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チフス菌[チフスキン]🔗🔉

チフス菌[チフスキン] 【英】typhoid bacillus 【独】Typhusbacillus 【仏】bacille typhique 【ラ】Salmonella choleraesuis subsp. choleraesuis serovar typhi Eberth(1880)によって見いだされた腸チフス(法定伝染病)の病原菌.Salmonella typhiあるいはS.Typhiと呼ばれるが,正式の学名は,Salmonella choleraesuis subsp.choleraesuis serovar typhi(Bergey's Manual, 1984).グラム陰性通性嫌気性桿菌(0.5〜0.6×1.0〜3.0μm)で周毛性鞭毛をもって運動する.ブドウ糖を分解して酸を出すが,しかしガスを産生しないことやornithineを脱炭酸できずrhamnoseを利用できない点などが他のサルモネラとは異なっている.Kauffmann-Whiteの血清学的分類ではD群サルモネラに属し,O抗原(菌体抗原)9,12とH抗原(鞭毛抗原)dとをもつ菌である.患者からの新鮮分離株はO抗原のさらに表層にあるVi抗原をもつものが多い.ヒトにのみ病原性を示し,動物が感染して病気となることはない.感染すると約1週間の潜伏期の後で発病し,発熱,白血球減少,徐脈,胸腹部の発疹(バラ疹),脾腫などの症状が現れる.経口摂取された菌は,まず小腸のPeyer板と腸管リンパ節に侵入し増殖する.次いで血流に入り,細網内皮系(とくに肝臓,脾臓)の細胞内で増殖する(細胞内寄生性).菌はPeyer板や胆汁より腸管を経て糞便中へ排泄されるばかりではなく,血液より腎臓を介して尿中へも排泄される.発病2週間以降にウィダール反応Widal reactionを行えば血清中にこの菌に対する特異抗体が検出できる.治療にはクロラムフェニコールアンピシリン,ST合剤が使用される.治癒後には高度の免疫が残る.

南山堂医学大辞典 ページ 4909 でのチフス菌[チフスキン]単語。