マスター二階段(昇降)試験[マスターニカイダンシケン]🔗⭐🔉振
マスター二階段(昇降)試験[マスターニカイダンシケン]
【英】Master two step test
《同義語》マスター負荷試験
A.M.Masterが考案した方法で,潜在性虚血性心疾患の診断に用いられる運動負荷心電図試験の一種である.また,心筋梗塞〔症〕*後の経過観察とリハビリテーションの示標としても用いられる.使用される階段は図のごとく,高さ9インチ,奥行10インチ,幅24インチの2階段である.性別,年齢,体重に応じて定められた回数だけ,1分半をかけて昇降する.一方向で1回5動作(4歩と1回転歩)で,メトロノームを用いてステップリズムをとると施行しやすい.最近は1分半のsingle test法より3分間で2倍負荷をかける二重負荷試験double Master testが多用される.判定は運動直前仰臥位の心電図を前値とし,運動直後に引きつづいて適宜の間隔と時間まで心電図を撮って比較検討する.異常判定基準は, 1)ST上昇あるいは下降がI誘導で0.1 mV以上,II,III誘導で0.15 mV以上,胸部誘導で0.2 mV以上, 2)I,IIまたは左側胸部誘導でTが逆転ないし二相性変化, 3)PQ時間が運動直後で延長, 4)脚ブロックの出現, 5)不整脈の出現, 6)明らかな狭心発作の出現などを陽性所見とする.本法の診断陽性率の感受性は43〜66%,特異性は80%程度で,多階段運動負荷試験より多少劣る.しかし本法は運動負荷試験のなかでも最も簡便で,器具は安価で狭い場所でも施行可能である.しかも他の方法より一番安全で,医師が直接に付き添う必要がないため,頻用されているのが現況である(Arthur M. Masterはアメリカの医師,1895-1973).
→図

南山堂医学大辞典 ページ 7240 での【昇降】単語。