触空間 【ショククウカン】🔗⭐🔉振
触空間 【ショククウカン】
tactual space
他の感覚系に頼ることなく,
触覚のみでものの形,大きさ,方向などのひろがりの違いを区別することができる。このようなひろがりに関する体験を触空間という。触覚においても
幾何学的錯視や
仮現運動が観察され,文字や図形の
知覚が可能であることから,
視空間に相当する触空間の存在あるいは両者の類似性が指摘されている。触空間は晴眼者,先天盲,後天盲によって異なるといわれているが,それは視覚経験の有無あるいは現象の違いによるようである。たとえば重なり図形(三次元的情報を含む)を指先で探ると,晴眼者や後天盲は奥行き反応を報告することが多いが,先天盲はそれを報告しない。仮現運動はすべての被験者で報告される。文字や図形という二次元的空間の知覚は先天盲の方が他の被験者より正確で速い。
ところで,触空間には自己の身体に関する空間と外界を知覚する空間がある。これは
ギブソン(Gibson, J. J.1962)のいう受動触と能動触とに対応する。受動触(passive touch)は触られたという知覚印象であり,
皮膚感覚の
受容器のみに基づくが,能動触(active touch)は,触ることにより対象を知覚するモードである。この場合には,皮膚感覚の受容器に加えて
運動感覚の受容器も参加する。上述の例でいえば,仮現運動は受動触知覚である。単純な図形の場合,受動触であれ,能動触であれ,比較的容易に知覚することができる。幾何学的錯視や複雑な図形の場合には能動触でしか知覚することができない。だが,受動触では空間の知覚が容易でないといっても,文字や図形を継時的に与えると,その知覚は容易になる。このことを考えれば,同時知覚か,継時知覚かという問題も考慮しなくてはならない。なお,能動触は触運動知覚(haptic perception)ともいう。
→触覚 →皮膚感覚 →運動感覚 →視空間
→vid.文献
◆和気典二









心理学辞典 ページ 1100 での【触空間 】単語。