一酸化炭素[イッサンカタンソ]🔗⭐🔉振
一酸化炭素[イッサンカタンソ]
【英】carbon monoxide
【独】Kohlenmonoxyd
【仏】monoxyde de carbone
《同義語》酸化炭素carbon oxide
CO.無色,無臭の気体.炭素または炭素化合物が不完全燃焼する際に生じる.一般に,発生源として燃焼し始めの練炭や炭火,自動車の排気ガス(数%の高濃度になりうる),煙草の煙(数百ppm)などが問題となる.吸入すると,血液中のヘモグロビン*(Hb)との親和力が酸素より210倍以上も強く,結合してHbCO(カルボキシヘモグロビン*)となり,Hbの酸素運搬能を失わせて低酸素血症(酸素欠乏症*hypoxemia)を起こすので,きわめて有害である.職場での許容濃度50 ppm.
一酸化炭素中毒[イッサンカタンソチュウドク]🔗⭐🔉振
一酸化炭素中毒[イッサンカタンソチュウドク]
【英】carbon monoxide poisoning
【独】Kohlenmonoxydvergiftung
《同義語》CO中毒CO poisoning
炭素を含む有機物が不完全燃焼するときに発生する.したがって職場ではコークス燃焼炉,製鉄,都市ガス製造などで発生するほか,メタノール合成,ニッケル・カルボニル合成などに使われる.その他の環境では,自動車の排気ガスによる環境汚染,家庭での燃料由来の中毒,喫煙によるものなどが問題となる.家庭では夜間睡眠中に起きることが多い.また体内でも生成されており(内因性一酸化炭素),その量は呼気中2〜3ppm,HbCOにして0.5%以下である.無色,無味,無臭で,空気よりやや軽く,水に難溶の気体である.空気中,12.5〜75%で爆発しうる.血液中のHbとの結合力は,酸素のそれの約300倍であり,Hbの酸素運搬能力を低下させ,酸素欠乏あるいは窒息状態をもたらす.主に低酸素に敏感な中枢神経系,次いで心筋が傷害される.皮膚は鮮紅色が多い.またミオグロビン,呼吸酵素respiratory enzymeとも結合する.急性中毒はHbCO 5%(気中濃度30 ppm 8時間)で認識,精神運動能力の低下,HbCO 10%(50 ppm 6〜8時間)で,軽い頭痛,体動時の呼吸困難,20%で頭痛,皮膚血管拡張,30〜40%で激しい頭痛,嘔吐,虚脱,歩行障害,40〜50%で仮死,50〜60%でチアノーゼやチェーン・ストークス型呼吸が現れ,70%で昏睡,呼吸・脈拍微弱で死亡しやすい.意識のはっきりしているうちに手足の運動麻痺が起こる.血中濃度30〜40%で歩行障害を起こすが睡眠中の中毒では覚醒時すでに歩行障害が起きており,脱出しようにも脱出できず,そのような姿勢で死亡していることが多い.急性中毒の後遺症は数日〜数週後から現れることが多く,パーキンソン症候群(パーキンソニズム*)やアテトーゼ(アテトーシス*)など,錐体外路症状などの神経症状,健忘症候群や妄想・幻覚などの精神症状 等がある.低濃度,繰り返し暴露で慢性中毒が発生し,易疲労性,頭痛,めまい,物忘れ,不眠,知覚異常などのほか,心電図異常(ST低下など)をみる.許容濃度50ppm,環境基準10 ppm 24時間,20 ppm 8時間.定性分析による検出方法として,Kunkel法がある.これは,被検血液にタンニン酸溶液を加える方法で,HbCOを含むときには紅色になる.定量分析としては,被検血液と対照血液を2,000倍に希釈したもの,さらに各々にCOを飽和させたもの,計4種類を分光光度計spectrophotometerにかける吸光光度法(→紫外可視吸光光度法)がある.
南山堂医学大辞典 ページ 391。