磁気圏🔗⭐🔉振
磁気圏
[英 magnetosphere 仏 magnétosphère 独 Magnetosphäre 露 магнитосфера]
大気の最上層部で,地磁気の磁場のエネルギーが大気の熱運動のエネルギーを超える部分をいい,その外部境界は*太陽風と地球磁場との境界である.地表から150km付近では,大気の電離度は10⁻⁶程度であるが,高さとともに急増し,地上1万km以上の高空では大気はほとんど電離している.陽子と電子とが主成分で,粒子密度は最上層部で約10〜10²/cml³程度である.イオンや電子の平均自由行程が長いために,電離気体は磁場に凍結されている.太陽風が地磁気の磁場の壁にさえぎられ,地球のまわりをさけて通るために磁気圏の外部境界ができる.この部分を磁気圏界面(magnetopause)という.太陽に面する側では外部境界は地球半径の10倍程度の位置にあり,太陽風と磁気圧が釣り合って平衡状態にある.太陽と反対の側では地球半径の200倍以上にまで磁気圏尾部が伸びている(図1).
磁気圏頭部の地球近傍には地球をとりまいて*放射線帯,プラズマ圏があり,放射線帯粒子は*赤道環電流を担って,*磁気嵐の主相に寄与する.磁気圏頭部高緯度の表面から南北両極地方にはいりこむカスプ(cusp)とよばれる太陽風粒子の領域があり,このあたりから太陽風粒子が効果的に磁気圏内に運びこまれて磁気圏境界層を形成する.また,磁気圏尾部の上半分の磁場は地球向きで北極地方につながり,下半分の磁場は地球から外向きで南極地方から発する.中央部では磁場が弱く,磁気中性面とよばれ,そのあたりを*プラズマシートが満たしている.プラズマシートの地球側の端は磁力線によってオーロラ域につながっている.太陽風から磁気圏内に流入するエネルギーは,磁気圏内で電流エネルギー,粒子の運動エネルギーなどに変換され,最終的には電離圏に入射する粒子のエネルギーや電離圏に流れる電流のジュール熱などで失われる.
太陽風プラズマの動圧と地球磁気圏の磁場圧の釣り合いを保つように,両者の境界には2つの渦電流が流れている(図2).磁気圏尾では,この電流の一部は,磁気圏尾中央部を向うから手前にプラズマシート中を流れるクロステイル電流(crosstail current)と結びついてソレノイド状となり,磁気圏尾の磁場を形成する.


岩波理化学辞典 ページ 2115 での【磁気圏】単語。