の行列(因子負荷量行列)と独自因子の分散ψj(
独自性)の関数となる。そこで,実際に得られる S とモデルから構成される Σ(あるいは R と P)の何らかの距離が最も小さくなるように因子負荷量行列と独自性を推定することになる。
心理学においては,測定の単位が任意であることが多く,分散共分散行列を対象とするよりも,相関行列を分析の対象にすることが圧倒的に多い。この場合 s 番目と t 番目の観測変数の相関係数ρst は,共通因子得点の分散を1とすると直交モデルでは,
数式
となる。また,
数式
因子負荷量行列を推定するには,まず共通因子の数を決めなければならないが,これには,統計的
検定を用いる法や,1より大きな R の固有値の数のような数量的な基準のほか,
数式
で定義される因子の変動の大きさ(因子の寄与)の経験的判断などによる。実際の推定の手法では,歴史的には,また現在でも,各観測変数の共通因子の変動,すなわち
数式
(
共通性)をまず推定し,これを相関係数行列の対角成分(ρss)へ代入して,これから因子負荷量行列を求める(あるいは,これらを収束するまで逐次的に繰り返す)という方法が行われてきた。共通性の推定には,SMC(重相関係数の2乗)等が用いられる。共通性の推定後は,因子の寄与が大となる順に因子負荷量行列を求める主因子法が用いられることが多い。
因子負荷量行列は,因子空間の軸の設定の任意性があるために,実際には因子の内容が解釈しやすいように(そのパターンの一つが
単純構造とよばれる)因子軸の回転を行うことが多い。回転法には,因子間の直交性を保ったままの回転(直交回転)や因子間の相関が0でない回転(斜交回転)がある。
回転後の各因子の内容を解釈するのは,因子負荷量の絶対値の大きな観測変量に共通する性質を評価することによるが,斜交回転の結果では因子負荷量によるほか,観測変量と因子の相関(因子構造)による場合もある。
現在では,従来の探索的因子分析のほかに,因子負荷量行列等に事前の情報を利用したモデル(検証的因子分析)が用いられることがあり,これらは,いわゆる共分散構造分析の一手法としても捉えられている。
→共通性 →主因子解 →単純構造 →独自性(因子の) →バリマックス解 →プロクラステス解 →共分散構造分析《Harman, H. H.1976;丘本正1986;芝祐順1979;柳井晴夫1994;柳井晴夫ほか1990;柳井晴夫・高木廣文1986;柳井晴夫・高根芳雄1985》
→vid.文献
◆小笠原春彦















心理学辞典 ページ 119 での【因子分析 】単語。