複数辞典一括検索+

情動     【ジョウドウ】🔗🔉

情動     【ジョウドウ】 emotion ; emotionality  感情(emotion)の動的側面が強調される場合に用いられてきた用語であり,急激に生起し,短時間で終結する反応振幅の大きい一過性の感情状態また感情体験をさす。従来,emotionに対応する用語として感情と情動という二つのものが用いられてきたが,これは「感情」という日本語が,感情体験の質的差異を強調する意味で用いられることが多く,また動物を用いた実験では,感情のもつ認知的成分すなわち評価的側面は研究対象とはならず,また不必要なものであったがために,「感情」にかわる用語を必要としてきたためと考えられる。こういった日本独自の事情が,emotionの研究を,感情研究と情動研究に分断化し,それぞれの領域での研究をより専門化させてきた。しかし一方で,欧米の研究者の学説を,感情と情動という二つの用語を明確に区別せずに紹介するということになり,入門者の理解に混乱をきたしてきた。現在,用語として定着しているものも多く,にわかに関連用語を一本化することは困難である。本辞典においてもemotionに関する諸項目は,感情,情動,情緒をそれぞれキーワードとする三つのグループにわけて記載されているので注意されたい。  感情の動的側面は,生理的指標,行動による測定が容易であり,動物を用いた実験が数多く行われてきた。感情の生理的基礎に関する研究として,動機づけ機能を中心に,大脳辺縁系視床下部をおもな対象とした電気生理学的研究(破壊実験を含む)や脳生化学的研究が行われてきた。これらの研究成果は,オールズによる自己強化(快中枢),攻撃ストレスといった研究領域にみることができる。また動物行動を対象とした感情研究は,エソロジー学習心理学嫌悪条件づけ)の領域で行われてきた。ローレンツは母性感情の解発刺激の存在に言及し,アイブル - アイベスフェルトは視覚的な学習機会の全くなかった先天性全盲の子どもが晴眼児同様の笑いや当惑の表情を表すことを示した。またワトソンによる恐怖の条件づけや,エスティススキナーらによる条件性情動反応の実験などによって,感情を喚起する刺激が環境内のさまざまな刺激に条件づけられることが示された。N. E. ミラーは,条件刺激によって喚起された恐怖が動機づけ機能を有することを,マウラーは,回避行動が恐怖の条件づけ過程(古典的条件づけ)と,そこで条件づけられた二次性の恐怖による行動獲得の過程(道具的条件づけ,オペラント条件づけ)の2過程によって説明されることを示した。  感情の動的側面に注目した理論としてソロモンら(Solomon, R. L. & Corbit, J. D.1974)による動機づけの相反過程説(opponent-process theory of motivation)がある。これは,快刺激の呈示によって経験される快反応は,快刺激そのものによって喚起されるa過程とそれに相反するb過程(不快反応)の算術的合計によるものであり,快刺激の反復呈示により変化するのはb過程であるとする。快・不快感情の動的変化を,短期(一回の刺激呈示内)と長期(反復呈示)にわたりうまく説明する理論として注目される。 →感情 →情緒 →動機づけ →情動の生理説 →パペッツの情動回路 →攻撃/攻撃性 →ストレス →自己強化 →エソロジー →条件づけ →嫌悪条件づけ →条件性情動反応 →快・不快《吉田正昭1993;浜治世1981;今田寛1975;Darwin, C. R.1872→vid.文献 ◆今田純雄

心理学辞典 ページ 1070 での情動     単語。