ニュートリノ振動🔗⭐🔉振
ニュートリノ振動
[neutrino oscillation]
もしニュートリノに質量があると,質量の固有状態と弱い相互作用の固有状態は一般に一致せず,異なった種類のニュートリノ(νe,νμ,ντ)が混じり合う.その結果,例えばβ崩壊で生成された電子ニュートリノは,有限時間後にはνμやντ成分を含み,その確率は時間とともに振動する.これは量子力学的干渉効果で,振動の周期は,ニュートリノの座標系でE/(Δm)²(Eはニュートリノのエネルギー,Δmは混合するニュートリノの質量差)であり,振動の大きさは混合行列要素の2乗で与えられる.加速器や原子炉の実験はeV程度の小さなニュートリノ質量の検出に有効である.ニュートリノ振動はまだ確証されていないが,地上で観測される*太陽ニュートリノの強度が理論予測値より大幅に小さいことや,大気上層部で宇宙線により生成される不安定粒子(主にπ中間子とK中間子)が崩壊時に放出するνμとνe(大気ニュートリノ)の比の予測が地上での観測とずれることなどが,ニュートリノ振動に起因するとの推測もされている.これらに関係するΔm≃0.1eV程度以下の振動を検出するために加速器から数百km離れた地点でニュートリノを捕える実験が,日本の神岡鉱山をはじめ世界的に計画されている.
岩波理化学辞典 ページ 3780 での【ニュートリノ振動】単語。