気分[キブン]🔗⭐🔉振
気分[キブン]
【英】mood, temper
【独】Stimmung
【仏】humeur
Jaspersは気分を次のように定義している.すなわち,「比較的長く持続して,その間心的生活全体に特有の色合いを与える感情状態の際の気持ちあるいは内的状態」.内容的には,気分には2通りあり,「今日は気分がよい」に代表される「調子」と置き換えることのできるものと,「陰気,陽気」に代表される個人ごとの基本情調die Grundstimmungに相当するものがある.これに対して感情は「快,不快,喜怒哀楽などという自己の状態」と定義される.気分に関する異常としては動機のない内的原因によると考えられる躁病*,うつ病*における気分の高揚,気分の抑うつがある.従来,躁うつ病*と呼ばれたこれらの疾患(障害)はDSM-IIIでは感情障害*affective disordersと呼ばれ,さらにDSM-III-R,DSM-IV*では気分障害mood disorders,ICD-10*でも気分(感情)障害と呼ばれる.DSM-IVでは気分障害は双極性障害とうつ病性障害に分けられ,前者はさらに双極I型障害,双極II型障害,気分循環性障害,特定不能の双極性障害,また後者は大うつ病性障害,気分変調*性障害,特定不能のうつ病性障害に分類される.気分循環症や気分変調症は従来診断では感情病圏には位置づけられず,人格障害*や抑うつ神経症に分類されていたものである.気分に関する異常にはこのほかに気分変動性labile mood, Stimmungslabilit
tがある.これは気分の持続性の障害で気分が変わりやすいことをいう.性格異常(気分変動者)や器質脳疾患,小児などにみられることがある.さらに気分の異常には妄想気分delusional mood-state,Wahnstimmungがある.周囲の雰囲気が不気味で,何か大変なことが起こりそうで不安な感じをいう.精神分裂病*の一次妄想の一つである.

南山堂医学大辞典 ページ 1589 での【気分[キブン]】単語。