推論 【スイロン】🔗⭐🔉振
推論 【スイロン】
inference ; reasoning
既知の前提から新しい結論を導き出す
思考の働き。また,その過程や結論。推理(reasoning)という語もほとんど同じ意味で用いられるが,あえて区別するとすれば,推論という語の方が結論自体をさすために用いられることが多いようである。伝統的な論理学においては,主として
演繹と帰納の二つを取り扱ってきたが,心理学ではそれに加えて,
類推も重要な推論の形式として取り上げられる。また,発達的な見地からは
転導推理なども推論の一つとして研究の対象とされる。論理学では,主としてこれら推論の妥当なあり方を研究するのに対して,心理学では人間が現実に行うものとしての推論を研究対象とする。したがって,人間が
知識を獲得する手段としてどのように推論を用いているのか,また推論において論理的意味での誤りがいかにして生じるのか,といった点が問題とされることが多い。
たとえば,三段論法において,肯定命題を含む前提に対しては肯定命題の結論,否定命題を含む前提に対しては否定命題の結論が選ばれやすいなどといった,いわゆる雰囲気効果(atmosphere effect)がみられることがある。また,
四枚カード問題において,問題が抽象的な記号によって呈示されるよりも,日常的な経験からみて妥当性のある意味をもったものとして呈示される方が正答しやすいという,主題化効果が報告されている。こうしたことは,人間のなす
演繹推理が必ずしも形式論理に則っていないこと,また意味が大きく関与していることを示すものである。
ジョンソン - レアード(Johnson-Laird, P. N.1983)の
メンタル・モデルは,このような人間の演繹推理に関する一つの有力な理論である。
帰納推理に関しては,
概念形成または
概念達成についての研究として多くの研究がなされてきている。たとえば,
ブルーナーら(Bruner, J. S. et al.1956)は,概念達成において人間が用いるさまざまな
方略を実験的に検討している。また,ウェイソン(Wason, P. C.)は,概念についての仮説を検証する際に,仮説に反する事例(負事例)の利用がなかなかなされないことを示している。
→演繹推理 →帰納推理 →類推 →転導推理 →四枚カード問題 →メンタル・モデル《Holland, J. H. et al.1986;矢田部達郎1949》
→vid.文献
◆山崎晃男














心理学辞典 ページ 1199 での【推論 】単語。