広辞苑の検索結果 (42)
おお【大】オホ🔗⭐🔉振
おお【大】オホ
〔接頭〕
①広大または多量の意を表す。「―川」「―雪」↔小こ・お。
②尊敬または讃美の意を表す。「―君」「―江戸」
③程度が大きくはげしい意を表す。「―あわて」「―いばり」
④血筋の順序で、上位の意を表す。「―おじ」
⑤重要の意を表す。「―勝負」
⑥最後極限の意を表す。「―晦日」「―詰め」
⑦全体にわたる意を表す。「―づかみ」
おお‐あしらい【大あしらい】オホアシラヒ🔗⭐🔉振
おお‐あしらい【大あしらい】オホアシラヒ
おおまかにあしらうこと。丁重にもてなさないこと。
おおい【大・正】オホイ🔗⭐🔉振
おおい【大・正】オホイ
〔接頭〕
⇒おおき[二]2・3。「大監物おおいおろしもののつかさ」「正三位おおいみつのくらい」↔少すない↔従ひろい
おおい‐なる【大いなる】オホイ‥🔗⭐🔉振
おおい‐なる【大いなる】オホイ‥
(オオキナルの音便)大きい。大変な。
おおいなるいさん【大いなる遺産】オホイ‥ヰ‥🔗⭐🔉振
おおいなるいさん【大いなる遺産】オホイ‥ヰ‥
(Great Expectations)ディケンズの小説。1860〜61年刊。貧しい孤児ピップの人間的成長を通じて、金銭欲につかれたヴィクトリア朝の社会と人間を批判。
おおいなるげんえい【大いなる幻影】オホイ‥🔗⭐🔉振
おおいなるげんえい【大いなる幻影】オホイ‥
(La grande illusion フランス)フランス映画の題名。J.ルノワール監督、1937年作。第一次大戦でドイツの捕虜となったフランス軍飛行士らがスイスに脱走する物語で、国家を超えるヒューマニズムと反戦精神を描く。ジャン=ギャバンら出演。
おおい‐に【大いに】オホイ‥🔗⭐🔉振
おおい‐に【大いに】オホイ‥
〔副〕
(オオキニの音便)非常に。はなはだ。たくさん。「―努力してほしい」「―楽しんだ」
おお‐かぶり【大かぶり】オホ‥🔗⭐🔉振
おお‐かぶり【大かぶり】オホ‥
(大いに毛氈もうせんをかぶるの意)大しくじり。洒落本、古契三娼「知れると―さ」→毛氈をかぶる
おおき【大】オホキ🔗⭐🔉振
おおき【大】オホキ
(多シと同源のオホ(大)シの連体形。音便によりオホイとなる)
[一]〔名〕
①大きいこと。竹取物語「海の上にただよへる山、いと―にてあり」
②甚だしいこと。竹取物語「み命の危さこそ―なる障りなれば」
[二]〔接頭〕
①大きい、偉大な、の意。万葉集3「古の―聖」。万葉集20「―海のみなそこ深く」
②同官で上位のもの。天武紀上「大納言おおきものもうすつかさ蘇賀果安臣」↔少すなき。
③(「正」と書く)(位階は、古く大・広に分かれたので)正位。古今和歌集序「―みつのくらゐ柿本人麻呂」↔従ひろき
おおき・い【大きい】オホキイ🔗⭐🔉振
おおき・い【大きい】オホキイ
〔形〕
(室町以後の語。オホキを形容詞化したもの)
①(物の形にいう)容積・身長などが多くの場所を占めている。かさ張っている。狂言、千鳥「―・うはござれども、そこさへ千鳥ぢやと思し召せば済む事でござる」。「―・い荷物を背負う」
②量が多い。程度がはなはだしい。ひどい。狂言、長光「人の太刀に手を掛くるとは―・い盗人めぢや」。「身代が―・い」「声が―・い」「―・く違う」
③範囲が広い。規模がすぐれている。「―・い計画」
④包容力がある。度量がある。「人物が―・い」
⑤年齢が上である。「―・い姉さん」「―・くなったら」
⑥大げさである。「―・いことをいう」
おおき‐な【大きな】オホキ‥🔗⭐🔉振
おおき‐な【大きな】オホキ‥
〔連体〕
(室町以後の語。文語オホキナリの連体形から)大きい。「小さいからだに―望み」「―事をいう」↔小さな。
⇒おおきな‐かお【大きな顔】
⇒おおきな‐ものがたり【大きな物語】
⇒大きなお世話
⇒大きな口を利く
○大きなお世話おおきなおせわ🔗⭐🔉振
○大きなお世話おおきなおせわ
いらぬお節介はかえって迷惑だ。
⇒おおき‐な【大きな】
おおきな‐かお【大きな顔】オホキ‥カホ🔗⭐🔉振
おおきな‐かお【大きな顔】オホキ‥カホ
①いばった顔つき。「―をして出入りする」
②悪いことをしながら平然とした様子をするさま。「―でいる」
⇒おおき‐な【大きな】
○大きな口を利くおおきなくちをきく🔗⭐🔉振
○大きな口を利くおおきなくちをきく
その人にはふさわしくない大きな事を言う。大きな口をたたく。「よくもそんな大きな口が利けたものだ」
⇒おおき‐な【大きな】
おおきな‐ものがたり【大きな物語】オホキ‥🔗⭐🔉振
おおきな‐ものがたり【大きな物語】オホキ‥
(grand récit フランス)リオタールの用語。キリスト教・啓蒙主義的理性・マルクス主義などの大きなイデオロギーのこと。
⇒おおき‐な【大きな】
おおき‐に【大きに】オホキ‥🔗⭐🔉振
おおき‐に【大きに】オホキ‥
〔副〕
(室町時代以後の語。文語オホキナリの連用形から)
①非常に。大いに。迷惑なことを非難し、また皮肉にいう時にも使う。「―お世話だ」
②「おおきにありがとう」の略。関西地方などで広く使われる。
おおき‐やか【大きやか】オホキ‥🔗⭐🔉振
おおき‐やか【大きやか】オホキ‥
大きい感じのするさま。おおがら。源氏物語少女「―なるわらはの」
おお・し【大し】オホシ🔗⭐🔉振
おおずけ‐な・い【大づけない】オホヅケ‥🔗⭐🔉振
おおずけ‐な・い【大づけない】オホヅケ‥
〔形〕
おとなげない。浄瑠璃、伽羅先代萩「―・うて哀れなり」
おお‐だら【大だら】オホ‥🔗⭐🔉振
おお‐だら【大だら】オホ‥
(「大だんびら」の転)幅のひろい刀。浄瑠璃、夏祭浪花鑑「男の丸腰も見苦しいと、―腰にぼつ込む所を」
おお‐どた【大どた】オホ‥🔗⭐🔉振
おお‐どた【大どた】オホ‥
(取引用語)相場がちょうどで、端数のないこと。金額が大きい場合にいう。
おお‐とろ【大とろ】オホ‥🔗⭐🔉振
おお‐とろ【大とろ】オホ‥
マグロのとろのうち、最も脂肪分に富み濃厚な味の部分。
おお‐どろ【大どろ】オホ‥🔗⭐🔉振
おお‐どろ【大どろ】オホ‥
歌舞伎囃子の一つ。どろどろを大きく(強く)打つもの。幽霊・妖怪などの出入に用いる。大どろどろ。
おお‐のら【大のら】オホ‥🔗⭐🔉振
おお‐のら【大のら】オホ‥
大のなまけもの。浄瑠璃、長町女腹切「やあ此の半七の―めは」
おっき・い【大っきい】🔗⭐🔉振
おっき・い【大っきい】
〔形〕
(オオキイの促音化)大きい。「―・い車」
だい【大】🔗⭐🔉振
だい【大】
(呉音。漢音はタイ)
①おおきいこと。おおきいもの。おおきさ。「声を―にする」「あずき―」↔小。
②(中・少に対する)最上級のもの。「―納言」
③程度の甚だしいこと。おおいに。「―の酒好き」「―嫌い」
④美称また敬称として用いる。「大兄たいけい」
⑤同名のものを区別するとき、上位または一次的な方に添える語。「―戴」「―デュマ」
⑥大の月。太陽暦で31日、太陰暦で30日である月。日葡辞書「コノツキハダイデゴザル」
⑦太閤検地以前の地積の単位。1段の3分の2、すなわち240歩。大歩だいぶ。→小→半。
⑧大学の略。
⇒大なり小なり
⇒大の虫を生かして小の虫を殺す
⇒大は小を兼ねる
たい‐し‐た【大した】🔗⭐🔉振
たい‐し‐た【大した】
〔連体〕
①非常な。大変な。おどろくべき。「―人数だ」「―ものだ」
②(打消を伴って)とりたてていうほどの。「―事はない」
たい‐し‐て【大して】🔗⭐🔉振
たい‐し‐て【大して】
〔副〕
①(明治期の用法)大いに。非常に。
②(打消を伴って)とりあげていうほど。それほど。「―面白くない」
だい‐それ‐た【大それた】🔗⭐🔉振
だい‐それ‐た【大それた】
〔連体〕
甚だしく道理からはずれた。とんでもない。けしからぬ。浄瑠璃、伽羅先代萩「下郎めが―偽り言」。「―事をしでかす」
だい‐だい【大大】🔗⭐🔉振
だい‐だい【大大】
大きなさま。
⇒だいだい‐てき【大大的】
だいだい‐てき【大大的】🔗⭐🔉振
だいだい‐てき【大大的】
きわめて大がかりに物事を行うさま。「―に宣伝する」
⇒だい‐だい【大大】
○大なり小なりだいなりしょうなり🔗⭐🔉振
○大なり小なりだいなりしょうなり
大きかろうが小さかろうが。大小に拘わらず。程度の差こそあれ。多少は。大なれ小なれ。
⇒だい【大】
だい‐の【大の】🔗⭐🔉振
だい‐の【大の】
〔連体〕
①体も大きく良識もある一人前の。「―おとな」
②非常な。たいへんな。「―好物」
⇒だいの‐おとこ【大の男】
だいの‐おとこ【大の男】‥ヲトコ🔗⭐🔉振
だいの‐おとこ【大の男】‥ヲトコ
一人前の男のことを強調していう語。「―が泣くんじゃない」
⇒だい‐の【大の】
だい‐の‐こ【大の子】🔗⭐🔉振
だい‐の‐こ【大の子】
小正月の祝木いわいぎ。削り掛けの一種。東海地方で豊産のまじないに用いる。「だいのほこ」と呼ぶ地方もある。
だい‐の‐じ【大の字】🔗⭐🔉振
だい‐の‐じ【大の字】
①漢字の「大」という字。また、その形に似たもの。特に、人が手足をひろげて上向きに寝転んだ姿。
②「大文字だいもんじの火」のこと。
だい‐の‐つき【大の月】🔗⭐🔉振
だい‐の‐つき【大の月】
太陽暦で31日、太陰暦で30日の日数のある月。太陽暦では、1月・3月・5月・7月・8月・10月・12月。↔小の月
だい‐の‐ほこ【大の矛】🔗⭐🔉振
だい‐の‐ほこ【大の矛】
(→)「大の子」に同じ。
○大の虫を生かして小の虫を殺すだいのむしをいかしてしょうのむしをころす🔗⭐🔉振
○大の虫を生かして小の虫を殺すだいのむしをいかしてしょうのむしをころす
やむを得ない時には、大きいものを救うために小さいものを犠牲にする。小の虫を殺して大の虫を助ける。「大を生かして小を殺す」とも。
⇒だい【大】
○大は小を兼ねるだいはしょうをかねる🔗⭐🔉振
○大は小を兼ねるだいはしょうをかねる
[春秋繁露度制]大きいものは小さいものの代りにも用いることができる。
⇒だい【大】
[漢]大🔗⭐🔉振
大 字形
筆順
〔大部0画/3画/教育/3471・4267〕
〔音〕ダイ(呉) タイ(漢)
〔訓〕おおきい・おおいに・おお= (名)おおき・ひろ・ひろし
[意味]
①形や規模がおおきい。(対)小。「大の男」「大の月」「声を大にする」「大は小を兼ねる」「大地・大海たいかい・大金たいきん・巨大・拡大・大事件・大英帝国」
②すぐれている。ずばぬけている。重要。「大徳・偉大・大官たいかん・大役たいやく・大学者・大悪党」
㋐同じ役向きの最高位。(対)少。「大将たいしょう・だいしょう・大納言・大僧正」
㋑天子に関する物事に冠する語。「大権・大命・大葬・大詔」
㋒他人を尊敬して冠する語。「大兄たいけい」
③おおまか。あらまし。「大体・大勢たいせい・大意たいい」
④おおいに。はなはだ。おおげさ。「大の仲よし」「大慶たいけい・大言たいげん・大敗たいはい」
⑤おおきさ。「等身大・実物大」
⑥〔仏〕万物の構成元素。「四大・五大」
⑦「大学」の略。「大卒・都立大・女子大」
[解字]
人が両手両足をひろげて立っている象形。おおきい意を表す。
[下ツキ
偉大・遠大・郭大・拡大・過大・寛大・強大・極大・巨大・広大・高大・誇大・五大・最大・細大・散大・四大・至大・事大主義・重大・針小棒大・甚大・正大・盛大・絶大・壮大・増大・措大・粗大・尊大・多大・胆大心小・長大・著大・椽大・同大・特大・博大・莫大・肥大・尾大・厖大・膨大・夜郎自大・雄大
[難読]
大分おおいた・大雑把おおざっぱ・大晦おおつごもり・大晦日おおみそか・大凡おおよそ・大童おおわらわ・大鋸屑おがくず・大殿おとど・大人おとな・うし・大原女おはらめ・大鮃おひょう・大蛇おろち・大角豆ささげ・大刀たち・大蒜にんにく・おおびる・大和やまと


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おお【大】🔗⭐🔉振
おお オホ 【大】
■一■ (形動ナリ)
大きいさま。ゆったりしたさま。「あがため裁たばやや―に裁て/万葉 1278」
■二■ (接頭)
名詞に付く。
(1)「大きい」「多い」「広い」などの意を表す。
⇔小(コ)
「―男」「―雨」「―川」「―通り」
(2)程度のはなはだしいことを表す。「―あわて」「―にぎわい」「―騒ぎ」
(3)「くわしくない」「大体の」「こまやかでない」などの意を添える。「―づかみにする」「―味」
(4)「大事な」「重要な」の意を表す。「ここ一番の―勝負」「―一番」
(5)「最後の」「最終の」の意を表す。「―詰め」「―みそか」
(6)「上位の」「年長の」の意を表す。「―叔父」「―旦那」
(7)尊敬や賛美の気持ちを表す。「―御所」「―江戸」
おお-あしらい【大あしらひ】🔗⭐🔉振
おお-あしらい オホアシラヒ 【大あしらひ】
粗略に扱うこと。いいかげんなもてなし。「古参の人を―にするゆゑ/浮世草子・其磧諸国物語」
おおい【大い】🔗⭐🔉振
おおい オホイ 【大い】 (形動ナリ)
〔「おおき(なり)」の転〕
(1)形状の大きなさま。「なえたる衣どもの厚肥えたる,―なる籠にうちかけて/源氏(帚木)」
(2)程度のはなはだしいさま。「とうりう寺に上野(カンズケ)のみ子の―なるわざし給ふなるを/宇津保(藤原君)」
〔現在では,連体形「大いなる」と連用形「大いに」とが用いられる。→おおいなる・おおいに〕
おおい【大】🔗⭐🔉振
おおい オホイ 【大】 (接頭)
〔「おほき」の転〕
名詞に付く。
(1)同じ官職・位階のうち,上位であることを表す。「―まうちぎみ(大臣)」「―みつのくらゐ(正三位)」
(2)年長の人であることを表す。「―ぎみ(大君)」「―ご(大御)」
おおい-なる【大いなる】🔗⭐🔉振
おおい-なる オホイ― [1] 【大いなる】 (連体)
〔形容動詞「おおい(なり)」の連体形から〕
大きい。また,偉大な。「―野望」
おおい-に【大いに】🔗⭐🔉振
おおい-に オホイ― [1] 【大いに】 (副)
〔形容動詞「おおい(なり)」の連用形から〕
程度が普通以上であるさま。非常に。はなはだ。「―愉快だ」「可能性は―ある」
おお-かぶり【大かぶり】🔗⭐🔉振
おお-かぶり オホ― 【大かぶり】
〔「かぶる」は芝居関係者の隠語「毛氈(モウセン)をかぶる」の略で,失策の意〕
大失敗。おおしくじり。「知れると―さ/洒落本・古契三娼」
おおき【大き】🔗⭐🔉振
おおき オホキ 【大き】
■一■ (形動ナリ)
〔本来は「多し」と同源。その連体形「おおき」が上代では分量の大きいこと,さらには質のすぐれたことに用いられたが,中古では「おおき(なり)」と形容動詞として用いられるに至った。→おおし(大)〕
(1)容積・面積が大であるさま。「いと―なる河あり/伊勢 9」
(2)規模が大がかりであるさま。「―なることもし給はば/源氏(若菜下)」
(3)程度が大であるさま。はなはだしいさま。「中御門京極のほどより―なる辻風おこりて/方丈記」
■二■ (接頭)
名詞に付く。
(1)大きい,偉大な,の意を表す。「―海」「―聖(ヒジリ)」
(2)同じ官職・位階のうち,上位であることを表す。「―ものまうすつかさ(大納言)」「―みつのくらゐ(正三位)」
おおき・い【大きい】🔗⭐🔉振
おおき・い オホキイ [3] 【大きい】 (形)
〔形容動詞「おおき(なり)」の語幹を形容詞化した語。室町時代以降の語〕
(1)(物の形の)容積・面積・身長などが他のものより上回っている。多くの範囲を占めている。「―・い箱」「―・い男」「―・く円を描く」
(2)規模がまさっている。勢力がある。「―・い会社」「―・い国」
(3)数量が多い。「生産量が―・い」「損害が―・い」
(4)年上である。「―・い兄さん」
(5)音量がまさっている。「声が―・い」
(6)度量がある。包容力がある。スケールが雄大だ。「気を―・く持つ」「―・い人物」「考えが―・い」「腹が―・い」
(7)重大である。重要である。「世間を驚かした―・い事件」「この契約の成功は会社にとって―・かった」
(8)おおげさだ。実際より誇張されている。「話が―・い」
(9)いばっている。謙虚でない。「―・い顔をする」「態度が―・い」
(10)程度がはなはだしい。ひどい。「それとこれとでは―・い違いだ」
〔名詞を修飾するときは形容動詞「おおきな」を使うことも多い〕
⇔ちいさい
→おおき
→おおきな
[派生] ――さ(名)
おおき-さ【大きさ】🔗⭐🔉振
おおき-さ オホキ― [0] 【大きさ】
(1)物の形・面積・容積などの程度。
(2)数量の多さの程度。「損害の―」
(3)規模・勢力・度量などの大きい程度。
おおきな【大きな】🔗⭐🔉振
おおきな=お世話🔗⭐🔉振
――お世話
よけいな世話。いらぬおせっかい。大きにお世話。他人がしてくれる世話を拒むときにいう語。
おおきな==顔(=面(ツラ))🔗⭐🔉振
――=顔(=面(ツラ))
(1)自分がえらい者であるかのような顔つき。いばった顔つき。
(2)悪いことをしながら平然とした態度。「張本人のくせに―をしている」
おおきな=口をき・く🔗⭐🔉振
――口をき・く
偉そうなことをいう。大きな口をたたく。「できもしないくせに―・くな」
おおきな=目(メ)にあ・う🔗⭐🔉振
――目(メ)にあ・う
ひどい目にあう。「今に帰つたら,―・はせてやりませう/滑稽本・浮世風呂 2」
おおき-に【大きに】🔗⭐🔉振
おおき-に オホキ― [1] 【大きに】
〔形容動詞「おおき(なり)」の連用形から。室町時代以降の語〕
■一■ (副)
(1)非常に。はなはだ。大いに。「―お世話だ」「―ありがとう」
(2)(相手の言葉に相づちを打つときに用いて)なるほど。まったく。「―そうかもしれませんね」
■二■ (感)
感謝やお礼の気持ちを表す言葉。ありがとう。関西地方で広く用いる。
おおき-め【大きめ】🔗⭐🔉振
おおき-め オホキ― [0] 【大きめ】 (名・形動)
少し大きいくらいである・こと(さま)。
⇔小さめ
「セーターを―に編む」
おおき-やか【大きやか】🔗⭐🔉振
おおき-やか オホキ― 【大きやか】 (形動ナリ)
大きなさま。大きそうに見えるさま。「―なる童女/枕草子 235」
おお・し【大し】🔗⭐🔉振
おお・し オホシ 【大し】 (形ク)
〔「多し」と同源。連体形の用例しかなく,のちには「おおき(なり)」という形容動詞として用いられた〕
(1)大きい。広い。「―・き海の水底(ミナソコ)深く思ひつつ/万葉 4491」
(2)偉大だ。「酒の名を聖(ヒジリ)と負(オオ)せし古(イニシエ)の―・き聖の言(コト)のよろしさ/万葉 339」
→おおき
おおずけ-な・い【大づけない】🔗⭐🔉振
おおずけ-な・い オホヅケ― 【大づけない】 (形)
〔近世語〕
全くふさわしくない。おとなげない。「―・くも証文書て人の命を助けしは/滑稽本・放屁論」
おお-だら【大だら】🔗⭐🔉振
おお-だら オホ― 【大だら】
〔「おおだんびら」の転〕
幅の広い太刀。「―腰にぼつ込む所を/浄瑠璃・夏祭」
おおつごもり【大つごもり】🔗⭐🔉振
おおつごもり オホツゴモリ 【大つごもり】
小説。樋口一葉作。1894年(明治27)「文学界」発表。薄幸の少女お峰の女中生活を通じての哀感を,大つごもりを背景に描く。
おおっ-ぴら【大っぴら】🔗⭐🔉振
おおっ-ぴら オホツ― [0] 【大っぴら】 (形動)
〔「おおびら」の促音添加〕
(1)人目や人聞きを気にしないさま。公然とするさま。「―に悪事を働く」
(2)表立つさま。人目にふれるようになるさま。「内情を―にするぞ」
おお-どた【大どた】🔗⭐🔉振
おお-どた オホ― [0] 【大どた】
〔取引用語で〕
相場が,端数(ハスウ)のないちょうどの額であること。
おお-どろ【大どろ】🔗⭐🔉振
おお-のら【大のら】🔗⭐🔉振
おお-のら オホ― 【大のら】
ひどいなまけもの。また,酒びたりの人。「やあ,此半七の―めは/浄瑠璃・長町女腹切(上)」
おっき・い【大っきい】🔗⭐🔉振
おっき・い [3] 【大っきい】 (形)
「大きい」の転。
⇔ちっちゃい
「―・い手」
だい【大】🔗⭐🔉振
だい 【大】
■一■ [1] (名・形動)[文]ナリ
(1)数量や形・規模などが大きい・こと(さま)。
⇔小
「台風は上陸の公算が―だ」「声を―にする」
(2)物事の程度が大きいこと。はなはだしいこと。また,そのさま。
⇔小
「損害はきわめて―である」「責任は重く且つ―なり/花間鶯(鉄腸)」
(3)大小があるもののうち,大きいほうのもの。「生ビールの―」
(4)「大刀」の略。
(5)「大の月」の略。
⇔小
(6)「大便」の略。
(7)「大学」の略。「―卒」「女子―」
(8)地積の単位。一段三六〇歩の三分の二の,二四〇歩をいう。太閤検地以後は二〇〇歩。
(9)名詞の下に付いて,そのものぐらいの大きさである意を表す。「こぶし―の石」「等身―の人形」
→だいの(連語)
■二■ (接頭)
名詞に付く。
(1)数量や形・規模が大きいことを表す。「―群集」「―豊作」
(2)偉大な,すぐれた,などの意を表す。「―日本」「―学者」
(3)状態や程度のはなはだしいさまを表す。「―サービス」「―混乱」
(4)地位,序列が上位であることを表す。「―僧正」「―宮司」
だい=なり小なり🔗⭐🔉振
――なり小なり
大きかろうが小さかろうが。程度の差はあっても。多かれ少なかれ。
だい=の虫を生かして小の虫を殺せ🔗⭐🔉振
――の虫を生かして小の虫を殺せ
重要なものを助けるためには,重要でないものを犠牲にすることになってもやむを得ない。小の虫を殺して大の虫を助ける。
だい=は小を兼ねる🔗⭐🔉振
――は小を兼ねる
大きいものは小さいものの効用をもあわせ持っている。
たい-した【大した】🔗⭐🔉振
たい-した [1] 【大した】 (連体)
(1)程度がはなはだしいさまをいう。非常な。たいへんな。ふつうはよい意味に用いられるが,時に悪い意味にも用いられることがある。「―男だ」「―人数だ」「―悪党だ」
(2)(下に打ち消しの語を伴って)とりたてていうほどの。それほどの。「―問題ではない」
たい-して【大して】🔗⭐🔉振
たい-して [1] 【大して】 (副)
(1)(下に打ち消しの語を伴って)特別。それほど。さほど。「―よくない」「―困らない」
(2)程度がはなはだしいさま。「様子は好し,其上世辞がありまするので,―客がござります/真景累ヶ淵(円朝)」
だい-それた【大それた】🔗⭐🔉振
だい-それた [3] 【大それた】 (連体)
常識や道理からは考えられないほど大きくはずれているさまをいう語。とんでもない。全く非常識な。おおそれた。「―望みを抱く」
だい-の【大の】🔗⭐🔉振
だい-の 【大の】 (連語)
(1)大きな。「―男」
(2)成人した一人前の。「それが―大人のやることか」
(3)たいへんな。非常な。「―仲良し」「―苦手」
〔一語として,連体詞とする説もある〕
→だい(大)
だい-の-おとこ【大の男】🔗⭐🔉振
だい-の-おとこ ―ヲトコ [1] 【大の男】
成人した一人前の男。
だい-の-じ【大の字】🔗⭐🔉振
だい-の-じ [3] 【大の字】
「大」の字の形。特に,人間が両手両足を大きく広げた姿をいう。「―になって寝る」
だい-の-つき【大の月】🔗⭐🔉振
だい-の-つき [1] 【大の月】
太陽暦で三一日,陰暦では三〇日の日数がある月。すなわち,太陽暦で一・三・五・七・八・一〇・一二の各月。
⇔小の月
おおいに【大いに】(和英)🔗⭐🔉振
おおいに【大いに】
very much;greatly.
おおきい【大きい】(和英)🔗⭐🔉振
おおきさ【大きさ】(和英)🔗⭐🔉振
おおきな【大きな】(和英)🔗⭐🔉振
おおきな【大きな】
⇒大きい.〜顔をする give oneself airs.
おおざっぱ【大ざっぱな】(和英)🔗⭐🔉振
だい【大の】(和英)🔗⭐🔉振
たいした【大した】(和英)🔗⭐🔉振
たいして【大して】(和英)🔗⭐🔉振
たいして【大して】
very[much].→英和
だいだいてき【大々的に】(和英)🔗⭐🔉振
だいだいてき【大々的に】
on a large scale.
だいのじ【大の字になる】(和英)🔗⭐🔉振
だいのじ【大の字になる】
lie at full length;sprawl (だらしなく).→英和
もんがまえ【大きな門構えの】(和英)🔗⭐🔉振
もんがまえ【大きな門構えの】
with a large gate.
日本大百科の検索結果 (33)
オオアブノメ🔗⭐🔉振
オオアブノメ
(おおあぶのめ)
【漢】大虻眼
【学】Gratiola japonica Miq.
ゴマノハグサ科の一年草。茎は太くて柔らかく、高さ10〜25センチ。葉は披針{ひしん}形で全縁。初夏、葉の腋{わき}に無柄の花をつける。花は白色筒状で長さ4、5ミリ。多くは閉鎖花である。?果{さくか}は球形。水田や湿地に生え、本州、九州、朝鮮、中国、ウスリーに分布するが、農薬の影響で日本ではほとんどみられない。この属は北半球の温帯に20種ほど知られ、日本にはカミガモソウが分布する。 <山崎 敬>
大いなる遺産🔗⭐🔉振
大いなる遺産
(おおいなるいさん)
Great Expectations
イギリスの作家ディケンズの長編小説。1861年刊。孤児ピップが物語るその生涯の物語。寂しい田舎{いなか}で義兄夫婦と暮らしているピップに、ある日突然、名を秘した恩人から多額の財産が贈られ、ロンドンに出て紳士になる機会が与えられる。一躍金持ちになったが、世話になった素朴な義兄を恥ずかしく思うような卑しい根性に堕落する。しかし最後に謎{なぞ}の恩人が姿を現し、思いがけぬ劇的な結末を迎える。推理小説のような緊密なプロットと社会批判がみごとに結び付いた名作である。 <小池 滋>
【本】日高八郎訳『世界の文学13 大いなる遺産』(1967・中央公論社)
大いなる幻影🔗⭐🔉振
大いなる幻影
(おおいなるげんえい)
La Grande Illusion
フランス映画。1937年作品。監督ジャン・ルノアール。第一次世界大戦中の実話をもとに脚本家シャルル・スパークの協力を得て、人間の友愛と平等を訴えた作品。フランス軍の大尉(ピエール・フレネー)と中尉(ジャン・ギャバン)が偵察飛行中に撃墜され、ドイツ軍の捕虜となる。捕虜収容所の所長(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)は自分と同じ貴族階級出身の大尉に親近感を抱くが、機械工上がりの中尉は捕虜仲間のユダヤ人銀行家の息子と脱走を企て、大尉の犠牲によりついにそれに成功する。ルノアールは正確でリアルな描写を通じて(フランス語、ドイツ語、英語の併用もその一つ)、国籍、言語、階級、人種などの違いを超えた大きなヒューマニズムを説いた。フランス、アメリカでは公開当時から大成功を収めたが、ファシズム下のドイツ、イタリアでは上映が禁止され、日本でも第二次世界大戦前は公開されなかった。1949年(昭和24)日本公開。 <武田 潔>
大いなる眠り🔗⭐🔉振
大いなる眠り
(おおいなるねむり)
The Big Sleep
アメリカのハードボイルド推理のチャンピオンといわれるR・チャンドラーの小説。1939年作。作者の出世処女作品。娘が脅迫にあっている、始末をつけてほしいと、私立探偵マーローは、名士スタンウッド将軍から依頼を受ける。彼は脅迫者の家を突き止めてそこに行くと、待ち構えていたものは殺人だった。捜査を進めていくうちに、マーローはその裏に上流階級の複雑で、悲劇的な人間関係があるのを知った。推理小説的構成よりも洗練された都会感覚の文体と、しゃれた会話のなかで、人間模様を浮き上がらせている。 <梶 龍雄>
【本】双葉十三郎訳『大いなる眠り』(創元推理文庫)
オオカマス🔗⭐🔉振
オオカマス
(おおかます)
【漢】大?・大?
【学】Sphyraena jello
barracuda
硬骨魚綱スズキ目カマス科に属する海水魚。体長は2メートルに達して細長く、頭はとがる。背びれは二基で小さい。前鰓蓋{さいがい}骨の後下縁は丸くて下方に曲がるのが特徴である。琉球{りゅうきゅう}諸島以南、西太平洋、インド洋に分布している。塩焼きなど食用にされる。→カマス <落合 明>
オオジャコガイ🔗⭐🔉振
オオジャコガイ
(おおじゃこがい)
【漢】大??貝
【学】Tridacna gigas
giant clam
軟体動物門二枚貝綱シャコガイ科の二枚貝。二枚貝類のなかで最大となり、殻長1.4メートル、重量230キロに達する。沖縄以南の西太平洋サンゴ礁の潮間帯から水深30メートルぐらいの所に腹縁を上に向けてすんでいる。殻は横長の扇形で、殻表には数本の太い放射肋{ろく}があり、腹縁はそれに従って大きく波打っている。殻表は灰白色で斑紋{はんもん}はなく、成長脈も粗い。幼若期には足糸があるが、老成したものにはない。外套膜{がいとうまく}縁に共生性の単細胞藻類ズーサンテラZooxantellaを寄生させているため、外套膜がカラフルな点は他のシャコガイ類と同様である。肉量は多く、閉殻筋などは食べられる。また殻は深く巨大なため、産地では水盤などの調度に利用されている。 <奥谷喬司>
オオニベ🔗⭐🔉振
オオニベ
(おおにべ)
【漢】大?
【学】Nibea japonica
giant croaker / Japanese croaker
硬骨魚綱スズキ目ニベ科の海水魚の一種。名のとおりニベ類中最大種で、全長130センチ、体重25キロを超す大形魚も珍しくない。→ニベ <谷口順彦>
オオハサミムシ🔗⭐🔉振
オオハサミムシ
(おおはさみむし)
【漢】大??・大鋏虫
【学】Labidura riparia
昆虫綱ハサミムシ目オオハサミムシ科の昆虫。世界各地に分布し、日本では河原や海岸の石やごみの下などにみられる。体長25〜30ミリで、体は赤褐色ないし暗褐色、とくに後頭部や左右の前ばねの合わせ目付近は赤みが強い。後ろばねは乳白色、短翅{たんし}と長翅の二型がある。尾端のはさみは左右相称で、雄のはさみの内縁中央付近に歯が1個ある。 <山崎柄根>
大みそか🔗⭐🔉振
大みそか
(おおみそか)
大晦日と書く。年越{としこし}、大つごもり、大年{おおとし}などともいい、1年の最後の日。今日では、商家でも一般家庭でも、新年を迎える準備に忙しいが、本来、1日が夕方から始まるという思想から考えると、この日の夕方からは、新年を意味するものであった。大みそかの夜は正式な食事をするものだといい、これをオセチとよんでいる地方もある。セチは正式な食事のことであるから、この夜の食事が1年中でもっとも重要な食事とみなされていたのである。「年越そばは他所{よそ}で食べるな」とか「年越をともにしない者はあてにならない」といわれるのも、新年を迎える、すなわち新しい生命力を身につけるとき、一族一家がともにいなければならぬと信じていたからである。東北地方では、この夜ミタマノメシといって握り飯12個(閏{うるう}年は13個)に箸{はし}を立てて箕{み}に入れ、仏壇や神棚の下に供えた。これは先祖祭りを意味するもので、大みそかが新しい年を迎える日であるとともに、祖霊祭であったことを示している。「大年の客」といって、昔話のなかに、この夜訪れてくる人々のいる話があるが、これも新しい年をもたらしてくれる来訪神の存在を伝えるもので、この夜が他のみそかと異なり、1年の境という意識だったことを表している。全国の寺院ではこの夜、除夜の鐘といって108回鐘をつき、百八つの煩悩{ぼんのう}を覚醒{かくせい}するためといわれているが、一般家庭ではこの鐘を新年を迎える合図にしている。長崎県五島では鶏の鳴き声を年の境としたというが、寺院の鐘より古風な習俗であろう。 <鎌田久子>
【西洋】
敬虔{けいけん}なクリスマスに対し、欧米各国では大みそかの夜は、にぎやかなダンス・パーティーが行われる。パリやベルリンでは、12時の鐘とともにだれとキスしてもよい。また、静かにこの日を過ごす所も多い。オーストリアやスイスの一部では、頭にヤドリギの冠をのせた醜い者が、若者や娘に乱暴なキスをする。この仮装人物は12時になると、モミの枝で家の外に追い出される。一般には古い年の悪霊は、鉄砲、ホルンとか、花火、爆竹といった大きい音で追い出される。この日は年迎えも行われ、いまでも南ドイツなどでは、若者や子供が家々を回って歌い、新年を迎える。ポーランドでは夕食に鯉{こい}を食べ、うろこを財布に入れて新年の幸運を願う。このように、この日の食べ物や飲み物が決まっている地方もある。また、タマネギを12個に切り、その湿りぐあいによって新年の天候を占ったり、粥{かゆ}を皿に移すときの形によって結婚の運勢を占う所もある。 <飯豊道男>
【本】植田重雄著『ヨーロッパ歳時記』(岩波新書) ▽谷口幸男・遠藤紀勝著『仮面と祝祭』(1982・三省堂)
オオヨシキリ🔗⭐🔉振
オオヨシキリ
(おおよしきり)
【漢】大葦切
【学】Acrocephalus arundinaceus
great reed warbler
鳥綱スズメ目ヒタキ科ウグイス亜科の鳥。コヨシキリとともに単にヨシキリとよばれることがある。全長約18センチ。上面は淡い褐色、下面は黄白色。淡い眉斑{びはん}がある。ユーラシアの温帯、アフリカ北部、日本で繁殖、冬は南へ渡る。アシの茎に巣をかけ、4個から6個ぐらいの淡い青緑色地に褐色の斑のある卵を産む。昆虫を捕食し、ギョギョシ、ギョギョシ、カイカイシと大きな声でさえずる。 <竹下信雄>
大悪党🔗⭐🔉振
大悪党
(だいあくとう)
Historia del gran taca?o
スペインの作家ケベードの長編小説。正式の題名を『放浪児の手本、大悪党の鏡、ドン・パブロスとよばれる騙{かた}りの生涯』というピカレスク(悪漢)小説。出版は1626年だが、1603年ころの起筆と思われる。床屋で泥棒の子に生まれたパブロスが、貴族の子弟の従者、ならず者、役者、乞食{こじき}などの生活を経験したすえ、新しい生活を求めてアメリカ渡航を考えるまでの話が、ことば遊びと奇想に満ちた文体で描かれている。ピカレスク小説としてはもっとも完成度の高い作品の一つ。主人公の語る遍歴談は同種の作品に比べて、きわめて冷笑的でペシミスチックである。 <桑名一博>
【本】桑名一博訳『大悪党』(『世界文学全集6 悪漢小説集』所収・1979・集英社)
大アジア主義🔗⭐🔉振
大アジア主義
(だいあじあしゅぎ)
アジア諸民族の連帯・団結によって、西洋列強のアジア侵略に対抗し、新しいアジアを築こうという思想と運動。アジア主義、汎{はん}アジア主義とほぼ同義に用いられ、〔1〕日本の大アジア主義の系譜、〔2〕孫文の大亜州主義、〔3〕ネルーの第三勢力論の三類型がある。
日本の大アジア主義は、ともに西洋列強の圧迫下にあるアジア諸民族との連帯論とアジア大陸への膨張侵略論が交錯しながら展開した。アジア連帯論は民権左派から発し、西洋列強への共同防衛のため日韓両国の対等合邦を説いた樽井藤吉{たるいとうきち}の大東合邦論、国内立憲政治樹立と朝鮮改革の結合を企図した大井憲太郎らの大阪事件が代表例であるが、自由民権運動衰退のもとで民権論から国権論への傾斜を強めたことは否めず、この傾斜を鋭角的に示したのが玄洋社であり、国権拡張主義的アジア主義を鮮明にしたのが黒竜会である。黒竜会の綱領には天皇主義、海外への発展が掲げられ、日本を盟主としたアジア大陸保全論を導出した。しかし、内田良平が日韓合邦論者であり、フィリピン独立運動や中国革命運動に関与するなど一方的な侵略主義とはいえない面もあった。
天皇制国家の確立と帝国主義的侵略の本格化のもとで、宮崎滔天{とうてん}は孫文の中国革命を終始一貫した同情と犠牲的精神をもって支援し、「アジアは一つ」と唱えた岡倉天心は人間の本性たる美の破壊者として西洋帝国主義を批判し、日本、中国、インドとその多様性を認めつつ西洋とは異質のアジア文明を称揚しロマン主義的アジア連帯論を唱えた。しかし、大アジア主義の大勢は日本主義や皇道主義と結び付き、右翼団体に担われた独善的な連帯論となり、日本のアジア支配を根幹とした東亜新秩序、大東亜共栄圏の思想となっていった。
このように政府・軍部の大陸侵略策を正当化するイデオロギーになった大アジア主義を、中国革命勢力は、吸収主義であると痛烈に批判、李大?{りたいしょう}はアジア諸民族の解放と平等な連合によるアジア大連邦の結成を説き、孫文は西洋の覇道主義に対して東洋文化は仁義道徳に基づく王道主義であるとし、アジア諸民族はこの主義のもとに一致団結して植民地化に抵抗し独立を全うするよう大亜州主義を唱えた。
第二次世界大戦後には、インドのネルー首相が中立主義・第三勢力論を提唱、米ソ両陣営の対立激化のもとで、アジア諸民族はいずれの陣営にも偏らず、国連安全保障理事会の権威を高めながら独立を守り、世界政治の安定勢力としての役割を果たすよう訴えたが、南北問題に象徴されるような経済的自立と発展の方策など大きな試練に直面することになった。 <和田 守>
【本】「日本のアジア主義」(『竹内好全集 第八巻』所収・1980・筑摩書房)
大アンティル諸島🔗⭐🔉振
大アンティル諸島
(だいあんてぃるしょとう)
Greater Antilles
西インド諸島の西部および中部を占める諸島。メキシコ湾湾口から東方へ約2000キロにわたって連なり、小アンティル諸島に続く。キューバ島、イスパニョーラ島、ジャマイカ島、プエルト・リコ島とその付属島からなる。地質的にはキューバ島の大部分が石灰岩台地からなり、他の島にはグアテマラから続く高峻{こうしゆん}な山脈が東西に連なり、火山島の小島の多い小アンティル諸島とは対照的である。1492年のコロンブスの新大陸発見以後、スペインのラテンアメリカ征服の根拠地となり、17世紀からはイギリス、フランス、19世紀にはアメリカが進出して、黒人奴隷を使ったプランテーションを開拓した。そのため住民は黒人が多く、言語、文化、宗教もきわめて多様な社会を形成し、先住民のインディオはほとんどみられない。主要産物はモノカルチュアを基礎とする輸出用農産物で、サトウキビ、コーヒー、タバコ、バナナが中心となっている。 <栗原尚子>
大カフカス山脈🔗⭐🔉振
大カフカス山脈
(だいかふかすさんみゃく)
ロシア連邦南西部とグルジア、アゼルバイジャン両共和国にまたがり、黒海とカスピ海の間を走る大山脈。日本では一般にカフカス山脈といえば大カフカス山脈をさす。→カフカス山脈
大?🔗⭐🔉振
大?
(たいきん)
テーグム
朝鮮の伝統的楽器で、竹製の横笛。『三国史記』に中?、小?とともに記載された新羅三竹{しらぎさんちく}の一つで、三国時代(4〜7世紀中期)からすでに存在していた。長さ約80センチ、径約3センチ、吹口{ふきぐち}と6個の指孔のほか、管端に七星孔という音律調律用の穴が数個ある。また、指孔と吹口の間に清孔とよばれる穴があり、ここに竹紙(タケやアシの内皮膜)を貼{は}る。二オクターブ半の音域をもち、低音域の音色は柔らかく荘重、高音域は竹紙の微妙な振動により、澄んだ多様な音色を出す。正楽{せいがく}(広義の雅楽)大?と、制度は同じで筒音{つつね}が長二度高い民俗楽用の散調{さんじょう}大?の2種があり、器楽合奏、歌曲や舞踊の伴奏、また独奏楽器としても広く用いられている。 <志村哲男>
大サンディー砂漠🔗⭐🔉振
大サンディー砂漠
(だいさんでぃーさばく)
→グレート・サンディー砂漠
大サン・ベルナール峠🔗⭐🔉振
大サン・ベルナール峠
(だいさんべるなーるとうげ)
→グラン・サン・ベルナール峠
大スンダ列島🔗⭐🔉振
大スンダ列島
(だいすんだれっとう)
Greater Sunda Islands
インドネシア、スンダ列島西半部の列島。スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島、スラウェシ島およびその付属島からなる。面積133万4000平方キロ。アルプス造山帯に属するスマトラ、ジャワ両島と、環太平洋造山帯に属するスラウェシ島には多数の火山がそびえる。これらに対してスンダ海棚{かいほう}上のボルネオ島は、地盤の安定した島で、新期の火山は存在しない。農産物、林産物、地下資源などに富む。 <上野福男>
大セルビア主義🔗⭐🔉振
大セルビア主義
(だいせるびあしゅぎ)
第一次世界大戦前のバルカンにおける民族主義の一つ。セルビア公国の政治家ガラシャニンIlija Gara?anin(1812―74)は、1844年にセルビア外交政策の指針として「ナチェルターニエ」Na?ertanijeを発表した。このなかで、「セルビアの使命は、ハプスブルク帝国とオスマン帝国に対する南スラブ人の民族解放闘争の準備をし、率先してそれを進めることだ」と説いた。この考えが大セルビア主義の基礎となる。1904年にセルビア王国の首班となったパシチは、外交方針としてセルビア人の居住する地域すべての統一を掲げ、大セルビア主義的政策を推進した。このため、ハプスブルク帝国内のセルビア人にも多大な影響を与え、セルビアとオーストリアとの対立関係を強めた。そして、両国の対立は、第一次世界大戦の直接的な原因となった。 <柴 宜弘>
大ドイツ主義🔗⭐🔉振
大ドイツ主義
(だいどいつしゅぎ)
Gro?deutschtum ドイツ語
19世紀なかば、オーストリアを中心としてドイツの政治的統一を実現しようとした立場。当時なお30余の領邦諸国家に分裂していたドイツでは、一刻も早く統一を実現し、近代的国民国家に脱皮することが焦眉{しょうび}の課題であった。その際、統一の方法をめぐって、大ドイツ主義と小ドイツ主義とが対立した。前者は、旧神聖ローマ帝国の栄光をとどめるオーストリアを盟主として中欧に大ドイツ連邦を建設しようとし、後者は、オーストリアを除外し、プロイセンの指導を主張するものであった。しかし、多民族国家として多くの民族の独立運動を内包し、すでに崩壊の危機に瀕{ひん}していたオーストリアにとって、ドイツの国民的統一運動を指導する大ドイツ主義の実現は、事実上不可能に近く、「一八四八年の革命」(三月革命)に際してドイツ統一問題を審議したフランクフルト国民議会では、小ドイツ派の現実路線が多数を制した。60年代に入ってからも、大ドイツ主義は、プロイセンの専横に反感をもつ南西ドイツ諸邦の間で根強い支持を得ていたが、66年のプロイセン・オーストリア戦争でプロイセンが圧勝したことにより、終止符を打たれた。→小ドイツ主義 <良知 力>
大ブリテン王国🔗⭐🔉振
大ブリテン王国
(だいぶりてんおうこく)
→グレート・ブリテン王国
大ブリテン島🔗⭐🔉振
大ブリテン島
(だいぶりてんとう)
→グレート・ブリテン島
大?口文化🔗⭐🔉振
大?口文化
(だいぶんこうぶんか)
紀元前四千年紀から前二千年紀の間、黄河下流域で栄えた中国新石器時代晩期の文化。山東省泰安{たいあん}市大?口鎮と寧陽{ねいよう}県堡頭{ほとう}村にまたがる大?口遺跡の墓葬を標式とする文化で、竜山{りゅうざん}文化に先だち仰韶{ぎょうしょう}文化より新しい。1950年代初期にすでにこの文化の遺跡は発見されていたが、竜山文化との類似性から、その位置づけが定まらず、60年代になって山東竜山文化とは別系統の文化とされ、続いて70年代後半に入って、山東竜山文化は大?口文化を継承したものであることが確認された。この文化は山東省中部を中心に山東半島および江蘇{こうそ}省北部と河南省の一部にも分布し、山東竜山文化の分布と完全に重なっている。大?口遺跡では、仰臥{ぎょうが}伸展葬を中心に成人男女合葬がみられ、また抜歯、頭骨の人工変形や墓にブタの頭骨の供献、手に獣牙{じゅうが}を持ち腰部に亀甲{きっこう}を置く埋葬が注目されている。
この文化は早・中・晩期の三段階に区分されており、早期と晩期では社会的発展に顕著な差違がみられる。早期の墓葬は、小さな竪穴土壙{たてあなどこう}墓が中心で副葬品も少ない。土器は手作りを主とする紅陶{こうとう}が大多数を占める。中期の墓は、中型・大型の土壙墓と木槨{もっかく}墓が登場し、規模と構造上の差と副葬品の量的差違が顕著となる。晩期になると大型墓はたいてい木槨を使用し、大量の土器のほかに玉{ぎょく}・トルコ石製品、精巧な彫刻のある象牙{ぞうげ}製品の副葬やブタの頭骨の供献などが特定の墓葬に限られ、社会階層に不平等が発生して、貧富の差が生じたことを示している。また、土器も紅陶が少なくなり黒陶や灰陶が増加し、ろくろの使用が始まって、土器製作における専業化がかなり進行していることをうかがわせる。彩陶は早期から存在するが、全体からみると各段階の出土は少なく、晩期には特定の墓葬にのみ限られ、最後には消失してしまう。江蘇省北部に分布する青蓮岡{せいれんこう}文化の江北類型の文化内容は、大?口文化のそれと基本的に一致するものが多く、大?口文化に帰属させる見解が有力である。 <横田禎昭>
大ベルト海峡🔗⭐🔉振
大ベルト海峡
(だいべるとかいきょう)
Store B?lt
デンマークの海峡。シェラン島とローラン島に対し、フュン島とランゲラン島の前に横たわる海峡をさし、カテガット海峡とバルト海を結ぶ海域をいう。フュン島西岸の小ベルト海峡に対応する。長さ約115キロメートル、幅11〜35キロメートル。バルト海への航路として戦略的に重要な位置を占める。デンマーク国内ではコアセア―ニューボー間などのもっとも重要なフェリー連絡航路がある。1998年には、グレートベルト橋(フュン島−シェラン島6.8キロメートル、吊橋{つりばし}1624メートル、明石{あかし}海峡大橋に次いで世界で二番目)が開通、2000年夏には人工島を経由してトンネルと吊橋で、コペンハーゲンとスウェーデンのマルメを結ぶ橋(全長16キロメートル)も開通する。→小ベルト海峡 <村井誠人>
大モラビア国🔗⭐🔉振
大モラビア国
(だいもらびあこく)
Velkomoravsk? ???e チェコ語
9世紀前半、フランク王国に臣従していた西スラブ人が独立してつくった大国。その版図は現在のチェコ、スロバキアを中心に、ハンガリー、ポーランドの一部を含んだ。第2代の王ロスティスラフRostislav(在位846〜870)の治世がとくに有名で、ローマ教会支配に伴う西方からの侵略を防止するために、ビザンツ(ビザンティン帝国)との同盟を考え、ビザンツ教会の布教を懇請し、テッサロニキの高僧キリル(コンスタンティノス)、メトディオスの兄弟を招いた。その後さらに領土を拡大したが、強大化を恐れたフランク王国がハンガリーと結んで干渉したため、9世紀末から衰え始め、10世紀初頭にはハンガリー人の攻撃で滅亡した。→コンスタンティノス →スロバキア →チェコ →ビザンティン帝国 →フランク王国 →メトディオス <稲野 強>
大ルーマニア主義🔗⭐🔉振
大ルーマニア主義
(だいるーまにあしゅぎ)
Rom?nia Mare ルーマニア語
Greater Rumania 英語
ルーマニア人の居住する全地域を国家的に統合せよという主張。ルーマニア人国家モルダビア、ワラキアはトルコに従属したが、ワラキアのミハイ勇敢王(在位1593〜1601)はトルコ支配を離脱し、モルダビアなどを併合、後の大ルーマニア主義の原型をつくった。その後これらの地はすべてトルコとハンガリーに支配されたが、ルーマニアの政治家は大ルーマニアの再現を夢み続けた。第一次世界大戦前後にルーマニアはトランシルバニア、ベッサラビア、ブコビナ、南ドブルジア、東バナートを併合し、その夢を実現したが、少数民族が人口の4分の1に達し、近隣民族からの圧力に苦しんだ。 <木戸 蓊>
大ロンドン🔗⭐🔉振
大ロンドン
(だいろんどん)
Greater London
イギリスの首都ロンドン33区(The City and 32 boroughs=区)全体をさす名称。1888年に誕生したロンドン州London County(現在のInner London)に、新たに都市化が進んだ周辺大都市圏(現在のOuter London)を加え、1965年に創設されたロンドン大都市圏33区全体を統括する自治体の広域行政が及ぶ範囲に相当する。しかし広域自治体そのものは、86年サッチャー保守党政権の地方行政効率化政策により廃止された。ただし行政区としての名称は存続している。ところで、労働党政権復活翌年の98年5月に実施された住民投票で約4分の3の賛成を得たのを受けて、20世紀中に大ロンドンを統括する広域自治体が再登場することになった。なお新しい自治体の首長は公選される予定。従来は自治体議会の議長が首長を兼任していた。これを東京に例えれば、各区市役所と各町村役場の上に都庁を復活させるのに似る。面積1616平方キロメートル、人口696万(1994)、人口密度1平方キロメートル当り4307人(東京都は面積2187平方キロメートル、人口1177万、人口密度1平方キロメートル当り5382人、1996年)。→ロンドン <久保田武>
大イスラエル主義🔗⭐🔉振
大イスラエル主義
(だいいすらえるしゅぎ)
離散したユダヤ民族がユダヤ国家を建設して復興と存続を目ざすシオニズムのなかで、社会主義シオニズムに対し、「エレツ・イスラエル」(イスラエルの土地)を最重要視する非主流派、修正シオニズムの流れ。1920年代にウラジミール・ヤボチンスキーによって組織化され、当時はヨルダン川東岸(現在のヨルダン)を含むユダヤ国家の建国を目ざした。31年にヤボチンスキーらが設立した民族武装組織イルグンは、彼の死後、第二次世界大戦中からメナヘム・ベギン(後の首相)を指導者として反イギリス独立闘争を展開した。
イスラエル建国後のイルグンの後継政党や右派政党が1973年に結成したリクードのほか、ヨルダン川西岸への入植地建設を支持する諸勢力が大イスラエル主義の流れを汲{く}む。基本的には和平交渉で占領地返還や領土的妥協を拒むが、現状では占領地問題についてある程度の妥協もやむをえないとする現実派からいっさいの妥協を拒否する強硬派まで幅がある。95年11月のラビン首相暗殺は、宗教的大イスラエル主義の過激派の青年による犯行であった。96年5月、イスラエル初の首相直接選挙で労働党のペレスを破って誕生したネタニヤフ首相はリクード内でも右派といわれる。ネタニヤフ政権の強硬な姿勢がパレスチナやアラブ諸国の反発と不信を募らせ、アメリカ政府内ですら批判の声があがるなど、和平交渉が停滞する一因ともなっている。 <勝又郁子>
大リーグ🔗⭐🔉振
大リーグ
(だいりーぐ)
Major League
アメリカのプロ野球における最上位のリーグ。ナショナル・リーグ(1876年創設)とアメリカン・リーグ(1900年創設)で構成される。
【プロチーム誕生までの歴史】
1845年、ニューヨークの技師アレクサンダー・カートライトによって、初めて塁間距離27.44メートル、9イニング攻守交代など、現在のゲームの原型となる野球規則が制定された。そして、そのカートライトが最初の野球チーム、ニッカーボッカー野球クラブを結成、翌46年6月19日にニュージャージー州ホボーケンのエリジアン・フィールドで初めて野球規則に基づいて試合を行い、大いに人気を博した。
その後、初の野球記者ヘンリー・チャドウィックがボックススコアを考案し、新聞に野球コラムを掲載した。それによって、野球のプレーに興味をもつ人がしだいに増え、チーム数も急増していった。試合ごとに多くの観衆が入場するのをみてとり、球団関係者はゲームに必要な経費を観客に入場料として課し、球場施設を完備し、よい野球用具を用意し、選手たちに給料を支払えば、さらにすばらしい試合をみせることができるのではないかと考えた。当時、すでに一般大衆は野球のゲーム観戦に喜んで入場料を支払うほど、ゲームの魅力に取りつかれていた。
こうして、1869年に最初のプロ野球チームとして、シンシナティ・レッドストッキングスが誕生。かつてニッカーボッカー野球クラブに所属し、母国イギリスではクリケットの名選手だったハリー・ライトが監督兼中堅手になった。最初の年にレッドストッキングスは全米各地へ遠征に出かけ、地元のアマチュア野球チームと対戦、翌70年にかけて69連勝と無敵の強さを誇った。その後、レッドストッキングスは財政上の理由から解散したが、その無類の強さが引き金となって各都市にプロ野球チームが急増していった。
【大リーグ創設】
1871年には最初のプロ野球リーグ、ナショナル・アソシエーションが9球団で創設された。同リーグは、もめ事や不正事件などのためわずか5年で消滅したが、大衆の野球への愛着と時代の要請とは、優良なプロ野球チームのためにリーグ結成を求めてやまなかった。こうして、76年2月にニューヨークなど大都市を背景として、フランチャイズ制度による新しいプロ野球リーグ、ナショナル・リーグ(ナ・リーグ)が誕生した。ナ・リーグは8球団で構成され、それによって取り残された球団はインターナショナル・リーグ、アメリカン・アソシエーションなどを結成した。これらがマイナー・リーグの元祖であるが、ナ・リーグの実力と権威は他のリーグを引き離し、ついに大リーグとよばれるようになった。
【2リーグ制スタート】
さらにナ・リーグに対抗すべく、92年に元新聞記者のバン・ジョンソンが中心となり、当時レッドストッキングスの監督を務めていたチャールズ・コミスキーらの協力を得て、ウェスタン・リーグを結成。当時はマイナー・リーグの一つにすぎなかったが、ナ・リーグと同じようにアメリカ東部の都市に本拠地を設け、1900年に名称もアメリカン・リーグ(ア・リーグ)と改めた。それによって、前年まで12球団で組織されていたナ・リーグが8球団に戻り、新興のア・リーグも8球団でスタート。ここに2大リーグ時代を迎えた。
ア・リーグの創設にあたって、最初のうちナ・リーグはまったく協調せず、また主力選手たちも引き抜かれたため、大リーグ球界は混乱した。しかし、ア・リーグの発展をみるにつけ、結局両リーグは争いの愚を悟り、共存の道をとるようになった。その結果、1903年にナショナル・コミッションができ、両リーグから委員が選ばれ、球界一般の指針となるような諸規則や申合せを決定したので、野球界は安定的に発展するための基礎を得た。また、シーズン終了後に両リーグの優勝チームどうしが対戦し、真の優勝チームを決めるワールド・シリーズが実現した。後年、全米で人気を集める一大イベントに発展した発端であり、05年以来毎年シリーズが開催されるようになった
ナ・リーグ創設当時は、強豪チームのほとんど全部がその傘下に集まっていたが、後にア・リーグが組織されるに及んで、大都市に本拠をもち、名実ともに備わったチームのすべてが両リーグに集中し、取り残された他球団は実際に実力が低いものとなってしまった。両リーグ以外のマイナー・リーグはアメリカの中小都市に本拠を置き、実力順にAAA、AA、A、B、C、Dの6階級に分かれ、その後AAA、AA、A、ルーキー・リーグの4階級に縮小された。
【名プレーヤーの登場】
アメリカで野球が「ナショナル・パスタイム」(国民的娯楽)とよばれ、大リーグがアメリカ最大のプロスポーツとして発展するまでには、さまざまなできごとがあった。
まず、1919年にワールド・シリーズで八百長事件が起こった。その年、ワールド・シリーズはシカゴ・ホワイトソックスとシンシナティ・レッズの対戦となり、ア・リーグ優勝のホワイトソックスが圧倒的に有利といわれた。しかし、意外にもナ・リーグ優勝のレッズに3勝5敗で敗退した(1919〜21年は9回戦制で実施)。後にケネソー・マウンテン・ランディス初代コミッショナーが調査した結果、ホワイトソックスのシューレス・ジョー・ジャクソン外野手をはじめ、主力8選手が八百長事件に関与したとして、球界から永久追放処分を受けた。世にいう「ブラックソックス事件」である。
この大リーグ史上最大の汚点ともいうべき事件によって、アメリカの国民的娯楽であるはずの大リーグは社会的な信用を失い、観客動員数も激減していった。しかし、その名誉を回復させたのが、のちに国民的ヒーローとなるベーブ・ルースだった。20年にボストン・レッドソックスからニューヨーク・ヤンキースへ移籍し、ピッチャーから打者へ転向した。それ以来、ルースは豪快なホームランを量産し、それまで飛ばないボールの時代には見たこともない大きな打球にファンは熱狂し、大リーグは華やかになり、黄金時代を迎えることになった。
第二次世界大戦が終わって、47年に大リーグ史上初の黒人選手として、ジャッキー・ロビンソンが登場した。彼がブルックリン(現ロサンゼルス)・ドジャースの選手として人種の壁を破ったことによって、それまで社会の底辺で苦しい生活を続けていた人々に大きな勇気を与えた。これによって大リーグは黒人選手たちに門戸を開き、黒人だけのリーグから優秀な選手たちが次々に大リーグの世界に入った。こうして、大リーグは国境や人種、ことばの壁を越えて、だれもが実力さえあればプレーできる時代となり、中南米諸国をはじめ、いろいろな国々から一流プレーヤーたちが参加するようになった。
【フランチャイズの拡大】
そのころ、まだ大リーグ各球団の本拠地はアメリカ東部から中部に密集しており、最西部でミシシッピ川流域のセントルイスまでだった。50年代に入って飛行機など交通機関が発達してくると、チームの本拠地移転ラッシュが始まった。まず、53年にボストン・ブレーブスがミルウォーキーへ移転して大成功を収めると、54年にセントルイス・ブラウンズがボルティモアへ、55年にフィラデルフィア・アスレチックスがカンザスシティへと相次いで移転した。そして、58年にブルックリン・ドジャースとニューヨーク・ジャイアンツがロサンゼルスとサンフランシスコへそれぞれ大陸横断し、アメリカ全土へとフランチャイズが広がった。
本拠地移転によって人気回復の兆しがみられると、今度は第三のリーグ設立の解決策として、60年代から従来の8球団ずつから球団数を拡張、いわゆるエクスパンションの時代を迎えた。まず、61年にア・リーグ、62年にナ・リーグが2球団ずつ増えて10球団、69年に両リーグとも2球団ずつ増えて12球団となり、同時に東西2地区制を採用した。さらに77年にア・リーグ、93年にナ・リーグが2球団ずつ増えて14球団となり、94年から東中西の3地区に再編成された。そして、98年にア、ナ両リーグとも1球団ずつ増やし、同時にミルウォーキー・ブリュワーズがア・リーグからナ・リーグへ移動した。それによって、ア・リーグが14球団、ナ・リーグが16球団となり、両リーグあわせて30球団となった。
大リーグでは球団数拡張の過程において、69年に史上初めてアメリカ合衆国以外のカナダに本拠地を置くチームとして、モントリオール・エクスポズが誕生。続いて、77年にはトロント・ブルージェイズも誕生し、国際的なスケールへと発展していった。
大リーグは例年3月下旬から4月上旬にシーズンが開幕し、9月下旬から10月上旬まで26週間にわたってペナントレースが繰り広げられる。その一定の期間に各球団は162試合の公式戦を行い、ホーム、ロードで81試合ずつを消化する。また、7月上旬には各球団の持ち回りによって、1933年以来オールスター・ゲームが1試合だけ行われる。ところで、両リーグとも同一地区だけでなく、各地区のチームとも公式戦を行う。さらに97年から人気回復のためにインターリーグも始まり、両リーグ間の交流試合が初めて公式戦として行われるようになった。また、96年に大リーグ史上初めてアメリカ合衆国以外のメキシコで公式戦が行われた。
毎年10月になるとプレーオフ、そしてワールド・シリーズが行われる。まずは両リーグとも東、中、西各地区の優勝チームと、それ以外に2位のなかで最高勝率チーム、いわゆるワイルドカードの4球団でプレーオフが行われる。その対戦方式は、まずディビジョン・シリーズ(5回戦制)を行い、続いてリーグ優勝チームを決めるためのチャンピオンシップ・シリーズ(7回戦制)を行う。そして、最後にワールド・シリーズ(7回戦制)が行われ、先に4勝したチームが優勝、文字どおり世界一の座につく。→ナショナル・リーグ →アメリカン・リーグ <福島良一>
【URL】[Major League Baseball(英語)] http://www.majorleaguebaseball.com/
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