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かい‐けい【会計】クワイ‥🔗⭐🔉振
かい‐けい【会計】クワイ‥
(「会」は総勘定、「計」はかぞえる意)
①金銭・物品の出納の記録・計算・管理。また、その担当者。
②企業の財政状態と経営成績を取引記録に基づいて明らかにし、その結果を報告する一連の手続。また、その技術や制度。企業会計。
③官庁組織の単年度の収支を予算との対比で把握する予算決算。また、その技術・制度・単位。官庁会計。
④飲食店などで代金を勘定して支払うこと。「お―」
⇒かいけい‐がく【会計学】
⇒かいけい‐かんさ【会計監査】
⇒かいけい‐かんさ‐にん【会計監査人】
⇒かいけい‐きじゅん【会計基準】
⇒かいけい‐けんさ‐いん【会計検査院】
⇒かいけい‐けんさ‐かん【会計検査官】
⇒かいけい‐げんそく【会計原則】
⇒かいけい‐さんよ【会計参与】
⇒かいけい‐し【会計士】
⇒かいけいし‐ほ【会計士補】
⇒かいけい‐ねんど【会計年度】
⇒かいけい‐ほう【会計法】
かいけい‐がく【会計学】クワイ‥🔗⭐🔉振
かいけい‐がく【会計学】クワイ‥
企業などの財政状態と経営成績とに関する記録・計算・報告を研究の対象とする学問。
⇒かい‐けい【会計】
かいけい‐かんさ【会計監査】クワイ‥🔗⭐🔉振
かいけい‐かんさ【会計監査】クワイ‥
会計記録・会計報告書・会計組織・会計行為の適正性や公正性などを、独立の第三者が一定の基準に基づいて検証し、その結果を報告する一連の行為。また、その役職。内部監査と外部監査とがある。
⇒かい‐けい【会計】
かいけい‐かんさ‐にん【会計監査人】クワイ‥🔗⭐🔉振
かいけい‐かんさ‐にん【会計監査人】クワイ‥
株式会社において計算書類等の監査を職務とする機関。また、その人。公認会計士か監査法人であることが資格要件。株主総会での選任を原則とする。大会社では必置機関。
⇒かい‐けい【会計】
かいけい‐きじゅん【会計基準】クワイ‥🔗⭐🔉振
かいけい‐きじゅん【会計基準】クワイ‥
(accounting standard)会計処理および財務報告の拠り所となる基準。会計原則等に基づいて、個別の会計問題について設定される。
⇒かい‐けい【会計】
かいけい‐けんさ‐いん【会計検査院】クワイ‥ヰン🔗⭐🔉振
かいけい‐けんさ‐いん【会計検査院】クワイ‥ヰン
国の収入支出の決算を検査し、その他法律に定める会計の検査を行う機関。3名の会計検査官が構成する検査官会議と事務総局とで組織され、内閣に対し独立の地位を有する。
⇒かい‐けい【会計】
かいけい‐けんさ‐かん【会計検査官】クワイ‥クワン🔗⭐🔉振
かいけい‐けんさ‐かん【会計検査官】クワイ‥クワン
会計検査院の検査官会議を構成する職員。国会の同意を経て内閣が任命する認証官。3名。任期7年。
⇒かい‐けい【会計】
かいけい‐げんそく【会計原則】クワイ‥🔗⭐🔉振
かいけい‐げんそく【会計原則】クワイ‥
(accounting principle)会計の基礎概念や財務諸表の作成原理。会計基準設定の指針、財務諸表解釈の指針、監査人の意見表明の拠り所等となる。
⇒かい‐けい【会計】
かいけい‐さんよ【会計参与】クワイ‥🔗⭐🔉振
かいけい‐さんよ【会計参与】クワイ‥
株式会社において取締役と共同して計算書類を作成する機関。また、その人。公認会計士・監査法人か税理士・税理士法人であることを資格要件とし、株主総会で選任。その設置は任意に定款で定める。
⇒かい‐けい【会計】
かいけい‐し【会計士】クワイ‥🔗⭐🔉振
かいけい‐し【会計士】クワイ‥
(→)公認会計士のこと。
⇒かい‐けい【会計】
かいけいし‐ほ【会計士補】クワイ‥🔗⭐🔉振
かいけいし‐ほ【会計士補】クワイ‥
公認会計士の補助を行う者。一定期間の実務補習などを経て、所定の試験に合格すると、公認会計士になる資格を得る。2006年廃止。
⇒かい‐けい【会計】
かいけい‐ねんど【会計年度】クワイ‥🔗⭐🔉振
かいけい‐ねんど【会計年度】クワイ‥
収益・費用または収入・支出を区分整理し、その顛末を明らかにするために設けられた期間。また、その制度。日本の官公庁の制度では4月1日に始まり、翌年3月31日に終わる。企業では任意に設定される。事業年度。→営業年度。
⇒かい‐けい【会計】
かいけい‐ほう【会計法】クワイ‥ハフ🔗⭐🔉振
かいけい‐ほう【会計法】クワイ‥ハフ
国の収入・支出・契約等に関する手続を定めた法律。1947年制定。明治憲法下の会計法は国の予算および会計に関する基本法であったが、そのうち予算・決算の手続に関しては、現在財政法が規定している。
⇒かい‐けい【会計】
大辞林の検索結果 (11)
かい-けい【会計】🔗⭐🔉振
かい-けい クワイ― [0] 【会計】
(1)代金の支払い。勘定。「お―をお願いします」
(2)個人や企業などの経済活動状況を,一定の計算方法で記録し,情報化すること。また,その方法・事務や係の者。
(3)経済状態。ふところ具合。「―は近頃豊かかね/吾輩は猫である(漱石)」
かいけい-がく【会計学】🔗⭐🔉振
かいけい-がく クワイ― [3] 【会計学】
企業などの会計に関する学問。簿記技術,固定資産・流動資産の評価並びに経営分析,原価計算,予算統制などを研究の対象とする。
かいけい-かんさ【会計監査】🔗⭐🔉振
かいけい-かんさ クワイ― [5] 【会計監査】
会社の財産・営業状況を記録した書類(計算書類)の記載が,会社の実際の財政状態を正しく表しているか否かを,監査役もしくは第三者が監査すること。
かいけい-かんさにん【会計監査人】🔗⭐🔉振
かいけい-かんさにん クワイ― [0] 【会計監査人】
一定の条件下にある株式会社の会計監査を行う外部の有資格者。公認会計士と監査法人。
かいけい-けんさいん【会計検査院】🔗⭐🔉振
かいけい-けんさいん クワイ―ヰン [7] 【会計検査院】
国の収入支出の決算を検査することを任務とする機関。憲法に基づいて設置され,内閣に対し独立の地位を持つ。三名の検査官で構成される検査官会議と事務総局より成る。
かいけい-けんさかん【会計検査官】🔗⭐🔉振
かいけい-けんさかん クワイ―クワン [7] 【会計検査官】
会計検査院の検査官会議を構成する職員。両議院の同意を経て内閣が任命する認証官。定員三名。任期七年で,その間は特別の事情がない限り,罷免されない。
かいけい-し【会計士】🔗⭐🔉振
かいけい-し クワイ― [3] 【会計士】
⇒公認会計士(コウニンカイケイシ)
かいけい-し-ほ【会計士補】🔗⭐🔉振
かいけい-し-ほ クワイ― [5] 【会計士補】
⇒公認会計士補(コウニンカイケイシホ)
かいけい-ねんど【会計年度】🔗⭐🔉振
かいけい-ねんど クワイ― [5] 【会計年度】
(1)国および地方公共団体が財政運営の便宜上,単位とする期間。財政法で規定され,日本では毎年4月1日から翌年3月31日まで。財政年度。フィスカル-イヤー。
(2)事業者が経営状態を把握するために会計の単位とする期間。通常は一年を一会計年度とする。営業年度。事業年度。
かいけい-ほう【会計法】🔗⭐🔉振
かいけい-ほう クワイ―ハウ 【会計法】
国の収入・支出・契約に関する手続きなどを定めた法律。1947年(昭和22)制定。
かいけい【会計】(和英)🔗⭐🔉振
かいけい【会計】
[出納]account;→英和
finance;→英和
[勘定]the account;a bill (勘定書).→英和
〜をする keep accounts (出納記帳);pay the bill (支払).‖会計課 an accounting section.会計係[士]an accountant.会計学 accounting.会計検査(官) auditing (an auditor).会計検査院 the Board of Audit.会計年度 a fiscal year.会計簿 an account book.会計報告 a financial report.公認会計士<米>a certified public accountant;<英>a chartered accountant.
日本大百科の検索結果 (13)
会計🔗⭐🔉振
会計
(かいけい)
accounting
金銭収支、財産の売買を中心とした経済的取引事象を、貨幣数値によって一定の方式により記録・計算・報告する制度ないし行為をいう。
【会計の種類】
会計は、これを利用する経済主体の相違によって営利会計と非営利会計とに分けることができる。営利会計は、営利を目的とする組織体としての企業における会計すなわち企業会計であり、その企業の属する産業・業種により、商業会計、工業会計、銀行会計などに分類される。非営利会計は、営利を目的としない経済単位に適用される会計であり、家事会計(家計)、官庁会計(財政)、学校会計、病院会計などに区分される。
現在もっとも重要性があり、かつ広く用いられているのは、企業を対象とした企業会計であり、したがって企業会計の実務および理論が会計の発展の中核となっている。そのため、単に会計といった場合には、企業会計を意味することが多い。
【会計の機能】
会計のすべての機能は、会計事実のあるがままの記録を前提とする。すなわち、会計の本源的な機能は会計事実の記録である。この本源的な機能を基にして、会計主体の特性に応じ、さらに測定、伝達といった機能が生ずるのである。
企業には、経営者、株主(投資家)、債権者、監査人、諸官庁など、多くの利害関係者があり、これらの利害関係者の要求に応じられるような会計機能を果たすことが必要となる。このような会計機能としては、利益測定機能、経営管理機能および情報伝達機能があげられる。
利益測定機能は、企業の基本的な目的である利潤追求から生ずる。今日では、企業も単に利潤追求のみを目的とするわけではないが、営利企業にあっては、もっとも重要な目的であることは否定しえないところである。したがって企業会計は、正確な利益の算定、すなわち損益計算を中心に据えている。これは、継続的に営まれている企業活動を期間に分け、一定期間ごとの利益を測定するものである。このような期間利益測定のためには、企業が所有する財産も組織的に把握しなければならないし、また適正に保全しなければならない。したがって同一期間についての財産計算も必要となる。このような利益計算と財産計算を同時に遂行するようくふうされたものが複式簿記の手法である。
経営管理機能は、経営者の立場から企業を管理統制するために用いられる機能である。企業活動が大規模化し複雑多様化するにしたがい、計画をたて適切な統制活動を遂行することなくしては、所定の目標を達成することが困難になっており、これに対応するための手段として会計の経営管理機能の発達をもたらしている。利益管理、原価管理、資金管理、予算統制などの形をとって行われる経営活動の会計的管理の技術がそれである。経営管理機能は、利益測定機能におけるような事後的な記録・計算にとどまらず、事前計算的・未来的性格をももつものである。
情報伝達機能は、日々記録されたものを一定の規則にのっとって計算処理を行い、報告書を作成し、各利害関係者に報告する機能である。伝達する対象によって、企業内の経営管理者への伝達、外部の株主・債権者などへの伝達、諸官庁への伝達の三つに分けることができる。企業内の経営管理者に対する伝達は、彼らの管理活動を合理的かつ適切ならしめるような会計データを提供し、それによって企業内の限られた諸資源を有効に利用できるようにすることを目的とするものである。これはいわゆる管理会計といわれるもので、近年とくに著しい発展を示している。外部の株主・債権者など利害関係者に対する伝達は、企業の経営成績および財政状態についての情報を公開し、企業の実態を判断する資料として利用できるようにするものである。これは、いわゆる財務会計といわれるもので、別名、制度会計ともよばれるように、法律的に制度化されているものである。その伝達の形式としては、一般に財務諸表が用いられる。各官庁への伝達は、国や地方公共団体に対する各種の報告書を通じての情報の提供をいう。企業の納税義務を遂行するための納税申告書や、公的機関が行う統計作成のための資料としての会計情報の提供などがそれである。
【会計の歴史】
貨幣の存在するところかならず会計も存在すると考えるならば、古代エジプトやバビロニア時代にも、不十分なものではあるが会計が存在したことは確かである。しかしながら、近代的な意味での会計、すなわち複式簿記原理にのっとった会計計算が行われるようになったのは、中世イタリアの商業都市においてである。17世紀のフランスでは商事条例が公布され、そこでは会計報告が法制化されている。18世紀に入ると、産業革命の結果、イギリスでは大規模な製造工業会社が次々と設立され、初歩的ながら原価計算も行われるようになるなど、会計実務の内容が多様になってきた。さらに、このような会計の手法がアメリカ、ついでドイツに移入されて、制度的にも理論的にも高度化された。とくに20世紀になってからのアメリカにおける研究には目覚ましいものがあり、アメリカ公認会計士協会(1887年にアメリカ公共会計士協会として設立)、アメリカ会計学会(1916年にアメリカ大学会計学教師協会として設立)などを中心として企業会計その他について多くの研究発表が行われた。
〔日本における会計の発展〕 日本に近代的な会計技術が紹介されたのは明治になってからである。すなわち、福沢諭吉によってアメリカのH・B・ブライアントとH・D・ストラットンとの共著になる簿記教科書『Common School Bookkeeping』(1871)が翻訳されて『帳合之法{ちようあいのほう}』として初編(単式簿記)が1873年(明治6)6月に、第二編(複式簿記)が翌74年6月に刊行され、また73年12月には、大蔵省紙幣寮書記官として来日中のイギリス人アラン・シャンドの編になる複式簿記書『銀行簿記精法』が発行された。その後1930年(昭和5)には、当時の不況を打開するため商工省内に会計制度の整備改善を図るべく財務管理委員会が設けられ、34年には「標準財務諸表準則」が、38年には「製造原価計算準則」が発表されている。しかし、その後の戦時体制下への移行とともに、わが国の会計制度は、諸外国の研究成果を受け入れることもなく、著しい立ち後れを示すようになった。第二次世界大戦後、経済再建の一環として48年(昭和23)に経済安定本部内に企業会計制度対策調査会が設置され、内外の会計制度の調査研究が進められた。その結果、49年に「企業会計原則」と「財務諸表準則」が、翌50年に「監査基準」と「監査実施準則」が公表され、会計制度整備の土台が築かれたのである。
【現代会計の動向】
第二次大戦後の経済復興期を経て、わが国の企業は年々その規模を拡大してきたが、それとともに企業を取り巻く利害関係者間の利害対立はしだいに激化し、また、企業の経営形態や業務内容は多様化し複雑性を増してきた。その結果、会計は従来のような株主(投資家)保護、債権者保護を重視した制度にとどまることなく、消費者保護、社会的責任、公害防止などといった一般大衆の利益をも保護するものにしなければならないという主張が強くなり、近時、そのような新しい機能を達成するための会計報告のあり方が論議されるようになってきた。また、製品の多品種化、業務および組織の多角化、取引量の増大などが誘因となり、手作業を前提とした会計業務から、パンチカード・システム(PCS)やコンピュータ・システム(EDPS)を利用した会計業務へと、機械化が進展した。
こうした目的の多様化、業務量の多量化現象は、企業ごと業種ごとに特殊な会計問題を生ぜしめるとともに、反面、多量化したデータや情報の作成方法や内容を統一し、もって経理業務を簡素化しようという動きもみられるようになった。企業内容公開制度の充実、連結決算制度の導入、インフレに対処するための再評価問題・多元評価問題、商法改正に伴う会計士監査制度の導入などが、現代会計における複雑化の例であり、他方、年1回決算制度への移行、コンピュータ用コード番号の統一、企業会計原則と商法計算書類規則との一元化などは、現代会計における簡素化の動きと解することができる。→企業会計 →簿記 →時価会計 <佐藤宗弥>
【本】沼田嘉穂著『会計教科書』九訂版(1981・同文舘出版) ▽宇南山英夫・若杉明編『簿記原理』(1972・第三出版) ▽会田義雄著『現代株式会社会計』(1981・同文舘出版)
会計学🔗⭐🔉振
会計学
(かいけいがく)
accounting
広くは、営利企業、公共および公益事業、社会福祉や教育などの非営利企業、国家、各種団体や組合、さらに地域社会や家庭などを対象として、それらの領域に関連する諸事象を計数的に把握し、記録、計算、整理、さらに報告する理論と技術を研究内容とする学問領域をいう。しかしながら、とくに限定せずに会計学という多くの場合には、営利的企業の損益計算と財務計算に関連する研究分野であると理解して差し支えない。これは一般に企業会計とよばれている。
【会計学の成立】
会計が学問として成立したのは20世紀に入ってからのことといわれているが、その生成は、経済および社会環境を背景とした帳簿記録技術、すなわち簿記の発展と密接な関連をもっている。とくに今日一般的な簿記方式として採用されている複式簿記の誕生は、主として利潤計算原理を追究する学問としての会計学に重要な影響を与えてきた。その意味で、多くの研究者は、会計学研究の起点を1494年に出版されたルカ・パチオーリLuca Pacioliの著書『ズンマ』に置いている。初期の簿記会計の発展に影響を与えた経済環境は、13世紀から15世紀にかけて発展したイタリア諸都市の商業形態である。当時のベンチャー貿易やコンメンダ契約方式などが、複式簿記や会計責任概念を生み出したことが明らかにされているが、市場の形成が間欠的であったため、その利潤計算制度は、いまだ口別計算的であった。その後、ヨーロッパ経済の中心は、イタリアからオランダ、フランス、イギリスへと移っていくが、これとともに、企業は、定住的かつ継続的な市場を形成するようになり、これらの現象が、現代会計理論の前提となるゴーイング・コンサーン(継続企業)や会計期間の概念や棚卸計算を取り入れた期間損益計算方法などを生み出すことになった。
さらに、現代会計学の成立は、株式会社制度の確立や産業革命の展開と密接不可分の関係にある。すなわち、株式会社制度は、本格的な会計報告責任と適正な利益分配制度を要求し、また産業革命などによる技術的革新は、原価計算制度や減価償却法などを登場させている。このようにして、学問としての会計は、法規制の強化、各種会計研究機関の設立と報告書の公表などとともに、20世紀に入り急速な進展をし、今日に至っている。
【現代会計学の体系】
現代会計学は、主として営利企業の会計を中心として生成、発展した。その理由は、一つは、社会的な要請として利益を分配するための公正妥当な制度を確立する必要があったことであり、いま一つは、営利追求のための企業行動にとって、会計的採算計算のデータが、すべてではないが欠くことのできない情報であることをだれもが承認していることであろう。このような社会背景を踏まえ、現代企業会計は、財務会計論と管理会計論とに大別されている。
財務会計論は、企業の存亡に重要な利害関係をもつ株主や債権者、国家や地方公共団体、取引先や消費者などの企業外部者に対して、企業の経営成績や財務状態を報告する理論を研究するため、外部報告会計ともよばれる。これは、歴史的にも体系的にも会計学領域の過半を占めている。また、商法を中心とした法律や企業会計原則などの規範と重要なかかわりをもつため、制度会計として特徴づけられている。教育的には、簿記論、財務諸表論、監査論、税務会計論などの講座がこのなかに含まれていると理解されている。
これに対して、管理会計論は、企業内部の経営者や管理者のさまざまな意思決定や各種の業績測定などの行為に対して、目的適合的な会計情報の作成と提供の方法を研究するため、内部報告会計ともよばれている。この領域は、歴史的には、産業革命の影響によって急速に発展した原価計算論を基盤としている。すなわち、原価管理のための標準原価計算、利益計画に資する直接原価計算の研究と発展の軌を一にしている。最近では、経営数学やオペレーションズ・リサーチ(OR)、さらには工学的な知識との接近により、かなり自発的な発展を示しており、今後の進展が注目されている。
なお、現代会計学を広く理解する場合には、以上のような企業会計ばかりでなく、官庁会計、公益法人会計、家計、さらにはマクロ経済的な社会会計(国民経済計算)なども含まれる。
【会計理論の基礎】
現代の会計学、とくに財務会計では、次のような前提(公準)にたって理論構築を行っている。すなわち、〔1〕継続企業あるいは会計期間の前提、〔2〕企業実体あるいは会計単位の前提、〔3〕貨幣的評価の前提、の三つである。第三の貨幣的評価の前提には、単に金額換算によるデータの作成という意味ばかりでなく、貨幣価値の安定を前提とするという内容も含まれていると理解されてきたが、今日のようなインフレーション下の経済情勢にあっては、会計学にとって、物価変動の認識は座視しえない課題となっている。 <東海幹夫>
【本】黒沢清著『近代会計学』(1964・春秋社) ▽産業経理協会編『会計学の基礎知識』(1975・同友館) ▽中村忠著『現代会計学』(1975・白桃書房) ▽飯野利夫著『財務会計論』(1977・同文舘出版)
会計監査🔗⭐🔉振
会計監査
(かいけいかんさ)
accounting audit
会計記録、会計処理および会計報告書について、その作成および判断の行使に関与しない者が監査を行い、それらの正確性、適正性などについて判断し意見を表明すること。一般に、監査対象から次の三つに分類される。(1)精密監査(探偵式監査) おもに会計記録の記帳、計算を監査対象とし、金銭、物品の私消などの不正を摘発することを目的とする。内部監査における会計監査はこれに属する。(2)貸借対照表監査(信用監査) 融資を受けようとする企業が、弁済能力に関する資料として金融機関に提出する貸借対照表について、その信頼性を監査するもの。第三者たる職業監査人(公認会計士または監査法人)による外部監査として行われる。今日では、この監査が独自に行われることは少なく、次の財務諸表監査が一般的である。(3)財務諸表監査 企業などの会計報告書(財務諸表)について、それが「企業会計原則」などの一定の会計基準に準拠して、適正なものか否かを監査するもの。ここでは、粉飾経理の発見、防止が中心課題となり、不正の摘発は二次的となる。大企業の粉飾による利益操作は、社会的影響が大きいことから、独立の第三者たる職業監査人による財務諸表監査が強制されている。→監査 →業務監査 →強制監査 →監査報告書 <長谷川哲嘉>
会計検査🔗⭐🔉振
会計検査
(かいけいけんさ)
広義には、民間の企業やその他の団体に対して実施される「会計監査」も含み、帳簿やその他の会計書類などを正式に検査し、団体の財政活動の確認や報告をする活動をいうが、一般には国の会計検査機関による決算検査や日常的な会計の監督をさす。さらに狭義には、日常的監督のみをさし、決算検査とは区別することもある。
財政の民主的統制・監督は民主主義の実質化のために不可欠であるが、政府は、議会による予算の承認という形で事前の統制を受ける。さらに決算の審査という形で事後的な統制も受けることになるが、決算の審査は会計検査院による審査と国会による審査の二段階に分かれる。会計検査院による審査は、法的見地から決算の合理性と的確性を検査し確認しようとするものである。これは会計検査院のもっとも重要な権限であり、十分な資料と実地検査などを基礎に、個々の支出の当否を判断する。この決算検査により、国の収入・支出の決算を確認する効果が生ずる。
決算検査以外にも、会計検査院は常時検査を行い、その適正を期しかつ是正を図るという任務を与えられている。これがもっとも狭義の会計検査の意味であり、決算検査の準備にもなるが、それとは独立の会計経理の一般的監督という性格も有している。 <林 正寿>
会計検査院🔗⭐🔉振
会計検査院
(かいけいけんさいん)
日本国憲法第90条の規定による、国の財政の執行を監視し検査することを任務とする行政機関。通例の行政機関と異なり、内閣に対し独立の地位をもつ(会計検査院法1条)。会計検査院は、両議院の同意を得て内閣が任命する任期7年の3名の検査官より構成され、その長は、検査官のうちから互選された者が内閣によって任命される。検査官は、会計検査院法の定める退官事由に該当する場合を除いて、その身分が保障されている。会計検査院は、国の収入・支出の決算の検査を主要な任務とするほか、法律の定める会計の検査を行う。たとえば国のみならず公団などの政府関係機関の会計の適正を期すため、常時、会計検査を行い、違法不当な経理を発見した場合には、その是正を要求する権限をもつ。場合によっては、担当職員の懲戒処分を求めたり、出納職員および予算執行職員の弁償責任について審査判定を行う権限をもつ。また、国などの会計事務を処理する職員の会計経理の取扱いに関し、利害関係人の審査の要求に基づいて、これを審査し適切な処置をする権限ももつ。なお、会計検査院が決算を不適法と判定しても、予算執行行為が無効ないし取り消されることにはならないと解されている。 <福家俊朗>
【URL】[会計検査院] http://www.jbaudit.admix.go.jp/
会計コンベンション🔗⭐🔉振
会計コンベンション
(かいけいこんべんしょん)
会計上のコンベンションconventionは、一般に会計実務において形成された慣習ないし慣行を意味する。そして、抽出された基本的コンベンションは、会計理論展開のための基礎概念ないしは公準として認められている。代表的コンベンションは次の三つである。(1)企業実体のコンベンション これは、会計上の計算の場ないし単位を意味する。たとえば、個人企業にあっては、店の計算と家計を区別しなければ企業会計は成立しない。この場合、「店」という抽象的な会計の「場」が想定される。(2)会計期間のコンベンション 中世においては、購入した商品が全部売れたときに、当該商品の売買損益を計算した。しかし、近代の株式会社制度の発展に伴い、一定の期間ごとに利益を計算し、配当することが要請され、ここに会計期間の考え方が確立する。(3)貨幣評価のコンベンション 企業の資産のなかには、物量単位によって測定されるものもあるが、これを貨幣評価することにより、測定単位の同質性が得られる。
なお、(2)の会計期間のコンベンションについては、これを継続企業(ゴーイング・コンサーンgoing concern)のコンベンションとする説もある。また、このほかに第四のコンベンションとして勘定のコンベンションをあげる論者もいる。 <宮崎 徹>
会計主体🔗⭐🔉振
会計主体
(かいけいしゅたい)
企業会計において、だれの立場ないしどのような観点から会計理論を展開するかを会計主体論といい、ここで選択された特定の立場ないし観点が会計主体である。会計主体論としては、資本主説、代理人説、企業主体説、企業体説などがあるが、資本主説と企業主体説が代表的見解である。前者は、企業の資本主=出資者を会計の主体と考えるのに対し、後者は、企業を出資者から切り離された独立の存在と考え、企業それ自体を会計の主体と考える。両説に基づく具体的相違点の一、二をあげると次のとおりである。資本主説では、資産−負債=資本(または純資産)で示される資本(純資産)が資本主に帰属するものと考えられ、重視される。これに対し、企業主体説では、負債も企業への資本提供であると考え、資産=負債+資本と考え、負債と資本の同質性を重視する。次に、負債(借入金)の支払利息と株主への配当金について考えると、資本主説では、支払利息は純資産を減少させることから資本主にとって費用となるが、配当金は利益の分配となる。企業主体説では、支払利息も配当金も資金の運用によって生ずる費用と考える。商法などを中心とする今日の制度会計においては、資本主説が有力である。 <宮崎 徹>
会計総裁🔗⭐🔉振
会計総裁
(かいけいそうさい)
1867年(慶応3)5月に設置された江戸幕府の財務担当官職。外国御用取扱兼海陸軍御用取扱の老中松平康直{やすなお}が、御勝手入用掛総裁の老中に転じ、会計総裁とよばれたのが最初。もともと老中は、月番で会計財務、外国関係、寺社、知行割{ちぎようわり}、普請{ふしん}、陸海軍などの諸政務を担当していた。しかし、政局の切迫と国政の多忙化に応じて、66年12月に海軍総裁と陸軍総裁が、また会計総裁設置直前に国内事務総裁、直後に外国事務総裁が設けられ、老中の月番制にかわって、五総裁に分かれてもっぱら任務にあたった。68年(慶応4)4月、幕府が解体されるまでの間、立花種恭{たちばなたねゆき}、大久保忠寛{ただひろ}(一翁{いちおう})、山口直毅{なおたけ}が歴任した。 <河内八郎>
会計帳簿🔗⭐🔉振
会計帳簿
(かいけいちょうぼ)
商人が日々の取引その他財産に影響を及ぼす事項を、継続的かつ組織的に記録するもので、商法において作成が義務づけられている帳簿。会計帳簿は、主要簿と補助簿とに分けられる。主要簿は、決算報告の財務諸表を作成する基礎となるもので、仕訳帳と元帳とからなる。補助簿は、主要簿の内訳明細を記録する帳簿で、企業の規模や種類で異なるが、現金出納帳、仕入帳、売上帳、当座預金元帳、商品有高帳、仕入先元帳、得意先元帳などがある。 <佐藤宗弥>
会計年度🔗⭐🔉振
会計年度
(かいけいねんど)
fiscal year
国および地方公共団体の財政活動は本来継続的なものであるが、予算制度や決算制度を通じて有効な民主的統制機能を果たしたり、管理機能や計画機能などを果たすためには、ある一定期間をくぎって収支を明確にする必要がある。この期間を会計年度といい、予算の編成や執行および決算は会計年度を対象に行われる。会計年度の期間は各国とも1年となっている。しかしその始期はさまざまであるとともに、年度の呼称がわが国のように始期の属する暦年になる場合と、アメリカのように終期の属する暦年になる場合とがあるから注意を要する。
予算の基本的役割は収支の均衡を図ることであり、各会計年度の経費は、その年度の歳入で充当されることが望ましい。これは会計年度独立の原則とか予算単年度主義とよばれるが、とくに予算の統制機能を重視した原則といえる。しかし、予算は効率的な資源配分のためにも不可欠な道具となりつつあり、管理機能や計画機能の遂行のためには、あまりにも硬直的に会計年度独立の原則に固執することは好ましくなく、過年度収支、繰越明許費、継続費などの例外的な制度がわが国でも設けられている。また、PPBSなどの予算制度改革においても、長期的計画策定と単年度予算との有機的関係が強調された。
なお、企業などでも会計年度を設定して財産計算および損益計算を行っており、営業年度、事業年度ともよばれている。企業の場合、会計年度の始期と終期は定款によって任意に定めうるが、商法の規定により、企業は毎年1回は決算を実施することとされているので、会計年度の期間は1年を超えない範囲で設定しなければならない。わが国では現在、4月を始期とし、半年または1年を一会計年度とする企業が多い。 <林 正寿>
会計法🔗⭐🔉振
会計法
(かいけいほう)
国の収入・支出に関して規律する一般法(昭和22年法律第35号)。
大日本帝国憲法(明治憲法)下においては、会計法には収入・支出の手続に関する規定のほかに、予算・決算制度に関する規定が置かれていたが、第二次世界大戦後の日本国憲法下では、収入・支出に関する技術的な規定を定めることとし、財政処理に関する基本原則、予算・決算制度のあり方については、新たに財政法を制定して、統一的に定めることとした。このように、第二次世界大戦後の会計法は、国の現金会計に関する技術的・手続的規定というべき性格をもっている。
会計法は8章50条からなるが、まず総則規定として、収支統一の原則を掲げる(2条)。この原則は、歳入・歳出の混交を禁じるもので、歳入はかならず国庫に納付して統合し、歳出はかならず歳出予算から支出されねばならない、とする。現金会計のもう一つの重要な原則は、会計年度独立の原則である。この原則は、財政法第12条および第42条本文の定めるところで、旧会計法とは異なり、現行の会計法においてはその旨が明示されていないが、会計年度を設ける以上、この原則は当然に妥当する、と考えられている。
さらに会計法は、収入、支出負担行為および支出、契約、時効、国庫金および有価証券、出納官吏などに関する規定を置いている。また、会計法を具体的に施行するための政令として、「予算決算及び会計令」、「予算決算及び会計令臨時特例」などがある。
会計法に定める規定の多くは、国の内部において、会計に関する手続の適正さを確保することを直接の目的とする。その意味では、会計法は、基本的に国の内部の会計機関に対する訓令的な法規といってよい。ただ、時効に関する規定(30条以下)など、国と第三者との間の法律関係を直接規制する規定も一部にあるので、注意を要する。
なお、会計の概念は多義的であって、会計の対象による区分(現金会計、物品会計、不動産会計)に応じて、会計法を広くとらえることがある。この場合、現金会計については、前述したとおり、会計法を中心とする会計法規の規律するところである。物品会計については、物品管理法などが、不動産会計については、国有財産法などが、それぞれ規律することとなる。→会計年度 →財政法 <田中 治>
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