未解決の女 警視庁文書捜査官/物語/1話

未解決の女 警視庁文書捜査官/物語/1話

情報

「文書」を糸口に未解決事件を鮮やかに解決していく爽快ミステリードラマ!体育会系の熱血刑事(波瑠)&頭脳派の文字フェチ刑事(鈴木京香)…最強凸凹コンビが今夜誕生!

詳細情報
◇番組内容
負傷した警視庁捜査一課の刑事・矢代朋(波瑠)は古賀(沢村一樹)率いる「特命捜査対策室」の第6係に異動。そこは未解決事件の文書解読係だった!
◇出演者
波瑠、沢村一樹、工藤阿須加、山内圭哉、西銘駿、高田純次、光石研、遠藤憲一、鈴木京香
【ゲスト】中山美穂、風間俊介、渡辺いっけい
【スペシャルコラボゲスト】内藤剛志
◇原作
麻見和史『警視庁文書捜査官』(角川文庫/KADOKAWA刊)
◇脚本
大森美香
◇演出
田村直己(テレビ朝日)
◇音楽
村松崇継

【主題歌】平井堅『知らないんでしょ?』(アリオラジャパン)
◇スタッフ
【ゼネラルプロデューサー】横地郁英(テレビ朝日)
【プロデューサー】服部宣之(テレビ朝日)、菊池誠(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
◇おしらせ
☆番組HP
 http://www.tv-asahi.co.jp/mikaiketsu/
☆Twitter
 https://twitter.com/mikaiketsu2018
☆Instagram
 https://www.instagram.com/mikaiketsu2018/

『未解決の女 警視庁文書捜査官 #1』のキーワード出現数BEST10

自分 24
嶋野泉水 24
捜査 18
ミステリー 15
財津 14
年前 14
岡部 12
事件 12
新海 12
刑事 11

『未解決の女 警視庁文書捜査官 #1』の番組内容&EPG情報の引用(ネタバレ注意!)

(記者)
では 嶋野さんは これからも

ミステリーを書き続けると?

(嶋野泉水)ええ。

自己啓発本でしたっけ?
この頃は

ああいうのが ベストセラーをとる
時代になってますけど

私は やはり 人間には もっと
空想力が必要だと思っています。

(記者)なるほど。
(カメラのシャッター音)

殺伐とした時代だからこそ

余計 フィクションには
存在意義がある。

(カメラのシャッター音)

(山本則夫)今の話 よかったよ。
空想力が必要ってね。

嘘よ。 記者が無教養で
つまらなかったわ。

(新海雄二)
泉水先生! お疲れさまでした。

どうです?
たまには ご主人も一緒に

この辺で 飯でも食いませんか?
(山本)おっ いいですね!

本当 久しぶりだな。
ねえ…。

私が たまにしか外食できないほど
忙しくしてるのって

誰のせいだと思う? 新海さん。

おっと…。

(泉水)…なんてね。
でも 今日は やめておく。

気分じゃないの。

〈この数時間後

東京都目黒区にある
マンションの一室で

ミステリー界の女王の異名を持つ
小説家 嶋野泉水の遺体が

駆けつけた消防隊員によって
発見される〉

〈鍵の掛かった部屋の刺殺体〉

〈そして 謎の出火…〉

(パトカーのサイレン)

〈連日
マスコミが大きく騒ぎ立て

警察の大規模な捜査が
行われたものの…〉

〈犯人の特定はできないまま
時は過ぎ

いつしか 捜査の歯車は
止まってしまった〉

〈その歯車が
再び動き出すのは…〉

〈それから10年
待たなければならない〉

おはようございまーす。

あれ?

(川奈部孝史)
矢代! お前 もう復帰か。

せっかく
奇跡的に生き返ったんだろ。

2~3カ月 ゆっくりしてりゃ
よかったのに。

係長 ご迷惑をおかけして
申し訳ありませんでした。

でも もう
リハビリもばっちりで…。

あっ そう。 残念ながら

もう ここには お前の席はない。

はい!?

一課長のご意向だよ。
だから 何度も言ったろ。

あんな無鉄砲な捜査をしてたら

命が いくらあっても
足りないって。

しかし…
では 自分は どこに?

まさか 刑事総務課?

刑事総務課はな
向こうから遠慮するって。

ほら あそこ ここを使うから。

なるほど…。

お前は…。

あっ ちょうどよかった。
財津さん。

(財津喜延)えっ?

特命捜査対策室第6係ですか…。

すみません 同じ一課なのに
存じ上げなくて。

いや 僕も昼間に上に上がるのは
久しぶりだしね。 フフッ…。

上?

このような形で 強行犯を
外れる事になったのは無念ですが

時の流れに埋もれた事件を
捜査するのも 警察の大事な仕事。

配属されたからには
全身全霊 頑張ります!

うん。 フフフフフ…。
結構 結構。

えっ?
特対 ここじゃないんですか?

♬~

どうぞ。

なんすか? この階段…。

(財津)うん。 この下が
僕たち6係のオフィスだ。

あっ… ごめん。 僕 ちょっと
一課長と話をしてくるから

先に下りててくれる?

よろしく!
はい。

警視庁に
こんな地下階段があったなんて…。

長いな…。

♬~

「第6係」…。

えっ!? ここ?

♬~

あっ 桑部先輩!
矢代! ちょうどよかった。

鳴海 呼んでくれ。
えっ 鳴海?

いるんだろ? そこに。

倉庫番の魔女
とかいうのが。

倉庫番の魔女…?

失礼します! 入ります!
自分は…。

ここ…?

(岡部)なんだ? ここ。
本当に ただの倉庫じゃないか。

♬~

この人が鳴海さん?

いや しかし
この人は 魔女というより…

フランケンシュタイン。

(桑部)よう 草加さん。
鳴海いるか?

♬~

あっ… あの…。

(鳴海理沙)誰?

自分は 今日から配属になりました
矢代と…。

(ドアの開く音)

(靴音)

おお… 魔女…。

誰が魔女よ。

(岡部)
おい いつまで待たせるんだよ。

(桑部)久しぶりだな 鳴海。
俺らは連続変死事件を追ってる。

連続変死事件?

(桑部)1人目のガイシャは
アパレルのショップ店員

太田碧 36歳。

2人目のガイシャは
会計事務所のパート事務員

加藤篤子 34歳。

2人とも目立った外傷はなく
それぞれ 遺書を残している。

♬~

(桑部)2人の体内から検出された
薬物の成分が同じだった事から

毒殺による連続殺人の疑いが浮上。

だが 2人の間に
接点は見つかってない。

書いたのは同一人物。
性別は女。

へっ?

恐らく 2人は その女に殺された。

動機は 怨恨による復讐。

(岡部)復讐?
何 勝手な事 言ってんの?

「つみ」という字を
漢字にしてないのは

自分のした事を罪と思ってないか

罪と認めてないか どちらか。

「罪」という字が持つ
罪悪のイメージが嫌で

女は 漢字に変換しなかった。

つまり 罪は

殺した自分ではなく
殺された相手にあると思っている。

…となれば 当然

動機は
怨恨による復讐と考えるのが妥当。

(岡部)根拠がなさすぎるだろ。

文書解読のエキスパートって
聞いたけど

当てずっぽうもいいとこだな。
文書解読のエキスパート…?

なぜ 女が犯人だと?

男は 女に復讐する時に
毒を飲ませたりしない。

男のほうが
女より上だと思ってるから

力ずくで事を遂げる。

相手が女だと
目上の者にも敬語を使わない

馬鹿な男の思考回路と一緒。

なんだと!?

そっちは 当てずっぽうですら
思いつかないから来たんでしょ。

なら まず 殺された2人の罪でも
探してみたら?

それと 彼。
捜査から外してみるとかね。

(桑部)こっちも
誰かさんが殉職し損ねたりと

人手不足なんだ。

もし 何か他に気づいたら
連絡くれ。

痛っ…。
(桑部)行くぞ。

はい はい はい…。

もしかして 岡部くん
私の代わりに強行犯に…?

(財津)よいしょっと…。

あの…
文書解読のエキスパートとは?

うわっ… でっかい目。

ん?

まるで ホルスの目。

ホ…?

知ってる? 古代エジプトの
象形文字によく出てくる あれね。

象形文字…?

(ドアの開閉音)

あの… 係長 ここは?

(財津)ハハハハ…。

6係は
文書捜査のエキスパートといっても

できたばっかりでね。

基本は この倉庫にある
膨大な未解決事件の資料の

整理と管理が仕事なんだ。

そうだね?
(草加)はあ…。

だから 倉庫番…。

特命捜査対策室の
1係から5係が扱う資料を

毎日 端からチェックして

うーん… 必要とあらば
運んだり 解読したりする。

朝8時半に来て

午後5時15分きっかりに
帰れる仕事だ。

心も体も傷ついた君にも
ちょうどいいでしょ?

いやいや…。
自分は 心は もちろん

もう 体も問題ありま…。

(くしゃみ)

6係です。
資料をお持ちしました。

(古賀清成)おい 倉庫番 来たぞ!

(吉田治郎・由比雄一)はい!

古賀さんだ…。

よし じゃあ A班は
ガイシャまわりの再捜査だ!

そっちは 現場の洗い直し!

お前らは鑑識に行って
再鑑定 依頼してこい!

了解しました! 行くぞ。
(吉田・由比)はい!

強行犯に先越されるなよ!
はい!

これ 話題になった 7年前の
大田区連続通り魔殺人事件ですね。

誰だ? お前。

失礼致しました 古賀室長。

自分は
先日 6係に配属になりました

矢代と申します。

倉庫番に新人?

お世話になります。
よろしくお願いします!

フン…。 誰が世話なんかするか。

はい?

(川奈部)古賀室長!

そんな顔しないでくださいよ。
室長も 元強行犯のエースでしょ。

元々 こういう顔だ。

で なんでしょう?

例の 先週 毒殺された
2人の女性ですが

両方の部屋に
こんなものがありました。

「嶋野泉水」…。

(川奈部)そう…。
10年前 殺された

ミステリー作家の
嶋野泉水の書いた本です。

ほら 警察が無能だって

マスコミに 散々たたかれた
あの時の…。

だから なんです?
ある程度 売れた本だったら

両方の部屋にあったって
おかしくはないでしょう。

ええ。 しかし
両方とも読んだ形跡が全くない。

「2008年」…。

そう… 殺された あの年だ。

魔女から ガイシャの本棚 調べろ
って言われて…。

そしたら 出てきたんです。

あいつ 余計な事を…。

魔女…? 鳴海さんが?

2008年… 2008…。

おっ…。

あっ これだ これだ。

イテテテ…。

ああ~ イタタタ…。
イテテテ…。

嶋野泉水 46歳。

職業 ミステリー作家。

死因は ナイフで
背中を刺された事による失血死。

ドアの鍵は 内側から掛けられ

その鍵は
部屋の机の引き出しの中にあった。

つまり 密室状態…。

(草加)
また 公表はされてはいないが

遺体発見時 キッチンの流しには

嶋野泉水愛用の原稿用紙を
燃やしたと思われる燃えカスが

残されていた。 また
事件があったと推定される時刻

近辺で 男が一人

マンションのエントランスを
出ていく姿が目撃されていたが

人物の特定には至ってない。

本当だ…。

草加さん いい声ですね!

あっ… すいません。

今まで 「はあ」とか「ふう」とかしか
おっしゃらなかったから

気がつきませんで。

刑事には それぞれ美学がある。

俺の美学は
無駄なセリフを吐かない事だ。

なるほど。

この未解決事件
我々で捜査しませんか?

(財津)えっ? なんの話?

我々6係も
特命捜査対策室として

10年前の
ミステリー作家殺人事件を

再捜査してはどうかと
思うんです。

(財津)僕らが捜査?
はい!

それによって 強行犯が追う
連続殺人のヒントが

何か見つかる可能性もありますし。

刑法犯罪で
警察が認知してる件数は

年間 約100万件。

そのうち
検挙した事件は

30万件程度。

つまり 毎年
約70万件の事件は

犯人を検挙できずに

未解決のまま
たまっていく。

なるほど。

でも 同じ特対でも
上は 優秀な古賀室長を中心に

未解決事件を解決しようという
活気にあふれていて…。

ふーん… 古賀ねえ…。

はい! 実は 古賀室長

警察学校の頃から
憧れの上司で。

1つ わかったわ。

そのホルスの目 節穴なのね。

とにかく 自分は

この件は きちんと
再捜査すべき案件だと思います!

いってきます。
おいおい…。

強行犯の邪魔になるような事は…。

ハハッ…。
噂どおりの熱血漢だ。

ねえ? 草加くん。

なんですか? あれ。

自分が正義のヒーローかなんかの
つもりですか?

…だね。 一見 鳴海くんとは
正反対のタイプだ。

はい? 一見?

あっ いや…。 ハハハ…。

あっ… これもだ。

ミステリー小説が多いですが

嶋野泉水の本は
新品同様のものが多いですね。

あの… 昨日も そこ
刑事さんが調べてましたけど…。

失礼しました。

我々 特命捜査対策室は

篤子さんの事件に
関連があるかもしれない

10年前の事件を調べています。

10年前…?

篤子が殺された事と
10年前の事件が

何か関係してるんですか?

それを調べるために
再捜査を始めました。

そうですか…。

お願いします。

必ず 篤子を殺した犯人を
見つけてください。

お願いします。

はい。

(Mizuki)ありがとうございます。
なんでも協力しますから。

す… すいません。 ちょっと
お聞きしたい事があるんですが。

帰ってください。
警察なんかに用はありません。

しかし 奥様の死の真相が
わかるかもしれません。

この2人の女性に見覚えは…。

知らないって言ってるだろうが!
何を今さら…。

♬~

くそっ…。

♬~

あの夫 何かにおいませんか?

10年間 ずっと放っておかれた
奥さんの事件を

再捜査すると聞いて
あんな迷惑そうにするなんて…。

喜ばれるとでも思ってたのか?

嶋野泉水が殺された時

マスコミは喜々として
彼女の噂を書き立てた。

嫌われ者の傲慢作家だとか

当時 会社員だった夫の

格差婚による犯行を疑う
記事まであった。

えっ…。

お前は 確かに
熱心な刑事かもしれないが

人としての機微が足りない。

♬~

まさか 何か疑ってるんですか?

嫌だなあ~。 僕は何もしてない!

「僕は」…。
(新海)そう!

僕は 執筆以外の事は何も…。

でも…。
ああ… そうだよなあ~。

もう言っちゃおうかなあ。
もう時効だろうしなあ。

重大犯罪の時効は

2010年に撤廃されましたが…。
シッ!

重大犯罪っていうか… ハハッ…。

実はね

あの頃 泉水先生は
不倫をしていた。

不倫!?
シッ!

(新海)相手は文壇バーの
バーテンダーですよ。

先生が結婚する前からの
知り合いで

二十数年ぶりの再会だったとか…。

そんな大事な事 どうして
当時 話さなかったんですか?

そりゃ 夫の則夫さんを
悲しませたくなかったからでしょ。

(朋の声)バーテンダーの名は恭一。

30年ほど前 福岡で店を出すために
東京を離れ

また 10年前頃に
戻ってきたそうです。

10年前の捜査では

嶋野泉水が死の直前に
不倫していた事は

つかめませんでした。

これは 新事実です!
うんうんうん…。

もし あの夫が
当時 その事実を知ったら…。

スペアキーを持っていたのは
夫だけ。

彼なら嶋野泉水を…。

(ドアの開く音)
報告書 ちゃんと読んだ?

ドアには鍵が掛かっていたし
チェーンまで掛かっていた。

鍵をしめる事はできても

チェーンを掛けて
部屋の外に出る事はできない。

部屋は完全な密室状態。

それが 事件を未解決にした
最大の理由だったでしょ。

確かに そうです。
でも そこに 何かトリックが…。

へえ~。

そのシワの少なそうな脳みそで
トリックねえ。

「シワの少ない」…!?
草加さんは?

(財津)そのバーテンダーの事を
調べに行ったって。

へえ~。
刑事みたいな事しちゃって。

草加さんは刑事です!

それに自分は
再捜査をすると言った時の

嶋野泉水の夫の顔も
気になりました。

夫の顔?
そうです。

陰険というか ジメジメした
裏のある顔をしていました。

あれは においます!

におう?
そうです。 これは

自分の刑事としての直感です。
直感…。

(アラーム)

あっ 5時15分だ。

じゃあ… すまないね。
続きは 明日 聞くから。

朝8時半には 必ず来るから。

おっと… これ よろしくね。 よし。

えっ?

あっ 係長も定時に帰宅…。

じゃあ 彼は どう?

彼は どんな人間に見える?
直感で。

えっ 係長ですか?

そうですね…。

ソフトで 人当たりがよく
切れ者ではないが 人格者。

他には?

(においをかぐ音)

香水? もしかして ああ見えて
軽薄な遊び人。

アフター5は
デートの予定が入っていて

それで
ずっと時計を気にしていた!

外れ。 財津さんは恐妻家。

5時15分に ここを出て

夕飯の買い出しをして
帰宅しないと 叱られるの。

えっ?
(においをかぐ音)

この香りは
1本318円の柔軟剤の香りだし

ああ見えて切れ者よ。

ここで まともに働きたいなら

二度と その鼻も直感も
信用しない事。

ここで信用していいのは…。

あっ…。

ふ~ん 不倫ねえ…。

(夫)今日 誰か来るの?
(妻)言ったじゃない。

(営業担当)
本日は見学会 よろしくお願いいたします。

あれ? ナオキ?
(ナオキ)タカちゃん!

(ナオキの妻)わぁ~ 天井 高~い。

《なぜ お前がここに…。
お前は ここに来てはいけないはずだ…》

稼ぐようになると
みんな 広い家 住むじゃない?

あれ 嫌だなぁ。
いいじゃん 家の広さなんか どうだって。

天井が高いと 広く感じるなぁ。

<その家は 「xevoΣ」>

<見学会は 12 13>

いい家だな…。

私が妻を殺しただと?
よくも そんなでたらめを!

いえいえ そういう意味では…。

ただ 鍵を持ってらしたのは
旦那様だけだという…。

許せん。 出ていけ!
さっさと出ていけ!

(通知音)

(通知音)

(携帯電話の振動音)

もしもし?

鼻も直感も信じるなって
言ったのに。 今どこ?

「嶋野の夫の家です」

「追い出されるところで。
それに…」

おっしゃるとおり
自分の鼻は外れたようです。

この部屋
嶋野泉水の本でいっぱいで

奥様への愛を感じます。

あなたの当てにならない鼻は
もういいから…。

「そこに なんの本が並んでるか
端から順に言ってみてくれる?」

えっ 本ですか? えっと…。

『氷河の涯』 『沈黙の』…。

まだ いたのか?

あっ すいません。 すぐ帰ります!

「帰らないで。 携帯を隠して…」

私の言うとおり 彼に話して。

はい?
「私の言うとおりによ」

穏やかに。 いい?

その書棚に並んだ奥さんの作品

全て読ませて頂きました。

えっ えっと…。

その書棚に並んだ奥様の作品
全て読ませて頂きました。

えっ いつの間にって
思いますよね? ハハ… ハハハ…。

「余計な事 言わないで」

言うとおりに言って。

…了解。

奥様の作品… 特に亡くなる前

書評家から
スランプを脱したと評され

ミステリーの女王復活と
たたえられた

『盲目の狙撃者』からの数作は

目を見張るものがありました。

でも 不思議…。

その本を あなたは
この書棚に並べていない。

それは なぜですか?
その理由は…。

その理由は

あなたが それらの作品を

奥様の作品だとは
考えていないからでは?

はあ?

そんな事
あるわけないじゃないか。

あんたは
一体 何が言いたいんだ?

ひょっとして 並んでいない
『盲目の狙撃者』以降の作品は

奥様以外の人物が
書いたのではありませんか?

馬鹿馬鹿しい…。
もう 話す事はない。

帰ってくれ。
私の妻は…。

平仮名と漢字の割合まで
緻密に…。

緻密に計算して
物語を紡いでいる。

男性が主人公の作品は…。

漢字の割合を増やして
骨太な空気を作り

女性が主人公の作品は
平仮名の割合を増やし

繊細さを表現しています。

あなたは
ある雑誌のインタビューで

そう誇らしげに語っていますね。
それは…。

なんという文字フェチ。
変態の域ですよ。

余計な事 言わない!
…失礼。

でも 奥様が復活を遂げた
『盲目の狙撃者』

そして その続編は みんな

主人公の探偵が
男性にもかかわらず

平仮名と漢字の割合が7対3。

あなたは…。

(2人)その理由を
どう説明されますか?

妙な言いがかりは やめてくれ!

何が7対3だ!

君は その本の平仮名と漢字の数を
数えたとでも言うのか?

ええ 数えました。

ええ 数えました。
えっ!?

えっ 数えた…?

あっ 私も変態の域でして…。
フフフ…。

「アハハハ… ウフフ…」

参りました。
えっ!?

おっしゃるとおり

妻が殺される直前の数作品は
妻が書いたものではありません。

えっ!
やっぱり…。

(山本)その頃 妻は…。

もう書けない!
書きたい事がないのよ!

(新海)そういう時のための
僕ですから。

大丈夫。 任せてください。

(山本の声)
しかし 編集者の新海は

業績のために
泉水の作品が欲しかった。

それで 妻に ゴーストライターを
提案したんです。

ゴーストライター?

(山本)
「彼らが作った泉水の作品は成功」

おかげで評価は取り戻しました。

しかし ある日
若い男が訪ねてきた。

(チャイム)

もう あなたは必要ないの。
それだけよ。

ふざけるな…
覚えておけよ!

その3日後です…
泉水が殺されたのは。

じゃあ 奥様を殺害したのは

その男かもしれない
じゃないですか!

そんな重要な事を
どうして隠してたんですか?

だって もしもですよ…

もしも
その男がゴーストライターで

妻殺しの犯人として逮捕されたら

奴は 妻のゴーストライターを
していた事を告白するでしょ!

ええ… まあ…。

そうなれば 妻が今まで
血へどを吐きながら書き上げた

過去の多くの傑作まで
色眼鏡で見られてしまう。

僕には それが耐えられなかった。

しかし…。

ひどい夫だと思うでしょ?

でも 私は どうしても
妻の名誉を守りたかった!

妻を…
妻の作品を愛していたんだ。

いいえ ひどい夫だなんて
思いませんよ!

むしろ ジメジメとか言って
すいません…。

はい? ジメジメ?

いえ。 奥様は
こんなに愛されていたんですね。

はあ…。

すいません…。
ああ… 泣けてきた。

大丈夫なの? この子…。

何やってんだよ。

ミステリー作家殺人について
まとめてんの。

新たに出てきた被疑者は2人。

殺害の3日前
自宅に来て口論していた若い男。

そして 元恋人のバーテンダー。

倉庫番が そんな事やっても
仕方ないだろ。

うるさいなあ! 私の後釜で
強行犯 入ったくせに。

どうせ 桑部先輩に

「あれ買ってこい」とか言われて
困ってるんでしょ?

午前中の「あれ」はジャムパン
夜はツナ缶

夜中はショートケーキ。
大体 これで合ってるから。

おお… サンキュー。 助かった。

そんな事より
殺された2人のガイシャに

接点が見つかったんだ。
えっ! 接点?

(岡部)鳴海主任に言われたとおり
2人の罪を探したら

海外旅行やブランド品や
2人とも 収入以上に

羽振りのいい生活を
していた事がわかったんだ。

その収入源を追って
PCを解析した結果

2人とも
複数のアカウントを使って

同じニュースサイトに
記事を載せていた。

内容は 特定の人物や企業を
ターゲットにした 誹謗中傷。

つまり フェイクニュース。
2人は報酬を受け取って

嘘のニュースの
書き込みをしていたって事?

(岡部)そういう事。
世田谷区の病院から

殺人に使われた薬物が減ってると
報告があり

その在庫の管理を担当していた
看護師 鈴村美咲が退職し

姿を消していた。

美咲の恋人 石井卓司は
半年前に自殺している。

自殺?

石井は 殺された
太田碧と加藤篤子が書いた記事で

閉店に追い込まれた
ビストロの店長だったんだ。

なんて事…!

今 こっちで
鈴村美咲の行方を追って…。

って おい!
今度 おごれよ!

人柄どおりの字を書くのね
あの子。

(財津)捜査本部は
逃走中の看護師 鈴村美咲を

毒薬混入連続殺人事件の
被疑者と断定した。

この連続殺人は

フェイクニュースで店を潰され
自殺した 恋人の復讐だ。

フェイクニュースとはいっても
まことしやかな大嘘は

ある程度 文才がないと
書けません。

殺された2人は 作家志望でした。

そのミステリー同人誌を
調べていたら

第一の被害者

太田碧のSNSの裏アカに
たどり着いたんです。

まあ 趣味のいいコスプレ。

このメンツが
なんらかのきっかけで

フェイクニュースのサイトを
立ち上げた。

で 恐らく 鈴村美咲も

調べるうちに
その事実にたどり着き

それで 一人ずつ始末したと。

そんなの置いたら
捜査本部みたい。

(草加)例の元恋人の
バーテンダーの事がわかりました。

名前は 宮下恭一。

しかし 彼は

嶋野泉水が殺害される3カ月前に
病死してる。

亡くなっていた?
草加さんの声 久しぶりに聞いた。

東京に戻ってきた時点で
余命半年だったそうだ。

つまり 嶋野泉水殺しに

この元恋人が関わってる可能性は
ゼロ。

不倫の線も低いと思う。
えっ… じゃあ

どうして この2人は
会っていたんでしょう?

そりゃあ 昔の恋人だから
いろいろあるんじゃないの?

フフ…。

あっ…。

あっ! この人…。

必ず 篤子を殺した犯人を
見つけてください。

そうか
恋人も同人誌仲間だったのか。

よし… 忙しくなるぞ。

手が足りません。 鳴海先輩も
捜査に加わってください。

嫌よ。 私 捜査なんて。

なぜですか? 刑事なのに。

なぜって 私の職場は ここ。

なぜ あの長い階段を

必要以上に
上り下りしなきゃなんないの?

足が太くなるわ!

でも 鳴海先輩の推理で
ここまできたんですよ。

別に推理じゃないわ。

あんなの当てずっぽうよ。

当てずっぽう? 自分で言います?
当てずっぽうって。

そう。 ただ 文字を眺めて
空想していただけよ。

信じようが信じまいが

あとは ただ
上が好きにすればいい。

私は ここで
決められた仕事をして

残業もしていない。

厚生労働省の働き方改革にも
のっとっている。

何か いけない?

あっ… もったいない!

もったいない?

ええ もったいないです。

こんなに たくさん
真実のかけらを集めてるのに

動き出さないなんて。
自分は行きます。

いってきます。

(財津)あら また行っちゃったよ。

あっ 草加くん ごめんね。

今 やっと あの長い階段を
下りてきたばっかりなのに。

何が真実のかけらよ。

RPGじゃあるまいし。

なぜ ゴーストライターの件を
黙っていたんですか?

それは… 死んだ先生の名誉を
守るためですよ。

当然でしょう?

いやあ あの頃は慌てましたよ。

慌てて目星つけた
ミステリー系の同人誌の中から

使えそうな奴 探して…。

2人とも
あんま 才能なかったけど。

一番使えそうだったのは

サークルに入ったばかりって
言ってた 彼だな。

先生も 彼は評価してた。

しかし ある時 急に

メンバーから外すって
言い出して…。

ちょっと 俺だけ外されるって
どういう事ですか?

(新海)まあまあ まあまあ…。

納得できませんよ。
(新海)うん うん そうだな。

説明してくださいよ。
(新海)もう 一から説明するよ。

(新海の声)彼に恨まれてねえ…。

仕方ないから
多少の金を渡して…。

それきり
彼の事は忘れてたんです。

それが 1年ぐらい前
突然 ここに来ましてね。

新しく立ち上げた
ニュースサイトを

共同で運営しないかって。

それが ニュースとは名ばかりの
怪しげなサイトで…。

馬鹿な事はやめろって
言ったんですけどね…。

フェイクニュースは儲かる。

こんなプロダクション
目じゃないっすよ。

(新海)…って
笑いながら言ってましたよ。

まるで 自分が垂れ流した嘘で
他人が落ちていくのを

楽しんでるみたいだった。

ニュースサイトの黒幕は
彼だったんですね。

亡くなる3日前
泉水と口論していたのは

この ペンネームMizukiこと
佐々木瑞貴かと思われます。

その後も 作家になれず
恨みを募らせた彼は

他者への誹謗中傷に喜びを…。

もういい!

あとは 我々が受け持つ。

財津さん。
はい。

困りますねえ
6係が勝手に捜査なんかしちゃ。

あっ すいません
管理が行き届かなくて。

捜査してはいけないんですか?
刑事なのに。

当たり前だ。

捜査は上。 下は あくまで倉庫番。

次 勝手に捜査なんかしてみろ
始末書だからな。

そんな…!

(吉田)室長! Mizukiこと

佐々木瑞貴の居場所が
わかりました。

出入りしてる出版社の話では
今週いっぱい 仕事を休んで

女と貸別荘に行っているそうです。
はあ?

女か…。

鈴村美咲の可能性があるな。

(財津)殺された
太田碧か加藤篤子の口から

佐々木瑞貴の存在を聞いて
知っていたのだとしたら…。

佐々木瑞貴も殺すはずだ。

すぐに強行犯に連絡しろ。

(一同)はい!

ちょ… おい!
だから お前 関係ないんだよ!

さっさと下に下りろ!

♬~(レコード)

♬~

♬~

いけない…。

文字の神様が下りてきたわ!

じゃあ 頼みましたよ。
(川奈部)了解。

行くぞ!

待ってください!

なんで まだ
倉庫番が来るんだよ!

自分も行ったほうが
いいのではないかと。

はあ?

その別荘地 柔道部の合宿で
よく使っていたんで詳しいんです。

もちろん
連続殺人犯 鈴村美咲の逮捕は

強行犯に任せます。

しかし 万が一
先に佐々木瑞貴が殺されたら

この未解決事件は

永遠に 真実が
わからなくなるかもしれません。

なんだ? お前。

正義の味方気取りか? え?

半人前の刑事に よくある傾向だ。

10年前だって 遺族は
必要以上の捜査を望んでないんだ。

お前が 今 やってる事は
ただの自己満足なんだよ。

しかし
誰が喜んでも喜ばなくても

真実は真実です。

ったく… 一課長め
面倒くせえ新人よこしやがって。

おい 見ろ。

先輩は定時にお帰りだよ。

鳴海先輩!

連続殺人の犯人は女。
動機は怨恨 復讐。

結局 先輩が空想した事は
全部 当たっていました。

空想?

古賀室長も
思ってたような上司ではなかった。

この目は
確かに節穴かもしれない。

でも 先輩は違います。

先輩は 変態で…。

いえ。

真実を見抜く
特殊な力を持っています。

自分は 先輩と
この未解決事件を解決したい!

えっ?

乗れば。

えっ?

あっ… 一緒に行きません?

行かない。 二人乗りは犯罪だし。

了解! いってきます。

おい。 おい!

おい 何してる お前! おい!

お前…。

まさか あの小娘
手助けに来たのか?

さあね
自分でも よくわからない。

なあ あいつはな
強行犯 外された腹いせに

いいとこ
見せようとしてるだけだぞ。

へえ~ じゃあ 誰かさんと同じね。

なっ…!

行くぞ!
(2人)はい。

魔女め…。

腹黒。

♬~

♬~

えっ? 矢代?

(川奈部)お前 何しに来たんだよ?

こっちに近道があるんです。
(川奈部・岡部)えっ?

(岡部)えっ ここ?

矢代!

(岡部)うわっ…! イテテ…。
(川奈部)おい!

(川奈部)矢代!
(岡部)ちょっと待てって!

(佐々木瑞貴)あっ…!

(佐々木)なんで こんな事…。

♬~

そうか… 篤子も碧も 君が…。

(鈴村美咲)そうよ。 あんたも
早く あの女たちの所に行って。

そして あんたたちが殺した
私の恋人の前で土下座して。

うっ…!

(せき込み)

知らなかった?

男と女では
麻酔の効き方が違うんだよ。

♬~

あっ…!

あっ!

(岡部)動くな! 警察だ!

うわっ…!

えっ?

♬~

(川奈部)鈴村美咲だな?

太田碧 加藤篤子殺害の容疑で
逮捕する。

あいつのせいで あの人は…
あの人は…。

はあ… イッタ!

ひどいっすよ
正当防衛なのに投げるなんて。

勘違いしないで。
助けに来たわけではありません。

え?

鈴村美咲は
全ての罪を自白しました。

しかし こっちは まだ
ひと言もしゃべらないそうです。

そう。

また古賀たちがやって来る前に
やっちゃいましょう。

えっ やっちゃう?

また この
コナンくん形式ですか?

えっ?
コナン・ドイルが どうかした?

あれですよ マイクの ここの声…。

っていうか 先輩が自分で

取り調べすれば
いいじゃないですか。

人間が苦手なの。

えっ?

いいから ほら! ほら!

あっ どうも。

なんなんですか?

刑事さんは
10年前の事件か何かを

追っかけてたんじゃ
ないんですか?

なんで 僕をこんな所に…。

10年前に殺された作家
嶋野泉水を知っていますね?

10年前に殺された作家
嶋野泉水は知っていますね?

えっ?

嶋野泉水には 殺される25年前

つまり 今から35年前に
愛し合った男がいました。

しかし 彼と別れ その後

彼女のファンだった
今の旦那様と結婚した。

それが
僕となんの関係があるんです?

何 勝手な事やってんだ お前ら!

別れて半年後 その元恋人は
実家のある福岡でバーを開き

男の子を育て始めた。

その子の名前は瑞貴。
あなたですね?

えっ? む… 息子?

佐々木瑞貴が嶋野泉水の息子?

日頃の父親の言動から

あなたは 自分の母親が

嶋野泉水ではないかと疑っていた。

東京に出て

母親と同じ ミステリー作家を
目指した あなたは

嶋野泉水に近づき
ゴーストライターとなった。

しかし ある時から

急に彼女は あなたを遠ざけた。

(佐々木の声)納得できませんよ。

なんでなんですか?

もう あなたは必要ないの。
それだけよ。

(朋の声)直接 嶋野泉水に
会いに行って 問いただしても…。

覚えておけよ!

(朋の声)やはり納得できなかった
あなたは…。

3日後
今度は 彼女の仕事場に現れた。

そして 泉水さんを刺し
火をつけた。

(佐々木)「へえ~」

「刑事さんも
そんな物語 考えたりするんだ」

「フフフフ…」

でも 僕が刺したって証拠は?

僕が 原稿を燃やした
っていう証拠が

どこにあるんです?

証拠は ありません。

でも 今 自白してくれましたね。

あの日 火災報知機が鳴り

泉水さんは
消防隊員によって発見された。

しかし 煙が出たのは
原稿が燃えたせいだと

なぜ わかったんです?

原稿用紙が燃えた事は

犯人しか知り得ない情報として
扱われ…。

事件発生から今日まで
一度も公表されていない。

そんなの
ただの偶然でしょう。

あとで後悔すると
思わなかったんですか?

衝動で
あんな事してしまうなんて。

後悔も何も
本当に僕は何も知りませんよ。

それに
殺された部屋は密室だった。

これは新聞にも載ってましたよ。

うん… そうだ。
そこが一番問題なん…。

勝手な発言しないで!
「あとで後悔」って何?

後悔は 「後悔」という文字自体に

「後で悔やむ」という意味が
あって

それに「あとで」を付けたら
二重表現よ!

え? 言いましたっけ?
でも…。

私の言葉を伝えるのに
乱れた言葉は使わないで!

もういい!
倉庫番は引っ込んでろ。

密室は…

あなたが嶋野泉水を殺して
部屋を出たあとに完成したのよ。

あなたが言うとおり

ドアにチェーンが掛かった
部屋からは

誰も出入りできない。

だとしたら 密室状態を作れるのは
ただ一人。

嶋野泉水自身よ。

え?

あなたが 嶋野泉水を
ナイフで刺して 立ち去ったあと

彼女が 自ら密室状態を作った。

(笑い声)

ねえ 何? それ。

随分 大胆な空想ですね!

♬~

嶋野泉水さんが書き込んでいる
この「鍵」という字と

あなたの書いた字

これが私の空想の発端。

文字の線と線とが接触する部分

コネクトと呼んでいますが

この「鍵」という字は どちらも

金へんの中央の縦線が

上下にある横線から
突き出ている。

他の字を見ても

コネクトが
ことごとく突き出ているんです。

コネクト? ああ 本当だ…。

私の恩師の研究では
一卵性の双子は

違う環境で育とうが
筆順を間違えようが

筆跡が似てしまう事が
あるそうです。

その現象は 親子の間でも
起こる可能性がある。

そこで
あなたの旧姓を調べました。

佐々木という親戚と
養子縁組する前の

あなたの旧姓は 宮下。

父親は 宮下恭一。

コネクトが突出するタイプの
文字を書く人物は

知識が豊富で
センスに優れている。

でも 頻繁に見られる場合は

アブノーマルコネクトと言って

衝動制御に弱い傾向があり…。
もういい!

そういったな 根拠のない話は
もういいんだよ!

あと少し。

自らのわがままで
子供を手放した嶋野泉水。

人を不幸にする事に
痛みを感じない あなた。

あなた方には

心に ある種の破壊願望を持つ
という共通点があった。

字だけじゃない。

きっと どこか似てたのね。

…性格も。

(佐々木の声)やっぱり
あんたが母親だったのか…。

産んだ子供 捨てといて

自分は 何もなかったかのように
優雅な ミステリーの女王ですか。

いいご身分だな。

恨むなら恨めば?

確かに 私は あなたを捨てた。

あなたのお父さんにも
悪い事したわ。

本当に 書きたくて…

書きたくて たまらない時だった。

ひどい女と恨む事で
書く活力になるなら

それも
それでいいじゃない。

書く活力?

俺を 2度も捨てといて…!

甘えないで!!

息子だと名乗れば

「ママよ。 ごめんね」って

甘えさせてくれるとでも
思った?

いい?

私は あなたを
作家としても 息子としても

甘えさせるつもりなんか
一切ない。

もう 父親だっていない。

あなたは…

もう 自分の足で
立たなきゃならないの。

あなたも
きっと いつかわかるわ。

書くって…。

(刺す音)

♬~

ううっ…。

(荒い息)

お前のせいだ。 謝れ。

俺が こうなったのは
全部 お前のせいだ! 謝れ!!

謝らない。

私は… 私の人生に後悔はない。

ああ そう。

だったら せめて… 罪を償えよ。

あんたの人生の最後に

息子の犯した罪を完璧にするんだ。

どう? ミステリー作家として
最高の死に方だろ?

(理沙の声)数時間後

嶋野泉水が密室で殺されていた
という報道を見て

自分が託した完全犯罪が
成功したと知った。

♬~

(笑い声)

(笑い声)

ああ…。

そう。 そのとおりだよ。

完璧な密室殺人は

被害者自身に
密室を作らせればいい。

俺が考えた
完全犯罪のアイデアだ。

どう思う? 大した才能だろ?

どうして そんな事を…。

あんたらこそ
どうして こんな事を?

ああ…。

命張って助けた息子が
捕まるなんて…。

あんたらが 今さら
余計な捜査しなければ

完全犯罪だったんだよ!

そうですね。

もしかしたら 泉水さんは

最初から
あなたが息子だと気づいていた。

おはようございます。
おはようございます。

(泉水)どうも。
(新海)どうぞ 先生 こちら。

(新海)さあ どれにしますかねえ。

ミステリーがいいか
スリラー サイコ…。

じゃあ
先生方 おそろいなんで…。

(朋の声)もうすぐ
お父さんが亡くなると知った

泉水さんは

このままではいけないと
思い立ったのかもしれない。

(泉水)
このMizukiってライター

もう 降ろしません?
えっ… どうして?

この子 割と才能あると思うの。

いつまでも こんな事してたら
埋もれていくだけ。

自立のために
もっともっと 自分の文章書いて

たたかれて 苦労したほうがいい。

いや でもさ
だって こっちが…。

あのね 私だって

いつまでも ゴーストに
書いてもらう気はないのよ。

大丈夫。

才能と情熱さえあれば
きっと 世に出る事ができるわ。

私も… きっと 彼も。

♬~

(荒い息)

♬~

(荒い息)

♬~

まだまだね…。

♬~

ううっ…。

♬~

まさか…。

♬~

あなたの燃やした
彼女の最後の原稿 読みました。

中身は ミステリー作家の青年が
悩みながらも成長する

夢あふれる 冒険物語でした。

♬~

完結しなくて残念ね。

(舌打ち)

くそ…。

くそっ…!

くそっ!! くそーっ!

(泣き声)

♬~

きったねえ字だなあ。

♬~

財津さん。

おおっ。

あっ これは一課長!
わざわざ こんな下まで。

いやいや 聞きましたよ。

あの事件のホシを
10年ぶりに挙げたと。

ああ いやいや…。
どうですか?

うまくいきそうですか?
あの矢代と…。

どうして
もっと捜査しないんです?

我々も もっと前に出て

文書捜査すれば
いいじゃないですか。

捜査はしない。

いくら
あの腹黒男が張り切ろうと

ほとんどの事件は
解決せずに埋もれていくの。

私たちの仕事は
いわば その墓守よ。

はか… はかもり?

特対は 1係から6係まで
合わせて たった39名。

その人数で 全ての未解決事件に
光を当てる事はできない。

だから せめて… 弔うの。

たとえ 解決する日が来なくても

心安らかに眠れますようにって。

しかし…。

一課長!

矢代
これからもホシを挙げてくれよ。

期待してるぞ。
おお…!

失礼。

一課長が ここ来るなんて初めて。
なんなのかしら?

はあ… まだ ここ痛いのに…。

(幸田遥花)かもめ…。
その言葉…。

(財津)12年前と同じだ。
(男)そいつは もう 用済みだ。

見つかる前に 海に捨てとけ。
真実のかけら。

(幸田雅也)
早く 遥花を見つけてくださいよ!

現場に残された字を見て…
字の声が聞こえました。

あなたは まだ何も言ってあげて
ないんじゃないですか?


Last update: 2018-05-18 06:03:38 UTC