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心的イメージ     【シンテキイメージ】🔗🔉

心的イメージ     【シンテキイメージ】 mental imagery  心像ともいう。言語以外の内的な表象をさし,その意味ではアナログ表象という言い方もできる。それぞれの感覚モダリティに対応した記憶イメージや想像イメージがある。19世紀後半のイメージ研究の初期には,フェヒナーは心的イメージの種類を細かく定義したが,最近の研究は,心的イメージという用語を,厳密に定義せずに使っていることが多い。  初期の研究は,記憶思考の基本的要素として心的イメージを考え,方法も内観法に頼るものであった。しかし,行動主義がアメリカ心理学を支配するようになった1930年代からは,研究対象として意識や主観的内容が排斥されたため,イメージ研究はタブー視されることになった。ただ,ヨーロッパでは,ゴールトンに始まるイメージ能力の個人差研究や,イェンシュに代表される直観像研究が続けられていた。  実験的研究が再開されるようになるのは,1960年代後半,認知的アプローチの台頭に伴ってである。ブルックス(Brooks, L. R.)やシーガル(Segal, S. J.)は,知覚的課題で,その課題で用いる感覚と同じモダリティのイメージを思い浮かべることが妨害効果をもつことを示した(ただし,予期的なイメージでは促進効果がみられることがある)。また,イメージは,記憶研究の文脈でも研究されるようになった。ペーヴィオは,語の記憶が言語とイメージという二重のコードによってなされていることを示した。バッデリーも,作動記憶の一部として心的イメージを捉え,知覚に対するイメージの妨害効果が同一のモダリティで顕著なことから,各モダリティに対応した作動記憶があると考えた。この時期,VVIQなどの質問紙法によるイメージ能力の測定や,問題解決や記憶の方略としてのイメージの利用についての研究が再開された。周囲の空間がどのように表象されているかといういわゆる認知地図の研究も,イメージ研究の一部として行われるようになった。  1971年に発表されたシェパードとメッツラー(Metzler, J.)の心的回転の実験は,心的イメージの操作を反応時間の点から検討し,イメージの処理過程を定量的に検討する研究の端緒となった。これ以後80年代までの実験的研究では,コスリンやフィンケ(Finke, R. A.)を中心に,視覚イメージの走査,解像度,視野の広さ,そして視覚イメージへの順応によって生ずる残効などの実験が行われ,イメージと知覚の機能的等価性が論じられた。ただし,これらの実験結果については,要求特性によるといった批判もある。この時期,視覚イメージが絵的か命題的かをめぐって,論争もなされた(イメージ論争とよばれる)。  最近の研究の焦点は,神経心理学的問題に移ってきている。1980年代なかばに,ローランド(Roland, P. E.)とフライバーグ(Friberg, L.)は,被験者が視覚イメージや触覚イメージを思い浮かべている時の脳内循環血流量を測定し,イメージの想起に皮質のどの部位がかかわっているかを示した。80年代後半からは,コスリンやファラ(Farah, M. J.)を中心に,脳損傷によってや視覚イメージを体験できなくなった患者の症例に基づいた研究や,PETを用いてイメージ時の脳内の活動を調べる研究が行われている。それらの研究結果は,視覚イメージの過程が,イメージを構成する情報の貯蔵,イメージの生成,その視査といった一連の過程からなることを示しつつある。 →イメージ・リハーサル法 →VVIQ →記憶術 →CRTモデル →心的回転 →二重符号化理論 →表象《北村晴朗1982;Kosslyn, S. M.1994;Richardson, A.1969→vid.文献 ◆鈴木光太郎

心理学辞典 ページ 1161 でのシンテキイメージ単語。