電離圏🔗⭐🔉振
電離圏
[英 ionosphere 仏 ionosphère 独 Ionosphäre 露 ионосфера]
大気の熱圏下部の電子とイオンが最も多く存在する領域.これまで電離層,ケネリー‐ヘヴィサイド層(Kennelly-Heaviside layer)とよばれることが多かった.高さに対する電子密度の分布は図のとおりで,極大部付近の層を考えて約90km以下をD層(D-layer),90〜140kmをE層(E-layer),140〜400kmをF層(F-layer)とよぶ.
最大の電子密度はF2層に現われて,10⁶/cml³程度に達するが,これでもなおそのあたりの中性粒子数の0.1%にすぎず,電離圏は弱電離プラズマである.電離がこのようないくつかの層に分かれるのは,太陽放射線中の水素輝線(ライマンβ線)とヘリウムイオン輝線(30.4nm)がおもな電離源で,かつ大気の被電離成分が主として酸素分子・原子であることに起因する.F2層は主としてヘリウムの30.4nmの輝線および10〜90nmの紫外線の輝線が酸素原子を電離するために形成され,E層は主として水素のライマンβ線や軟X線(0.1〜10nm)が酸素原子・分子,窒素分子などを電離するためにできている.夜間,太陽光が直接入射しないときも,地球を包んでいる超高層大気による太陽光の散乱などのために密度は小さいながらも電離圏は保存される.D層などでは中性粒子の数が多く,衝突回数が多いので電波の吸収がおこる.また逆にF層では衝突が少ないので移動がおこりやすく,磁気嵐の際の電場の効果などを受けていわゆる*電離圏嵐がおこる.またE層にはしばしばEs層(Es-layer,sporadic E-layer)とよばれる電子密度の非一様な領域が現われる.
イオン組成は高さによって異なり,高さ270kmより上では主としてO⁺,100〜270kmあたりではNO⁺,O₂⁺などが主成分で,高さ120km以下ではN₂⁺も多い.電離圏では電子やイオンの移動によって電流が流れやすく,超高層大気の潮汐運動と地球磁場の作用によって流れる電流が地磁気の日周変動をおこす.この電流は磁気赤道でいちじるしく強い.太陽系では地球以外にも火星や金星,木星,土星,それに木星の衛星イオなどに電離圏があることが知られている.

岩波理化学辞典 ページ 3527 での【電離圏】単語。