神経伝達物質 【シンケイデンタツブッシツ】🔗⭐🔉振
神経伝達物質 【シンケイデンタツブッシツ】
neurotransmitter
哺乳類の
シナプス伝達は大部分,神経伝達物質による
化学伝達である。神経伝達物質は,(1)その物質と合成酵素系がシナプス前ニューロンに存在する,(2)その物質を人工投与した時にもシナプス後膜に同じ作用がある,(3)シナプス伝達中に放出される,(4)人工投与した時にも遮断薬や酵素阻害剤が同じ薬理作用をする,(5)その物質を分解したり再取り込みする機構がある,などを基準として同定する。
アセチルコリン(ACh),ノルアドレナリン(NA, ノルエピネフリン),
GABA ギヤバはこの基準を満たすが,その他にも
ドーパミン(DA),
セロトニン(5-HT, 5-ハイドロキシトリプタミン),グリシン,アスパラギン酸,グルタミン酸,P物質などが神経伝達物質と考えられている。特定のニューロンが何を神経伝達物質とするかは,胎児期・出生期における転換因子や神経
興奮の有無によって決まると考えられている。
図表
AChを伝達物質とするコリン作動性ニューロンは,
運動ニューロン,自律神経節前線維,副交感神経節後線維などにある。前脳基底部のコリン作動性ニューロンの軸索は
大脳皮質や
海馬に分布しており,アルツハイマー病ではこれが障害される。ACh受容体には短潜時で興奮も短いニコチン性受容体と,潜時も興奮持続も長いムスカリン性受容体がある。
DA作動性ニューロンには,腹側被蓋から
内側前脳束を通り
中隔や側坐核,
新皮質に至る中脳辺縁路,黒質から内側前脳束を通り
線条体や側坐核に至る黒質線条体路,
視床下部から正中隆起,下垂体前葉に至る経路がある。アンフェタミンはDAの再取り込みを抑制し,
コカインはDAの遊離を促進してDAの過剰状態を作るので
幻覚や
妄想を引き起こすと考えられている。NA作動性ニューロンは,青斑核,
橋きよう,延髄被蓋にあり,青斑核から視床下部,内側前脳束を経て,中隔,海馬,
帯状回,新皮質などに至る経路,青斑核から
脳幹の他の
神経核や
脊髄に下行する経路,被蓋から内側前脳束を通って視床,扁桃体,中隔,
梨状葉,新皮質などに至る経路,被蓋から脳幹の他の神経核や脊髄に下行する経路がある。青斑核や海馬,中隔では抑制を伝達するが,視床下部や大脳皮質では興奮・抑制の両方がある。5-HT作動性ニューロンは縫線領域に分布する。GABA作動性ニューロンは
中枢神経系で速い抑制を伝達する。グルタミン酸作動性ニューロンは新皮質や海馬を中心に中枢神経系全域に分布し,おもに速い興奮を伝達する。P物質は脊髄神経節の痛覚線維の神経伝達物質である。
→アセチルコリン →カテコールアミン →脳内アミン →ドーパミン →アドレナリン →セロトニン →GABA →シナプス →シナプス伝達 →アトロピン《西彰五郎・竹内昭1986;Biggio, G. et al.1992;Cooper, J. K. et al.1991;Hucho, F.1993》
→vid.文献
◆浜村良久


























心理学辞典 ページ 1138 での【神経伝達物質 】単語。