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神経症     【シンケイショウ】🔗🔉

神経症     【シンケイショウ】 neurosis  1777年にスコットランドの医師カレン(Cullen, W.1778−79)によって,初めて使用された用語である。その当時は中枢神経系のすべての疾患を含む概念として,使用されていた。その後,19世紀後半から20世紀初頭にかけてのヒステリー研究を通して,「心因によって起こる可逆的な障害」という概念にかたまってきたといえる。しかし,その定義・概念は,現在にいたるまで時代的な変遷があり,また心因を理解するための理論的立場によってもかなりの差異があり,いまだにすべてが納得できる定説はないといえる。  しかしながら,基本的な共通概念を整理すれば次のようにまとめることが可能であり,それらの特徴を備えた集合概念が神経症であるといえる。(1)心因(心理的原因)性に発現する障害であり,その心的過程が了解可能である。(2)機能的障害であり,基本的に器質的変化は認められず,身体的な原因によって起こってくるものではない。(3)特有の状態像を示す。すなわち,基本的には自分が病気であることを認識しており,人格も保たれている。しかし強い不安を内包しており,自分の症状にとらわれている。(4)特有のパーソナリティ傾向と関連がある。(5)可逆性であり,治癒後には基本的には後遺症を残さない。  神経症の具体的症状は多種多様にわたっているため,一言で述べることは困難であるが,不安を基礎とした精神症状と,自律神経系の失調による身体症状が多くの場合出現する。アメリカ精神医学会によるDSM-(APA1980)では,神経症というカテゴリーが除外されており,その後の改訂でも,その方針は引き継がれている。またWHOによる診断基準である国際疾病分類(ICD)も第10版(WHO1992)では,神経症という言葉は補助的にしか使われていない。今後,神経症という概念がどのようなかたちで残っていくのか,あるいはなくなっていくのか,混沌としているといえる。 →不安障害 →森田神経質 →気分障害 →強迫性障害 →解離性障害 →幼児神経症 →抑うつ神経症 →退却神経症 →心気症《Breuer, J. u. Freud, S.1909;Eysenck, H. J.1976;森田正馬1974→vid.文献 ◆中島勝秀

心理学辞典 ページ 1133 での神経症     単語。