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慢性胃炎[マンセイイエン]🔗🔉

慢性胃炎[マンセイイエン] 【英】chronic gastritis 【独】chronische Gastritis 【仏】gastrite chronique 【ラ】gastritis chronica 元来病理組織学的名称で,長年月にわたる胃粘膜の欠損(びらんなど)とその再生を繰り返した結果生じた胃腺の萎縮を本態とする不可逆の変化をいい,通常幽門腺領域に発生し,胃底腺領域に向かって広がっていくものが多い.一方,悪性貧血患者の胃粘膜像は胃底腺領域に著明な萎縮性胃炎がみられるが,幽門腺領域には萎縮がみられないか,あっても軽度なものが多いことが知られている.この特異な胃炎は壁細胞抗体が陽性,血中ガストリン値が高く,内因子抗体が証明されることが多いことからStricklandら(1973)はその成因に自己免疫が関与しているものと考え,これをA型胃炎 type A gastritis,炎症の再生過程に生ずる通常型をB型胃炎 type B gastritisと呼ぶことを提唱している.また近年胃粘膜内にらせん形をしたグラム陰性桿菌Helicobacter pylori(HP)(→ヘリコバクター)が発見され,その菌の作用によって胃内にアンモニアを生じ,粘膜傷害を起こすことが明らかにされ,慢性胃炎の成因の一つとして注目されている.慢性胃炎はX線検査でもある程度診断が可能であるが,内視鏡検査を行えばより確実である.従来最もよく知られていたSchindlerの3型分類(表層性,萎縮性,肥厚性)のうち,現在肥厚性胃炎hypertrophic gastritisの存在は否定されており,表層性胃炎(表在性胃炎)と急性胃炎との間に類似性がみられるなど再検討の時期にきている.1990年シドニーで開かれた世界消化器病会議でHPとの関係を織り込んだ新しい胃炎分類(シドニー分類Sydney system)が提案され,わが国でも徐々に浸透してきている.慢性胃炎の進展を加齢現象と割り切っている人もあるが.人種差,個人差が大きく,一様に論じることはできない.慢性胃炎は急性炎症を伴っているものは心窩部の不快感,空腹時痛などがみられることが多く,消化性潰瘍治療薬の有効率が高い.食後の膨満感がみられるものは胃排泄障害を伴うものが多く,消化薬が有効である.

南山堂医学大辞典 ページ 7283 での慢性胃炎[マンセイイエン]単語。