パラフィン炭化水素🔗⭐🔉振
パラフィン炭化水素
[英 paraffin hydrocarbon 仏 hydrocarbure paraffénique 独 Paraffinkohlenwasserstoff 露 парафиновый углеводород]
アルカン(alkane)またはメタン系炭化水素(hydrocarbons of methane series)ともいう.CnH₂n₊₂の一般式をもつ飽和鎖式炭化水素.炭素数nが1のメタン,2のエタン,3のプロパン,4のブタン,5のペンタン,6のヘキサン,7のヘプタン,8のオクタンなど各種のものがあり,n=20ではイコサンとよばれる.n≧4では,直鎖のノルマル(n‐)炭化水素のほかに側鎖をもつ異性体がある.nが小さい(低級の)ものは気体,中級のもの(直鎖化合物ではC₅からC₁₅くらいまで)は液体,大きい(高級の)ものは固体である.直鎖化合物では融点,沸点,比重もnの増加に従って規則正しく高まる.同じ炭素数の異性体の中では,直鎖のものの沸点が側鎖のあるものより高い.常温で気体のものはほとんど無臭であるが,低級な揮発性液体のものはベンジンのような臭いをもち,高級な固体には臭気がない.水に対する溶解度はどれも非常にわずかで,アルコールには水に対するよりも溶ける.化学的性質はよく似ていて,安定でかなり変化をおこしにくいが,反応条件によってはハロゲン,発煙硫酸,硝酸,酸化剤などの作用で誘導体を生じる.石油の分留によっても得られるが,次のような生成法もある.
1)ハロゲン化アルキルに還元剤を作用させる.
CnH₂n₊₁Br+2H→CnH₂n₊₂+HBr
2)エチレン系または,アセチレン系不飽和炭化水素に水素を添加する.
CnH₂n+2H→CnH₂n₊₂
3)グリニャール試薬を水で分解する.
CnH₂n₊₁MgBr+H₂O→CnH₂n₊₂+Mg(OH)Br
4)エーテル中でハロゲン化アルキルに金属ナトリウムを作用させる(ウルツ合成).
2CnH₂n₊₁Br+2Na→(CnH₂n₊₁)₂+2NaBr
5)ハロゲン化アルキルに亜鉛アルキルを作用させる.
2CnH₂n₊₁Br+Zn(CnH₂n₊₁)₂→ZnBr₂+2(CnH₂n₊₁)₂
6)脂肪酸ナトリウムをソーダ石灰とともに熱する.
CnH₂n₊₁COONa+NaOH→CnH₂n₊₂+Na₂CO₃
岩波理化学辞典 ページ 3998 での【パラフィン炭化水素】単語。