糖尿病[トウニョウビョウ]🔗⭐🔉振
糖尿病[トウニョウビョウ]
【英】diabetes mellitus(DM)
【仏】diab
te sucr
【ラ】diabetes mellitus
糖尿病は膵のインスリン産生細胞(β細胞)のインスリン分泌不全ないしインスリンの標的細胞での作用不全の結果生じる糖,タンパク,脂質の代謝異常をいう.本症は複数の遺伝子異常に起因するが,感染,肥満,運動不足などの環境因子が加わって発症し,共通して多飲,多尿,体重減少などの特徴ある症状を呈するに至る.わが国での患者総数は年々増加の傾向にあり,1990年代では数百万を数え,40歳以上の成人の5〜10%を占める.臨床上,病型はインスリン依存性糖尿病*(IDDM),インスリン非依存性糖尿病*(NIDDM)およびその他に大別される.インスリン依存性とはインスリン注射を欠くと直ちに生命に危険が及ぶことを意味し,ウイルス感染,ストレスそのほかの誘発する抗原に対する自己抗体がβ細胞を破壊し,インスリン産生が著しく低下して発症する.発症は25歳以下の若年者に多く,わが国でのこの病型の頻度は全患者の3%以下である.インスリン非依存性とは,特殊型を除き,インスリン依存性以外を網羅する.原因は単一でないが,遺伝に基づく膵のインスリン分泌不足とインスリンの作用不足の結果,肝よりの糖放出の抑制低下と筋肉,脂肪組織での糖取込みの低下および脂肪酸,グリセロール,アミノ酸,糖中間代謝物の産生増加とこれによる肝の糖新生*と脂肪,ケトン体の産生増加のため高血糖〔症〕*,ケトーシス(ケトン血症*),高脂血症(→脂〔肪〕血症)を惹起する.高血糖は腎の再吸収能を超えると尿糖排出,浸透圧性利尿,脱水を伴う.高血糖が長期に持続すると,血管壁の変性や血管腔の狭窄を呈し,細胞内でソルビトール代謝を促進し,網膜症,腎症,末梢神経障害,心筋梗塞,脳梗塞などの血管合併症を生じる.診断は特有な臨床症状と糖負荷試験*による.治療は過食と肥満の是正,運動によるインスリン作用の増強を基本とし,必要に応じて,インスリン製剤ないし経口血糖降下薬を加えて代謝異常を是正し,合併症の発症予防と進展抑制をはかる.


南山堂医学大辞典 ページ 5371 での【糖尿病[トウニョウビョウ]】単語。