大辞林の検索結果 (8)
ジューリー〖jewelry〗🔗⭐🔉振
ジューリー [1] 〖jewelry〗
⇒ジュエリー
ジュエリー〖jewelry〗🔗⭐🔉振
ジュエリー [1] 〖jewelry〗
宝石・貴金属類。
ジュエル〖jewel〗🔗⭐🔉振
ジュエル [1] 〖jewel〗
宝石。
*jew・el[dʒú:
l](英和)🔗⭐🔉振
*jew・el→音声
n.宝石(装身具);貴重なもの〔人〕.
jew・el(l)ed[‐d](英和)🔗⭐🔉振
jew・el(l)ed[-d]
a.宝石入りの〔で飾った〕.
jew・el・(l)er(英和)🔗⭐🔉振
jew・el・(l)er
n.宝石商.
〈英〉jew・el・ler・y[‐ri](英和)🔗⭐🔉振
<英>jew・el・ler・y→音声
n.宝石(装身具)類.
*jew・el・ry[‐ri](英和)🔗⭐🔉振
*jew・el・ry→音声
n.宝石(装身具)類.
日本大百科の検索結果 (4)
キクザルガイ🔗⭐🔉振
キクザルガイ
(きくざるがい)
【漢】菊猿貝
【学】Chama reflexa
jewel box
軟体動物門二枚貝綱キクザルガイ科の二枚貝。房総半島以南、西太平洋に分布し、潮間帯下から水深20メートルぐらいの岩や、他の貝の殻上に左殻で固着する。殻高40ミリ、殻長45ミリ、殻幅25ミリぐらいで、殻は厚くて丸みがある。地物に付着した左殻は膨らみが深く、右殻は左殻より小さくて膨らみは弱く蓋{ふた}のようにあう。また殻表には先が鋭く短い棘{とげ}状突起が全面に生えていて、殻表は白地に淡紅色の放射帯があったり、染め分けになっていたりする。 <奥谷喬司>
チグサガイ🔗⭐🔉振
チグサガイ
(ちぐさがい)
【漢】千種貝
【学】Cantharidus japonicus
jewel top
軟体動物門腹足綱ニシキウズガイ科の巻き貝。北海道南部から九州、沖縄にかけて分布し、潮間帯の海藻上に多くすむ。殻高20ミリ、殻径12ミリに達し、殻頂がとがった円錐{えんすい}形。螺層{らそう}は九階で、各層の膨らみは弱い。臍孔(へそあな)はほとんど閉じ、殻口は方形。黄色の薄い角質の蓋{ふた}をもつ。殻表は赤色のものが多いが、黄褐色や暗褐色のものもあり、また淡色の条斑{はん}のついたものもあって、個体によって色彩や模様の変異が多い。動物体は長い上足触角を振り動かしてはう。 <奥谷喬司>
宝石🔗⭐🔉振
宝石
(ほうせき)
gemstone / gem / jewel
外見上の美しさ、物理的な硬さ、産出の希少性を兼ね備えた、装飾に供しうる鉱物の総称。ジェムストーンともいう。学術的に明確な定義は存在しない。またこのような条件を満たす鉱物と同一物質を合成して宝石としての目的に供するとき、これを合成宝石といい、現在使用されている天然の宝石はほとんど合成が可能である。鉱物として存在しないものをつくって同様の目的に用いるとき、これを人造宝石(または人工宝石)といい、たとえば、ダイヤモンドに似た外観をもつチタン酸ストロンチウムやイットリウム・アルミニウム・酸化物(ざくろ石と同様な構造をもつ)がある。ほかに価値の低い宝石をさまざまに加工して価値を高めることがある。加熱や加圧したり、γ{ガンマ}線を当てたりして色を変えることがある。青色トパーズ・青色ジルコン・シトリントパーズ(黄水晶)はこれらの処理でつくられたものである。また二つ以上の切片(同種または異種のこともある)を張り合わせて一つの大きな宝石にみせるなどの処理をされることがあり、オパールのダブレット、トリプレットは有名な例である。
【宝石となる鉱物の諸性質】
外見上の美しさは、色、透明度、輝きなどによって支配されるが、実際には光に対して透明なものはカットされ、またある種の光学的特性をもつ場合は、その特性がより強調されるように研磨加工されることが多い。ダイヤモンドをはじめとして、屈折率の高いものは前者に、スター・サファイアなどいわゆる光芒{こうぼう}を示すものは後者に属する。色は、無色および白色(ダイヤモンド、トパーズ、緑柱石、電気石、水晶、ジルコン、たんぱく石〈オパール〉、スピネルなど)、紫色(アメジスト〈紫水晶〉、スピネル、ターフ石)、青色(サファイア、電気石、ダイヤモンド、菫青{きんせい}石、青金石、方ソーダ石、トルコ石、アクアマリン)、緑色(エメラルド、ひすい輝石、リチア輝石、電気石、苦土橄欖{かんらん}石、アレキサンドライト、碧玉{へきぎょく}、くじゃく石)、黄色(トパーズ、黄水晶、ダイヤモンド、こはく、電気石、苦土橄欖石)、褐色(シンハラ石、トパーズ、ざくろ石、ジルコン)、赤色(ルビー、スピネル、ざくろ石、ダイヤモンド、たんぱく石)、桃色(電気石、リチア輝石、緑柱石〈モルガナイト〉、スピネル、紅水晶)、黒色(赤鉄鉱、電気石、ざくろ石)などの例がある。なお、宝石のなかには、アレキサンドライトのように、日光では緑系統の色、灯火では赤色を現すような例や、電気石、菫青石のように、方向によって色の変化する、いわゆる多色性を呈するものもある。もちろんこれらは天然のままの色であるが、既存の宝石、貴石、飾り石と同質の鉱物に対して、染料をもって着色あるいは変色させたりするほか、最近は放射線、中性子線などを用いて、人工的に変色させたり、加熱処理によって色を変化させたりすることがあり、黄色から褐色系統のもののなかには、こうした処理の産物である場合もある。
物理的な硬さとしては、モース硬度にして7(石英)以上の値をもつものが選ばれるが、トルコ石は例外的に硬度5である。産出の希少性については、ある程度美しい色、透明度、硬さをもった鉱物は、もうそれだけでまれである。したがって、これらの要素のうち一部のみを満足する場合でも装飾の素材たりうることがあり、貴石(さらに程度が下がれば半貴石)、飾り石などのような用語でよばれることもある。また宝石としての必要条件に、薬品、熱あるいは光線の直射に対する安定性もあげられることがあるが、硬度の高い物質は、多くこれらの条件を満足させている。
宝石として用いられる鉱物としては、ダイヤモンド、コランダム(ルビーおよびサファイア)、緑柱石(エメラルド、モルガナイトおよびアクアマリン)、スピネル、金緑石(アレキサンドライト)、トパーズ、ざくろ石、ジルコン、電気石、たんぱく石(オパール)、トルコ石(トルコ玉ともいう)、ひすい輝石、苦土橄欖石、シンハラ石、ターフ石などがあり、これらよりやや等級の劣るものとしては、紅柱{こうちゅう}石、珪{けい}線石、菫青石、フェナス石、透輝石、リチア輝石、灰簾{かいれん}石、石英(紫水晶、黄水晶、黒水晶、煙水晶)、玉髄{ぎょくずい}(めのう、碧玉)、青金石、こはくなどがあり、貴石という名称で一括されることもある。
さらに次の段階である飾り石としては、長石類、赤鉄鉱、あられ石、蛍石、くじゃく石、ばら輝石、蛇紋石、方ソーダ石、ベスブ石、透閃{とうせん}石(軟玉)、クロチド閃石(虎目石{とらめいし})などがあり、鉱物なみに飾り石の取扱いをされる岩石に黒曜石とテクタイトがある。また最近旧ソ連で発見された新鉱物チャロ石は美しい藤{ふじ}色の繊維状結晶の緻密{ちみつ}な集合をなし、飾り石として加工され、世界各地に広まりつつある。
真珠は宝石として扱われることも多く、事実、成分的には炭酸カルシウムからなっているが、有機的に生成されるため鉱物とはいいがたく、ここでは宝石として取り扱わない。
【産状および産地】
ダイヤモンドは、そのほとんどがキンバレー岩中、あるいはこれが分解して生じた土壌、砂鉱中に産する。隕石{いんせき}中のものはきわめて微粒である。南アフリカ、旧ソ連、ブラジルのほか、最近は中国やオーストラリアでも産出が知られている。ルビーの良質のものは、再結晶石灰岩中のもので、ミャンマー(ビルマ)、スリランカ、インドなどが世界の供給源である。サファイアの産状としては、玄武岩あるいはこの分解によって生じた土砂中のものが重要で、ミャンマー、インド、スリランカなどに知られる。オーストラリア産のものは、泥質岩起源の高温生成の変成岩中のものである。
エメラルドの産地としては、ロシアウラル地方、南米コロンビアなどが有名で、いずれも泥質岩起源の雲母{うんも}片岩中に産する。エメラルドは硬度の高いわりにもろく、砂鉱に入ることはほとんどない。モルガナイトは、おもにペグマタイト中に産する。アクアマリンの最大産地はブラジルのミナス・ジェライス州で、花崗{かこう}岩質ペグマタイト中に産する。スピネル(尖晶{せんしょう}石)中宝石となるものは、再結晶石灰岩あるいは苦灰岩中か、これに由来する砂鉱中のもので、赤から紫系統の色のものが宝石として重要視される。アレキサンドライトはエメラルド同様雲母片岩中のものとペグマタイト中のもの、あるいはこれらを源とする砂鉱などで産する。トパーズはペグマタイト中のものが重要で、ブラジル、旧ソ連、ドイツなどに著名産地があるが、わが国の岐阜県苗木{なえぎ}地方、滋賀県田上{たなかみ}山、山梨県甲府市黒平{くろべら}なども有名である。なおアメリカ合衆国ユタ州では、流紋岩中に美晶を産する所がある。ざくろ石は鉱物学的には十数種の独立鉱物を含む一つの鉱物群であるが、宝石(あるいは貴石、飾り石)として用いられるものは、灰礬{かいばん}ざくろ石、苦礬{くばん}ざくろ石、鉄礬ざくろ石、満礬ざくろ石、灰鉄ざくろ石の5種である。灰礬ざくろ石は再結晶石灰岩中のもので、スリランカ産のものが有名である。苦礬ざくろ石は高温条件下でのみ生成される鉱物で、榴輝{りゅうき}岩中のものではボヘミア産のものが名高く、また南アフリカ共和国のキンバレー岩中のもののなかにも良質のものがある。鉄礬ざくろ石は、片麻{へんま}岩、花崗岩質ペグマタイト、流紋岩などの中に多く産し、満礬ざくろ石も同様の産状をもっている。灰鉄ざくろ石は再結晶石灰岩、蛇紋岩、緑泥片岩、霞石閃長{かすみいしせんちょう}岩中などに産する。
ジルコンは、スリランカの砂鉱中のものが透明度が高く最上質といわれている。これはおそらく時代の古い片麻岩に起源をもつもので、わが国でも産地は多いが透明なものはまったくない。電気石系列の鉱物中、宝石の要素をもつものはリチア電気石と新鉱物の灰リチア電気石(リディコート石)、苦土電気石の3種で、始めの2種はマダガスカル島のもの、リチア電気石はアメリカ合衆国カリフォルニア州のものが有名で、いずれもいわゆるリチウムペグマタイトの構成鉱物である。これに対し苦土電気石はおもに塩基性火成岩起源の各種結晶片岩、再結晶苦灰岩中などにみられ、産地は多い。たんぱく石のうちで宝石としての価値をもつ、いわゆる貴たんぱく石は、酸性火山岩あるいは火砕岩中の団塊として、もしくは地下浅所でケイ酸分に富んだ地下水からの沈殿物の構成成分として産し、メキシコは前者の、オーストラリアは後者の産状の例である。日本では、福島県宝坂{ほうさか}鉱山でまれに貴たんぱく石といわれているものを少量産する。トルコ石は泥質岩あるいは粗面岩などのようにアルミニウム分の多い岩石中に細脈、塊をなし、また銅鉱床の酸化帯に産する。世界的な産地としては、イラン、シナイ半島、エジプト、旧ソ連、アメリカ合衆国、オーストラリアなどで、トルコは単にペルシア(イラン)産のもののヨーロッパへの窓口であったにすぎない。ひすい輝石は高圧条件下でのみ生成される一種の変成鉱物で、塊状をなすものは、蛇紋岩のような超塩基岩に伴われる曹長岩の主成分として産する。ミャンマー、中国のものはとくに有名で、わが国でも新潟県糸魚川{いといがわ}市と同県西頸城{にしくびき}郡青海{おうみ}町のもののなかには、かなり良質のものがある。苦土橄欖石は普通に産する鉱物であるが、宝石用のものの産地は少なく、紅海のセント・ジョーンズ島の橄欖岩以外には、オーストラリア、ミャンマー、アメリカ合衆国などにいくつかの産地があるだけで、現在はもうほとんど産出がないといわれている。シンハラ石は、1952年、スリランカ(当時のセイロン)産の橄欖石と誤認されていた宝石を研究して新鉱物として公表したもので、理想式MgAlBO[▼4]、再結晶苦灰岩中に生成されたものが砂鉱に入り、そこで採集された。その後アメリカ合衆国からも発見されたが、宝石的な価値はない。ターフ石も同様に、1951年イギリスのターフ伯爵が入手した「スピネル」を研究した結果MgBeAl[▼4]O[▼8](のちMg[▼3]Al[▼8]BeO[▼16]に訂正)の組成をもつ新鉱物であることが判明し、彼にちなんで命名されたもので、スリランカの産出といわれる。
【宝石としての加工・利用】
宝石はほとんどすべての場合、表面を研磨し、またその美しさを十分発揮できるように整形するのが普通で、その方法には次の四つがある。すなわち、カボションcabochon、ローズrose、ブリリアントbrilliantおよびステップstepである。
カボションは比較的低硬度の不透明ないし半透明のものに対して応用される方法で、球あるいは回転楕円{だえん}体に近い形に仕上げたもの、これを長軸に平行に切り、断面を膨らませたものや断面を平らにしたもの、また逆に凹{へこ}ませたものなどがあり、球状に磨かれるものにはスター・サファイア、断面を膨らませた形にするものにはたんぱく石など、平らな切断面のものは虎目石、月長石などに応用されている。ローズは低い錐{きり}状の断面をもつもので、通常は一つの大きな底面と錐{すい}面上の24個の小三角面をもつもので、かつてはダイヤモンドに対して用いられた。ブリリアントはダイヤモンドをはじめ透明な宝石に対して用いられている方法で、一方は頂部に平面をもつ角錐台で合計33個の平面を、反対側は25個の面をもつ角錐に近い立体である。前者の部分をクラウン、後者をパビリオン、境界の稜{りょう}にあたる部分をガードルという。頂部の平面をテーブル、パビリオンの頂点は小平面となっており、これをキュレットという。現在では102面で仕上げる方法が流行している。宝石の屈折率に応じてクラウン、パビリオンの角度を調節し、表面から入った光がすべて反射されるように設計される。ステップは正方形あるいは長方形の角をとった八角形の輪郭に大きなテーブルとこれに接する平行な傾斜面をもち、パビリオン相当の部分もガードルに平行な稜をもったいくつかの傾斜面からなっている。これはエメラルド、電気石などによく用いられるカットである。
宝石の利用は、たとえばダイヤモンドにおいては、世界全体の産額の90%以上が工業用の目的に使用されているが、実生活と直接関係するのは、一つの貴重品として財産価値を賦与された場合である。当然そのような宝石は装身具としての重要性も大きいが、古くから、ある特定の宝石を1年12か月に対応させ、その月に生まれた人がその宝石を身につけると、悪魔除{よ}けとなって幸福をもたらすという迷信があった。これが誕生石のおこりで、18世紀中ごろからヨーロッパ大陸で盛んになっていった。現在、誕生石としてもっとも広く受け入れられているものは次のとおりである。1月(ざくろ石)、2月(紫水晶)、3月(血石{けつせき}、赤色の碧玉)、4月(ダイヤモンド)、5月(エメラルド)、6月(真珠)、7月(ルビー)、8月(赤縞{しま}めのう)、9月(サファイア)、10月(たんぱく石)、11月(トパーズ)、12月(トルコ石)。→誕生石 <加藤 昭>
【宝石と装い】
東西の美意識の違いから、西洋では光を反射して鮮やかに輝く宝石が好まれ、ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、サファイア、真珠が五大宝石とよばれて珍重されてきた。東洋では七宝{しちほう}、七珍{しっちん}といわれる金、銀、サンゴ、真珠、瑠璃{るり}(ラピスラズリ)、玻璃{はり}(水晶)、めのうが貴ばれる。とくに日本では、光を吸収してしっとりと深い色彩をたたえた、ひすい、サンゴ、こはく、めのう、べっこう、真珠、水晶、白色オパールなどがとくに好まれてきた。昨今はオレンジ系のメキシコオパールを好む日本人に対して、欧米では寒色系のオーストラリアオパールに人気がある。日本人の肌色には、真珠ならばクリーム系、エメラルドやひすいのグリーン、そしてざくろ石(ガーネット)やルビー、サンゴなどの暖色系の石がよく映える。白色人種に似合うサファイア、トルコ石、ラピスラズリなどの鮮やかなブルー、そしてピンク系やブラック系の真珠は日本人向きではないといわれていたが、近年は誕生石の影響もあってか、好みの石を自由に用いている。
和装では、指輪、帯留、髪飾り、羽織の紐{ひも}などに、伝統的な日本人好みの宝石を用いてきた。目新しいところでは、時計をセットした宝石入りの指輪(和服には腕時計が不調和なので)、洋装のブローチにもなる宝石の帯留、数珠{じゅず}リング(旅先や略式の仏事に用いる指にはめる小さな数珠)などがある。
洋装の場合、昼間はカジュアルに、夕方以後はドレッシーにというのが装いの鉄則であるが、宝石の使用も当然これに従ってきた。昼の光のなかでは石の色彩を楽しみ、夜の照明の下では石の輝きを愛{め}でることになり、透明度の高いものほど夜の雰囲気にふさわしい石となる。夜のフォーマルウエアにあう石は、先に述べた五大宝石、または七大宝石(五大宝石のうち真珠を除き、ひすい、猫目石、アレキサンドライトを加える)をはじめ、スタールビー、スターサファイア、ムーンストーン、オパール、アメシスト、トパーズなど。
昼の装いにふさわしい石は、ざくろ石、アメシスト、サンゴ、アクアマリン、サードオニックス、トルコ石、くじゃく石、ラピスラズリ、こはく、めのうなどである。しかしダイヤモンドと真珠は、昼夜を問わず使ってもよいオールマイティの石とされ、最近は宝石のTPO(時、所、場合)は大きく崩れてきている。規則にとらわれず個人の好みで、季節によって、年齢によって、それぞれの石のもつ外観やフィーリングを楽しむことができる。 <平野裕子>
【宝石の文化史】
宝石は、現代人がその色と光に美しさを感じ、絶対量の少なさも加わって貴重品として貴んでいるが、こうした価値規準が歴史上普遍な、あるいは汎{はん}世界的なものであったとは限らない。もっとも一般的な形では、「たま」として古くから用いられていたが、何を「たま」とよぶかは、時代や地域によって異なっていた。日本では縄文時代から玉{ぎょく}製の勾玉{まがたま}や管玉{くだたま}がつくられ始め、弥生{やよい}、古墳時代に装身具として盛行し、日本神話のなかでも三種の神器の一つとして「たま」は登場する。中国でも「王」という字がひすいの「たま」を三つ連ねた象形文字からきたものといわれている。
しかし、宝石として価値を高めるようになるのは、ヨーロッパでの貴金属工芸、とくに象眼{ぞうがん}細工の発達に負うところが大きい。シュメール人は、黄金の数珠{じゅず}玉に瑠璃{るり}や紅玉髄{こうぎょくずい}、めのうや碧玉{へきぎょく}、大理石や銀を並置させ、みごとな首飾りなどをつくりだしている。指輪にも関心をもった彼らは、黄金板を宝石のはめ込み台として生地{きじ}にはんだ付けし、宝石の大きさを調整して接着剤で固定した作品を生み出している。
このほか、バビロニアの王ハムラビの石柱に彫刻された太陽神シャマシュの像をはじめとして、アッシリアの諸王の記念碑には、驚くほどの量の宝石がちりばめられている。一方エジプトでも、すでに第1王朝の王妃の腕飾りにラピスラズリ、トルコ石、アメシストが用いられている。第18王朝のツタンカーメン王の墳墓で発見された副葬品の豪華さは有名である。国王の像を高浮彫りにした棺の蓋{ふた}だけに言及しても、七宝{しっぽう}細工の帯で襟が装飾され、翼を広げたハゲタカの形をした二女神が庇護{ひご}するようにみえる下半身と腕の部分は、瑠璃、紅玉髄、緑長石、不透明多彩のガラスで飾られている。
初期ギリシア時代の宝石については、ホメロスが『イリアス』のなかでアキレウスの盾を記述しながら触れているし、同じギリシアの土地から、ミケーネ文明に属する黄金などで象眼した玉石が、シュリーマンの手で発見されている。
宝石に関する俗信は世界各地で知られる。宝石のもつ硬度、輝き、美しい色彩が、神秘的な、特別な力をもつと信仰される理由の根源にあると考えられ、護符として携帯することが多い。たとえばルビーは、古代インドでは持ち主に健康や富、知恵や幸福をもたらすとされ、中世ヨーロッパでも毒消し、落雷とコレラよけの効力をもつとされていた。誕生石の信仰も元をただせば、こうした信仰から生まれた。また、宝石を1年の12か月に割り当てるという占星学にたけたカルデア人の風習をはじめとしたさまざまな俗信からは、月々の宝石を身につければ幸福になるという信仰が生まれるが、後代宝石の価値の上昇とともにこのぜいたくな行為が不可能になり、自分の生まれ月の宝石だけを身につける習慣に変わっていった。
宝石のもう一つの重要な役割は、医薬として用いられたことにある。エメラルド、ルビー、サファイア、ざくろ石、真珠などは、中世医学のなかで堂々と取り上げられている薬であり、通常粉末にしたものを調合する。また、止血療法として血石{けっせき}を患部にあてがうという記録や、わき腹の痛みを和らげるのには「ひすい」がよいという俗信はよく知られている。とくにひすいの語源は、スペイン語の「わき腹の石」に由来している。古代ギリシアの宝石細工の職人たちはエメラルドを見ては目の疲れをいやしていたというが、この方法は現代科学でも認められている。このエメラルドは、のどとあごの病気を治すものとも考えられる一方で、悪魔を退ける宝石とみなされていた。こうした宝石のもつ象徴性に目を向けると、ざくろ石が貞操、友愛、忠実を表現しているし、アメシストは高い徳と理想、権威のシンボルであった。このほか、貞操、純粋を象徴し、怒りを和らげ恋の勇気を与え、夫婦間の信頼を壊さぬ宝石としてダイヤモンドを、また富や処女の象徴として真珠をあげることができる。 <関 雄二>
【本】P・J・フィッシャー著、崎川範行訳『宝石の科学』(1970・共立出版) ▽砂川一郎・鹿子木昭介著『宝石の話』(1970・出光書店) ▽H・バンク著、川田功訳『宝石の世界』(1974・日貿出版社) ▽近山晶監、寺内隆著『宝石手帖』(1975・ブックマン社) ▽F・H・プー著、原田馨訳『宝石に強くなる本』(1975・講談社・ブルーバックス) ▽塩月弥栄子著『宝石の本』(1977・光文社・カッパ・ホームス) ▽崎川範行著『宝石のみかた』(1980・保育社・カラーブックス) ▽砂川一郎著『宝石は語る』(1983・岩波新書) ▽ジャン・ランリエ、マリー・アンヌ・ピニ著、菱田安彦・田辺貞之助訳『世界の宝石美術館――ルネッサンス以後のジュウリー・デザイン』(1972・鎌倉書房) ▽酒井美恵子・池田裕著『宝石全書』(1977・主婦と生活社)
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