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人工知能     【ジンコウチノウ】🔗🔉

人工知能     【ジンコウチノウ】 artificial intelligence ; AI  コンピュータの誕生とともに,知的な振る舞いをコンピュータにさせる科学として,1950年代に登場した研究分野である。コンピュータは,たんなる数値演算ばかりでなく,一連の記号処理(情報処理)が行えることが判明し,そこでその記号処理用のコンピュータ言語を用いたコンピュータ・プログラムによって,知的な振る舞いをさせることがめざされる。そのため,人工知能はまたコンピュータ・プログラムの科学でもある。  人工知能の初期の頃は,チェスなどのゲームやパズル解きなど,一定の木構造のもとに探索技法の研究が中心となった。その際,記号論理学や数学の証明問題も扱われ,このような探索の場合,思考にかかわる問題解決方略として,問題の構造によっては,目標に向かって少しずつ前進し問題の解決を図る「前向き連鎖」という通常の方略に対して,最終目標から逆に前の方へ戻っていく「後向き連鎖」というヒューリスティックス(発見法)の方略があることが示されたりした。また,手段 = 目的分析などの探索方略を用いて,さまざまな問題の解決を図る一般問題解決器(GPS)の研究がなされた。このような人工知能における知的な振る舞いと人間の思考との比較を試みるために,発話思考法なども用いられた。こうした諸研究からわかってきたことは,コンピュータを知的に振る舞わせるには,知識が必要であるということであった。そこで,コンピュータに知識をどう表現し蓄えてやればよいかの知識表現法が,コンピュータの記憶容量の増大によるデータベース化とともに研究された。知識表現法としては,意味ネットワーク構造やルールに基づくプロダクション・システム,フレーム理論によるものなどが見出された。こうした知識表現法の発展と,エキスパートの研究が進んだこともあって,人工知能の応用により,その専門的知識の利用を図る知識工学なども登場するようになった。とりわけ,人工知能研究は,コンピュータ・メタファを用いて人間の心の内部過程を解明する認知心理学における情報処理アプローチと関連が深く,それを介して学際科学として誕生した認知科学などとも結びつき,人間理解を進めるのに貢献した。  しかし,言語理解や知識表現などによる本格的課題への取組みの段階に入った1970年代の画期的試み,すなわち知能ロボットにより言語と物理的知識を用いて積み木を縦横にさせることに成功した言語理解システムSHRDLU(Winograd, T., 1971)が,そのマイクロ・ワールド(小世界)からさらに広い世界に広げられるかの期待がかけられたが,残念ながら断念されることになった。その結果,人工知能研究は,その後コンピュータ技術にかかわっての進捗があるとはいえ,それ以上に哲学や思索が必要な時期にさしかかっているように思われる。 →フレーム理論 →自然言語処理 →情報処理アプローチ →認知科学 →知識工学《Newell, A. & Simon, H. A.1972;Winograd, T.1972;Winograd, T. & Flores, F.1986;菅井勝雄1983→vid.文献 ◆菅井勝雄

心理学辞典 ページ 1142 での人工知能     単語。