制癌薬[セイガンヤク]🔗⭐🔉振
制癌薬[セイガンヤク]
【英】carcinostatic agents
【独】karzinostatische Agens
【仏】agents carcinostatiques
《同義語》癌化学療法薬chemotherapeutics of cancers,抗腫瘍薬antineoplastic agents, cytostatica
制癌薬は本来癌細胞*に対し選択的に作用し,その分裂・増殖を阻害することが望ましいが,現在のところ正常細胞にも作用し毒性を示すものが多い.臨床的に制癌薬の多剤併用や,他の治療法との組み合わせが行われている.制癌薬は化学構造・作用機序から次の5種に大別される. 1)アルキル化剤*:生体内で活性化可能なアルキル基をもち,癌細胞の核親和性物質をそのアルキル基で置換してDNA生合成を阻害し,癌細胞の分裂・増殖を阻止する.ナイトロジェンマスタード系(メルファラン*melphalan,シクロホスファミド*cyclophosphamide,イホスファミドifosfamide),エチレンイミン系(チオテパ*thiotepa,カルボコンcarboquone),スルホン酸エステル系(busulfan,トシル酸インプロスルファンimprosulfan tosilate),エポキシド系(ピポブロマンpipobroman),ニトロソ尿素系(ニムスチンnimustine)などがある. 2)代謝拮抗物質*:癌細胞に不可欠な物質代謝,とくに核酸代謝を阻害することにより,分裂・増殖を阻止する.葉酸拮抗物質(aminopterin,methotrexate),プリン拮抗物質(6-メルカプトプリン 6-mercaptopurine, 6-mercaptopurine ribonucleoside),ピリミジン拮抗物質(5-fluorouracil,テガフールtegafur,シタラビンcytarabine,エノシタビンenocitabine)などがある. 3)制癌性抗生物質:制癌活性の高い抗生物質として, actinomycin D(アクチノマイシン*), mitomycin C(マイトマイシン*), aclarubicin,daunorubicin, doxorubicin, ネオカルチノスタチンneocarzinostatin, ブレオマイシン*bleomycin, ペプロマイシン*peplomycinなどが用いられる.特にbleomycin,peplomycinは扁平上皮癌*に卓効を示し,また,doxorubicin,aclarubicinも各種癌腫に著効を示す. 4)ホルモン剤:ホルモン依存性の癌である乳癌*や前立腺癌*などの治療に用いられる.女性ホルモン剤(distilbesterol),抗エストロゲン剤(エピチオスタノールepitiostanol, メピチオスタンmepitiostane, タモキシフェンtamoxifen)などのほか,黄体ホルモン剤,下垂体・副腎皮質ホルモン剤も使用される. 5)その他の制癌薬:白血病*・悪性リンパ腫*の治療に植物アルカロイド(ビンブラスチン*vinblastine,ビンクリスチン*vincristine,硫酸ビンデシンvindesine sulfate)やメチルヒドラジン誘導体(プロカルバジン*procarbazine)が用いられる.癌細胞への直接作用と宿主介在性の効果をかねた溶血性レンサ球菌由来のピシバニールや,宿主の免疫機能賦活を主目的としたカワラタケ培養菌糸体由来のクレスチンなども用いられている.
南山堂医学大辞典 ページ 4072 での【制癌薬[セイガンヤク]】単語。