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情報処理アプローチ     【ジョウホウショリアプローチ】🔗🔉

情報処理アプローチ     【ジョウホウショリアプローチ】 information processing approach  通信科学の情報という概念が心理学において使用されるようになったのは,シャノンの数学的コミュニケーション理論(Shannon, C. E. & Weaver, W.1949)に端を発する。シャノンは,情報を論理原則と見なし,電気機械のリレースイッチの二つの状態(オンとオフ)が思考の基本的な操作を示しうるものだと示唆した。この時の情報の基本単位をビット(bit, 二進数binary digitの略)と表した。この考え方は,人間が環境という情報源から特定の刺激を入力情報として受け取り,その特定の刺激が行動にとって意味のある認識を生じさせるプロセスと情報理論を一致させることを目標とした。  1950年代の情報理論的研究はまず,情報理論のなかで示された情報の定量的測度をビットを単位とする平均情報量や伝達情報量などで表し,これを刺激や反応の記述に導入した。たとえば,シャノン流の情報理論が知覚研究に導入された。すなわち,図形に含まれている情報量冗長度ゲシュタルト法則との関係が論じられた(Attneave, F.1954)。また第二次大戦中にイギリスでは応用心理学的研究として,敵の暗号解読,夜間視の解析,空襲警報の計画,敵機識別などに情報処理アプローチ(ブロードベントチェリー)をとり,人間が感覚器から得た情報がどのように処理され,貯蔵記憶されるか,またはその容量はどのくらいかなどといった認知過程のモデルを提案した。これらの情報処理的アプローチは,認知過程の初期段階に焦点を当てたものであった。従来知覚過程と考えられていたものに記憶ないし情報の保存過程があることを明確に指摘したのは,スパーリング(Sperling, G.1960)であった。スパーリングは,急速に減衰する情報保存機構の存在を考え,それを視覚情報保存またはアイコニック記憶とよんだ。同じ頃,文字を含むパターンの知覚における同定の過程に関して,特徴抽出に基づくパンデモニアム・モデル(Selfridge, O. G.1959)や鋳型照合モデル(Selfridge, O. G. & Neisser, U.1960)が提案された。  その後1970年代後半になると認知過程における情報処理モデルの構築が衰えていった。その理由は,これらのモデルにみられるように,直列型の情報処理様式では人間の認知を説明するうえでそれほど頑健なモデルではないことが明らかになったことである。これらのモデルは現実世界のなかでどのようなやり方で認知システムが処理されているかということについて大きく包括的な説明を結局のところ与えることができなかった。その後1980年代になると,視知覚過程あるいは認知過程に関して,計算理論,神経科学などにみられるように,並列的,トップダウンもしくは文脈的アプローチに変わり,より「あいまいな」情報処理のモデル化が進められている。 →情報理論 →パンデモニアム →鋳型照合 →並列分散処理 →ニューラル・ネットワーク《Gardner, H.1985;大山正ほか1994;佐伯胖1981→vid.文献 ◆菅野理樹夫

心理学辞典 ページ 1082 でのジョウホウショリアプローチ単語。