神経心理学 【シンケイシンリガク】🔗⭐🔉振
神経心理学 【シンケイシンリガク】
neuropsychology
脳の損傷によって生じる高次機能の障害の様相を,さまざまな検査や実験的手法を通じて正確に把握し,損傷部位との関係から,
言語や
思考,意図的行為,
認知,
記憶といった高次機能の神経機構の解明をめざす学問分野。
神経学,
精神医学,
神経生理学,
神経解剖学,
心理学などが交錯するところに成立した学際領域にあたる。1861年に,フランスの
ブローカが
前頭葉第三前頭回の損傷と構音言語機能の障害とを関係づけた時から本格的な学問としてスタートしたとされているが,当初は大脳病理学とよばれ,医学,特に神経学の一部に位置づけられていた。しかし第一次,第二次の世界大戦を通じて多数の頭部損傷患者が出現し,戦後その
リハビリテーションに国家が総力をあげて取り組む過程のなかで,心理学者や言語病理学者など,医学の周辺領域の関係者が参加するようになり,神経心理学という用語がしだいに定着するようになった。
神経心理学が一個の独立した専門領域として認識される契機となったのは,1963年の雑誌Neuropsychologiaの創刊で,翌64年には同じ傾向のCortexも創刊された。神経学の専門誌Brainに2度に分けて発表されたゲシュヴィンドの長大な論文「動物と人間における離断症候群」(Geschwind, N.1965)は,医学の世界での神経心理学の確立をもたらし,また1960年代後半から
スペリーらによって行われた
分離脳の研究は,世間に左脳・右脳のブームを巻き起こし,神経心理学の隆盛に大きく貢献した。1970年代後半から80年代にかけてのX線
CTの発明と
MRIの病巣研究への応用は,患者が検査を受けた時点での病巣局在を可能とし,研究をいっそう発展させたが,一方では,脳の解剖学的個体差や性差など,新たな問題を提起する結果となった。さらに最近では,
PETやfMRIなどによって,健常な被験者がさまざまな課題を遂行している際の脳の代謝活動が測定されるようになり,病巣研究との対応が図られている。
→神経学 →神経生理学 →認知神経科学 →CT →MRI →PET →分離脳
→vid.文献
◆河内十郎


















心理学辞典 ページ 1134 での【神経心理学 】単語。