エクマン層🔗⭐🔉振
エクマン層
[Ekman layer]
大気の大規模な流れ,あるいは回転する容器内の流体で,地面あるいは容器の底における粘着の条件(流体が壁の速度と一致すること)のために上層の流体と底の間に形成される大きな速度勾配をもつ層.通常の流れで固体壁の近くに生じる*境界層と類似のものだが,エクマン層内では*コリオリ力の効果のために壁から離れるに従って流速の向きがらせん状に変わる.流体の動粘性率をν,地面あるいは容器の回転角速度をΩとすると,層の厚さは
の程度である.実験室ではνとして分子動粘性率を用いる.容器の回転が1rad・s⁻¹(毎分10回転)の場合,エクマン層の厚さは約1mmになる.大気や海洋などの場合はνとして渦動粘性率を用いる.大気で約1km,海洋で約1m程度になる(→渦粘性).

エクマン流🔗⭐🔉振
エクマン流
[Ekman current]
海面を吹く風と海水表面との摩擦による海水の流れをいう.エクマン吹送流あるいは単に吹送流(drift current)ともよばれる.流れの向きは地球自転に影響され,表面では風向から北(南)半球で45°右(左)にずれ,水深が増すと流速が減ると同時に右(左)まわりに方向を変える.この流速ベクトル図をエクマンらせん(図)という.
また風の影響がおよばず,ほとんど流れがなくなる水深をエクマン深度または摩擦深度(depth of frictional influence),海面からエクマン深度までをエクマン層とよぶ.その厚さは中緯度で十数mで,低緯度ほど大きくなる.

岩波理化学辞典 ページ 480。