前立腺[ゼンリツセン]🔗⭐🔉振
前立腺[ゼンリツセン]
【英】prostate
【独】Prostata,Vorsteherdr
se
【仏】prostate
《同義語》前位腺,摂護腺
前立腺は,膀胱頚部から後部尿道にかけて尿道を輪状に取り巻いている臓器で,栗実状を呈してその重量は約16 gである.尿道前面の前立腺実質はうすく,大部分の実質が尿道の後面に存在しているが,これらを側葉lateral lobe,前葉anterior l.,後葉posterior l.,両側の射精管が前立腺基底部を前下方に貫通して,後部尿道後壁中央部の半丘状に隆起した精阜vermontanumに開口しているが,この射精管より上方を中葉median l.と呼んでいる.前立腺と恥骨後面は恥骨前立腺靱帯puboprostatic ligamentで結合し,後面はDenonvilliers筋膜によって直腸と境されている.前立腺は前立腺被膜と腺葉構造からなり,腺組織は筋組織によって30〜50個の小腺葉に分割されている.腺腔は単層または多層の円柱上皮からなり,小腺葉からの排泄管は精丘に求心性に集まって,精阜の周辺の尿道壁に開口する.これが外腺external glandと呼ばれ,膀胱頚部から精丘までの尿道粘膜の直下に,短い排泄管を有する腺組織が存在し,尿道周囲腺periurethral g.または内腺internal g.と呼ばれている.前立腺から射精時に前立腺液prostatic fluidが分泌され,精液の15〜20%を占めるが,その役割については解明されていない点が多い.前立腺液はpH 6.5の弱酸性の透明な液で,クエン酸,スペルミン,セミニン,イノシトール,酸性ホスファターゼ,β-グルクロニダーゼ,プラスミノーゲンアクチベータ,α-アミラーゼ,リゾチームなどのほかに,亜鉛,カルシウム,マグネシウムなどの金属を含んでいる.これらの前立腺液中の成分は,精子の生存や運動に関与し,精嚢腺液と一緒に精子が成熟して卵子へ到達するために重要な働きをしている.金属の中の亜鉛は,亜鉛を含む酵素の成分としても存在するが,前立腺に含まれる多量の亜鉛はそれだけでは説明できず,前立腺液の抗菌作用の研究から,その本体が亜鉛である,との説がでている.

南山堂医学大辞典 ページ 4435 での【前立腺[ゼンリツセン]】単語。