先天異常[センテンイジョウ]🔗⭐🔉振
先天異常[センテンイジョウ]
【英】congenital anomaly
【独】kongenitale Anomalie
【ラ】congenitalis anomalia
「生まれたとき,または通常は生まれる前に存在すること」を,先天性congenitalといい,「正常の基準から著しくはずれていること」を,異常anomalyという.異常が起こる部位によって,先天異常は2つに分けられる.その1つは,「生殖細胞中の遺伝物質に障害が起こったもの」で,遺伝障害gene disturbanceと呼ばれる.もう1つは,「発育中の胎児に障害が起こったもの」で,胎児障害fetal disturbanceと呼ばれる.遺伝障害には2種あり,「親から子に伝達される遺伝子geneに起こったもの」を遺伝病,また「染色体に起こったもの」を染色体異常という.胎児障害は,「胎児器官の組織形成に障害が起こった」奇形*(形態形成異常),「胎児に異常な外力が作用して起こった」変形,「体の一部に出血壊死が起こったり,羊膜帯や絞扼輪による切断が起こる」組織破壊の3種類に分けられる.遺伝*inheritanceとは,「遺伝情報が遺伝子を通じて親から子孫に伝えられ,かつその働きによって形質が発現されること」であり,そこで形質*characterとは,「生物個体について観察できる性質の単位,単に形態的な性質に限らず,生化学的,生理学的,あるいは心理学的な性質などをも広く含む」つまり,子の形質は両親から受け継いだ遺伝子の情報発現の過程と,環境との相互作用の結果として現れる.形質には,「単一」または「少数の遺伝子の支配を受け,一般に不連続な変異をし」,「染色体の上にあり」メンデル遺伝mendelian inheritanceをするものと,「多数の遺伝子(ポリジーン*polygene,量的同義遺伝子)の支配を受けていて,連続的変異を示す」多因子性遺伝がある.先天異常の発生頻度は,1962年の国連報告では,出生当たり4.5%で,1977年には10.5%と推定しているが,これは定義の違いによるためである.それらによると,メンデル遺伝は1%,染色体異常は0.4%,出生直後に発見される胎児障害は1.5%,生後5年までに発見される胎児障害は1%の計3.9%である.多因子性遺伝は,すべてのヒトに認められる.現在ヒトで確認されているメンデル遺伝は総数1,906で,その内訳は,常染色体性優性遺伝1,172,常染色体性劣性遺伝610,伴性遺伝124である(マックウズィク,1986年).遺伝障害を起こす物質を変異原物質,または遺伝毒物といい,われわれの生活と係わっているものを環境変異原という.
南山堂医学大辞典 ページ 4376 での【先天異常[センテンイジョウ]】単語。