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新行動主義     【シンコウドウシュギ】🔗🔉

新行動主義     【シンコウドウシュギ】 neo-behaviorism  行動主義の創始者ワトソンに続く,行動主義者たちの行動理論についての総称。彼らは新行動主義者とよばれ,ハル(Hull, C. L.1943),トールマン(Tolman, E. C.1932),ガスリー(Guthrie, E. R.1935),スキナー(Skinner, B. F.1938,72,74)はその代表格である。ワトソンの行動主義とは,意識ではなく直接観察可能な行動を対象とする点,刺激 = 反応関係によって記述する点において共通する一方,さまざまな相違点がある。また,新行動主義者相互も,行動主義に加え,物理学における操作主義,哲学における論理実証主義の影響を受け,行動に関する包括的理論(グランド・セオリー)をめざしたという点では共通するが,それぞれ特色ある独自の理論体系を構築した。  ワトソンの行動主義を最も忠実に継承したのはガスリーである。刺激 = 反応連合に作用する要因として,両者の接近性を重視し,効果の法則をはじめとする強化説は採用しなかった。また,効果器のたんなる活動としての運動(movement)と,環境への働きかけとしての行為(act)を区別したが,行為を運動のたんなる集合とする点もワトソン流である。  トールマンは,全体的なモル行動に,その物理的・生理的構成要素である分子的行動にはみられない,目的的で認知的な特性を認め,それ自体客観的に記述可能であるとした。また,刺激と反応の間に,期待動因といった論理的構成体を想定し,仲介変数とよんだ。トールマンは,手段 = 目的期待(means-end expectation),サイン = ゲシュタルト期待(sign-gestalt expectation)を重視したが,強化は必ずしも必要でないとした。  強化説にたつハルにおいては,動因低下が重要な仲介変数となった。しかし,ハルはトールマンのような目的論的説明と創発主義(emergentism)を認めず,一次的な公準系から仮説演繹法によって精緻な理論体系を組み上げた。  実験的行動分析とよばれるスキナーの理論体系は,ハル同様強化説の一つだが,仲介変数の必要性は認めなかった。二過程説で,レスポンデント行動オペラント行動を区別し,特に後者に関する成果が著しかった。オペラント条件づけの説明概念として三項随伴性を提唱したほか,方法的には,スキナー箱,単一被験体法を用い,強化のスケジュールなどの新たな研究分野を切り開いた。また,その独特の,機能的な言語行動論にも特色がある。  スキナーの実験的行動分析は今も一つの派をなしているが,行動のグランド・セオリーをめざした多くの新行動主義はすでに過去のものとなったといわれる。現在の行動研究では,行動の包括的理論を構成することよりも,個々の現象を個別的に説明するミニ理論の解明に重点がおかれている。 →行動主義 →学習心理学 →操作主義 →論理実証主義 →モル行動 →分子的行動 →仲介変数 →動因低減説 →随伴性 →スキナー箱 →言語行動 →vid.文献 ◆山田恒夫

心理学辞典 ページ 1145 での新行動主義     単語。