前立腺肥大症[ゼンリツセンヒダイショウ]🔗⭐🔉振
前立腺肥大症[ゼンリツセンヒダイショウ]
【英】prostatic hypertrophy
【独】Prostatahypertrophie
【仏】hypertrophie prostatique
前立腺肥大症は加齢と精巣(睾丸)の2つの要因によって発生するといわれ,60歳以後血中のfreeのテストステロンおよびデヒドロテストステロンが減少し,これらの減少と時を同じくして血中freeのエストラジオールが増加する.このようなホルモン環境の変化が前立腺肥大症を発生させるものと思われるが,詳細については解明されていない.イヌを用いた実験でアンドロスタンジオールとエストラジオールを同時に投与することによって,前立腺肥大症を発生せしめた報告がある.肥大症発生の初発病巣は前立中葉と側葉の尿道周囲腺periurethral glandから発生し,本来の前立腺(外腺)は圧迫されてあたかも被膜状となっている.肥大組織とは明らかに区別でき,この外腺の被膜状に萎縮したものを外科的被膜とも呼び,外科的摘出術に際してはこの被膜を境にして腫瘤のみを摘出する.臨床症状は,腫大した前立腺によって尿路が圧迫されるために起こるもので,排尿障害*が中心となる.しかし腫大した前立腺の大きさと臨床症状は相関しない場合が多く,前立腺の炎症,充血などによって症状が増強される. Guyonによって臨床経過が3期に分けられ,第1期を刺激期といい,腫大した前立腺によって後部尿道が刺激され,尿道の不快感,尿意頻数*,とくに夜間の排尿回数の増加がみられる.第2期は残尿発生期と呼び,50〜150 mLの残尿*がみられ,頻尿,排尿困難も強くなりいきみが必要となる.長時間乗り物に乗ったり,飲酒時に前立腺に充血が加わると突然排尿ができなくなり,これを急性尿閉acute urinary retentionと呼ぶ.第3期は慢性尿閉期で,残尿はさらに多くなり300 mL以上となる.膀胱は過伸展の状態となり,やがて尿が絶えず漏れるようになり,これを溢流性尿失禁*overflow incontinenceと呼ぶ.早期は保存的に薬物投与による治療が行われ,残尿が多くなる第2期後半の症例では,経尿道的な手術,前立被膜下摘除術などの手術療法が行われる.
南山堂医学大辞典 ページ 4441 での【前立腺肥大症[ゼンリツセンヒダイショウ]】単語。