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急性虫垂炎[キュウセイチュウスイエン]🔗🔉

急性虫垂炎[キュウセイチュウスイエン] 【英】acute appendicitis 【独】akute Appendizitis 【仏】appendicite aigu 【ラ】appendicitis acuta 虫垂appendix vermiformisに急性炎症が発生したものである.社会一般では,盲腸炎typhlitisという呼び名も用いられる.頻度の高い急性腹部疾患である.発生機序として,糞石,粘膜下リンパ濾胞の増生,寄生虫・異物,腫瘍などによる虫垂内腔の閉塞,これに血液・リンパ還流障害,ウイルス・腸内細菌感染が加わって発症すると考えられる.どの年齢でもみられるが(乳児ではまれ),好発は粘膜下リンパ濾胞の増生が盛んな10〜20歳代である.炎症の程度により軽度なカタル性虫垂炎appendicitis catarrhalisから中等度の蜂窩織炎性虫垂炎phlegmonous a.ないし化膿性虫垂炎purulentous a.,高度の壊疽性虫垂炎gangrenous a.に分ける分類が広く用いられる.ほかに出血性虫垂炎hemorrhagic a.,蓄膿性虫垂炎a. empyematosaという呼び名もある.急性炎症を伴わずに疼痛を繰り返す際や鎮静化後の瘢痕化したものを臨床的に慢性虫垂炎と呼ぶこともあるがその定義は不明確である.急性虫垂炎の初発症状は,多くの場合上腹部痛(内臓痛)から始まり,発熱と食欲不振,悪心・嘔吐,便通異常などの消化管症状を伴う.疼痛は次第に右下腹部に限局し(体性痛),マックバーネーMcBurneyの圧痛点などを認める.炎症が腹膜に及ぶと腹膜炎徴候(筋性防衛(御)ブルンベルグ徴候など)がみられ,穿孔時はさらに強まる.Douglas窩に膿汁が貯留すると直腸指診で圧痛を認める.しかしこれらの所見も,移動〔性〕盲腸および妊婦の虫垂炎では,圧〔痛〕点が移動し,また高齢者・小児では,訴えが弱く,注意を要する.血液検査では,炎症による白血球増多ないしは核左方移動がみられる.画像診断では,腹部単純X線写真で時に虫垂内の糞石,右下腹部の限局性麻痺性イレウス腸管(sentinel loop)がみられ,超音波・CT検査で腫脹した虫垂,膿瘍,腹水貯留などがみられる.鑑別疾患は,大腸炎,憩室症,腫瘍,尿路系疾患,婦人科疾患がある.治療は,カタル性では抗生物質投与で治癒する.蜂窩織炎性および壊疽性では,緊急手術により虫垂切除を要する.穿孔時には腹腔内誘導を行い,膿瘍が回盲部周辺に広範な際には,回盲部切除もなされる.予後は速やかに外科的治療がなされれば良好であるが,高齢者・小児で見逃された際は重篤となる.術後に局所やDouglas窩に遺残膿瘍residual abscess(残留膿瘍)が残ることもある.

南山堂医学大辞典 ページ 1660 での急性虫垂炎[キュウセイチュウスイエン]単語。